挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第25章 塔と神の審判

303/1194

(1)ピーチへの話

 女性陣五名全員が無事に加護の力を発現できたため、考助は既に管理層へと戻っていた。
 とはいっても直ぐに塔の管理で新しいことを始めるわけではなく、冒険者活動をしていた時にやろうとしていたことの続きをしようとしていた。
 考助が管理層に戻ったことで、ナナもいままで通り各階層にいる狼達を見回っている。
 まずは、そのナナを探すことから始めた。
 といっても、大体は第八十一層にいるのだが。
 第八十一層に向かった考助は、シルヴィアとピーチを連れてきていた。
 試してみたいことに、シルヴィアの力が必要になるかも知れない。
 ピーチを連れて来たのは、話しておきたい事があったからだ。

 第八十一層に行くと、予想通りナナがいた。
 すぐに考助のところまで駆け寄り、飛びついてきてぺろりと頬を舐めた。
 勿論、大きさは小型化している。
 そのナナとじゃれあいながら、まずはピーチに話をすることにした。
「実験をする前に、まずはピーチに話をしておくね」
「わかりましたわ」
「はい~」
 考助の前置きに、二人が頷いた。
 わざわざ呼び出して離れた場所で話をすることに意味があると、二人とも気づいている。
 ちなみに、管理層では実験に付き合うためと言って、付いてきてもらっている。
 それは別に嘘ではなく、ピーチにもやってもらいたいこともあるのだ。
「で、先にこれを見てもらった方が早いと思うんで、渡しておく」
 そう言って考助がピーチに差し出したのは、クラウンカードだった。
「まあ、言わなくても分かると思うけど、ピーチも進化しているんだよね」
 考助の言い方に、シルヴィアとピーチは顔を見合わせた。
「進化しているのも驚きですが。わざわざここで言ってくるのにはわけがあるんですよね~?」
「うん。まあそうなんだけどね。このまま他のメンバーに話さないでいた方がいいのか、判断してほしくもあるんだよ。だから、シルヴィアも一緒なんだ」
 何故シルヴィアなのか、というとシルヴィアの専門分野に関わることだからだ。
「そう言われてしまえば、何となくわかってしまいますが・・・・・・」
「まあね。ああ、後は勿論、進化したことを最後まで黙っていてほしいと言うのもあるかな? 加護の力のときのシルヴィアみたいに」
 まあ、ここで言ってしまってるからシルヴィアには意味がないけどね、と考助は続けた。
「なるほど~」
 進化していない他のメンバーを焦らせることが無いように、と言う考助の配慮だった。

「でも、あまりそれは意味がない気もしますね~」
「そうですわね」
「? なんで?」
「進化することにあまり焦っていない人がいるからですわ」
 誰の事かと言うと、コレットの事だ。
 コレットの事に関しては、シルヴィアもピーチもその雰囲気から何となく感じ取っていた。
 何のことかと言うと、子供が出来ることに関して、である。
 そもそも進化しなくてもエルフは寿命が長い種族だ。
 考助が現人神ではなく普通のヒューマンであれば、寿命の差の事もあるがゆえに、子供を欲しがったかもしれないが、今となってはその懸念もなくなっている。
 もっとも、現人神である考助が、どのくらい生きていられるかは分からないのだが、どう考えても普通のエルフよりは長く生きていられるだろう。
 子供のことを考えてる時に、シルヴィアがエリスからそのことを聞いているので、まず間違いはない。
 お互いに長い寿命がある事が分かっているので、さほど急いでいないと言うわけだ。
「私達に配慮していると言うのもあると思いますわ」
 シルヴィアがそう言ったのは、今考助がやろうとしていたことと同じことだ。
 さっさと自分が進化してしまうのではなく、焦る必要が無い自分が最後になるのでいいのだと考えている所もあるというのだ。
 これらは、あくまでも二人の推測だが、当たらずといえども遠からず、といった所だろう。

