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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第24章 塔と加護の力

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(10)帰還

祝! 通算300話!
 フローリアの加護の力の発現に沸いている女性陣だったが、その中で約一名言いづらそうにしている者がいた。
 コレットである。
 他の者たちがフローリアを祝福しているその時、何かを気にしたようにシルヴィアを見ていた。
 その視線を感じたのか、シルヴィアがコレットを見た。
 そしておもむろに、ニッコリ笑って頷いた。
「まいったわね。お見通し?」
「フローリアが来る前に、何となくそんな気がしましたわ」
 コレットが参ったという感じで言うと、シルヴィアがそう答えた。
 コレットとシルヴィアは、考助と会う前からの付き合いだ。
 それなりに長い付き合いになっているので、表情から読み取れることもある。
 加えてこの管理層に来てから、シルヴィアは巫女としての力を確実に上げている。
 そうした諸々の結果、コレットが話していなかったことも見抜いたのだ。

「何なに~? 二人だけで分かり合って?」
 二人の様子を見ていたピーチが口を挟んできた。
「ううん。ほんとは皆が揃ったら言おうと思ってたんだけどね。フローリアに先を越されてしまったのよ」
 コレットがそう言うと、皆が彼女が何を言おうとしたのかを察した。
「という事は、コレットも?」
「ええ。加護の力、発現したわ」
 世界樹の麓で苦労していたコレットだったが、一度頭をリセットして単純に考助の力の事だけを探っていた所、見事に発現することが出来たのだ。
 コレットの加護の力は、予想通り精霊を見ることのできる物だった。
「では、今も?」
 確認して来たシュレインに、コレットはコクリと頷いた。
「見えてるわよ。自然物なんて何もないと思ってた管理層だけど、精霊は結構たくさんいるのね。まあ、全部が全部見えているわけでは無いと思うけど」
 更に加えるなら、いつも見えているわけではない。
 集中しないと見ることが出来ないのだ。
 常に見れるようにするには、要訓練と言った所なのだろう。
 その辺は他のメンバーと同じで、まだまだ発展の余地があるのだ。

「これであとは、シルヴィアだけか・・・・・・」
 シュレインが代表して、シルヴィアの方を見て言った。
 事情が事情だけに、どこか申し訳なさそうにしている。
 周りのメンバーも似たり寄ったりの状況だった。
 当事者であるシルヴィアとフローリアを除いて。
「そういう事だから、シルヴィアも言った方がいいのではないか?」
「そうですわね」
 そう促したフローリアに、シルヴィアが頷いた。
「実は私ももう既に、加護の力を発現していますわ」
 シルヴィアがそう言うと、皆の表情が綻んだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 シルヴィアが加護の力の発現に成功したのは、エリサミール神と交神を終えてしばらく経ってからだ。
 時期的には、シュレインが進化をしてすぐの事になる。
 エリサミール神との交神を終えて、今一度自分の立ち位置を考え直したシルヴィアだったが、結局考助の巫女という立ち位置に立って加護の力のことを考えた。
 そうすれば、自ずと自身