「はあ~。なるほどね。そういうわけか」
 二人から話を聞いて、納得したように頷く考助。
 管理層から離れていたせいもあって、全く気付いていなかった。
 とはいえ考助の事なので、ずっと一緒にいて気付けたかどうかと言われれば、微妙な所だろう。
「そういう事ですから、そのことに関しては意味がありませんわ。そもそも種族の違いも関係しますから」
「そうだよね~。というか、こんなことをシルヴィアとここで話している時点で、意味がないんだけどね」
「そうですわね。現に私も加護の力が発現するまでは焦っていましたが、今はさほどでもないですから」
「そうなんだ」
「ええ。着実に道が見えてますから。それに、なぜかさほど時間はかからないと言う予感もありますし」
 それに関しては、考助も同じ考えだった。
 だが、それはあくまでも考助だけだと思っていたのだが、シルヴィアも同じだったらしい。
 それが、巫女としての力なのか、女としての勘なのかは分からない考助だった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「じゃあ、その話はいいとして、ピーチの進化について話すね」
「お願いします~」
 前置きが長くなってしまったが、いよいよ本題に入ることにした。
「ピーチが進化したこと自体は問題が無いんだけど、その種族が問題でね」
「種族、ですか」
「うん。まあ名前自体は<真幻夢魔族>って名前なんだけどね」
 考助の言葉に、二人が考え込むような仕草をした。
「・・・・・・聞いたことが無い名前ですわね」
「私もです~」
 二人の感想に、考助が頷いた。
「それもそうだよ。何しろ、ピーチが初めてだから」
「・・・・・・え?」
「正真正銘、ピーチがこの種族で初めての存在だよ」
 このことに関しては、考助は直接アスラから聞いた。
 考助から聞いたわけではない。
 エリスを経由して、わざわざ向こうから連絡を取ってきたのだ。
 新しい種に関しては、神々と言えど無視できない存在なのだ。
 これが知能の低い本能だけで動いているような存在であれば話は別だが、ピーチはしっかりと知恵も知識も持っている存在なのだ。

「なるほど、私に話をしたのもそういうわけですか」
 シルヴィアがそう言いながら頷いていた。
 その種の一番最初の存在と言うのは、場合によっては神として崇められることもあり得る。
 ほとんどの種族には、そうった神が存在していると言われている。
「そういうこと。といっても実際にピーチが神様として入ることになるかは、まだ分からないって言ってたけど」
「というと?」
「ピーチの子供はともかくとして、更にその子供とかになると同じ種族になるのか微妙だからだって」
 簡単に言えば、一つの種族として存在できるほどの数が集まるかどうかは分からないということなのだ。
 実際に、過去にも同じように新しく種として確立したが、数が増えずに消滅してしまっている種も数多くあると言う。
「なるほどですね~。あまり気にする必要はなさそうですね」
 神にならなくても良いと聞いて、ピーチはあからさまにホッとした表情になった。
「ピーチが神様になるとしても、数が増えて一つの種として世間に認められてからですから、先が長い話ですわ」
「ま、そうなんだよね。ただ、事情が事情だけに、他の人たちにこの話をしていいものかどうか分からなくて」
 考助がそう言うと、しばらくシルヴィアは考え込んだ。
 そもそも新しい種であると言うのは、考助以外の神たちも認めているという話なので、疑う余地はない。
 その存在が明るみに出れば、色々な意味で騒ぎに巻き込まれる恐れがある。
 もっとも管理層にいる限りは大丈夫だろう。
 ただし、少しでもその存在を知る者が少ないほど、情報が外に出る心配がなくなる。
 考助としても、他のメンバーがこのことを軽々しく口にするとは欠片も考えていないのだが、知らないほうが良い事もあるというのも理解している。
「・・・・・・難しいですわね。いっそのこと進化したことだけを伝えて、種族に関しては事情があって言えないとはっきり言った方がいいかもしれません」
 シルヴィアが考えたのは、変に隠し通すよりも、事情があって隠しているとした方がいいという事だ。
「でも、あの人たちの事ですから、ある程度は気づくと思います~」
「それは仕方ありませんわ」
 ピーチの意見には、シルヴィアも苦笑して答えた。
「ふむ。そうか。そういう事にしようか」
 どの方法をとっても、何かしらの問題は出てくる。
 それならば、シルヴィアが言った意見が一番いい気がする。
 そう考えた考助は、シルヴィアの意見を取ることにしたのであった。
はい。というわけで、ピーチの種族名がようやく出せました。
なぜ知らせるのに一章分も掛かったのかは、本編の通りです。
問題は問題なのですが、早急に発生する問題でもないので、加護の力の発現を優先していたという感じです。
ちなみに、いつエリス(アスラ)から聞いたんだ、という話は探さないでください。
本編には書いていませんw
閑話で書くとしても、非常に短くなってしまうので、わざわざ話にする必要もない・・・というか、この話で全部書いてしまったので。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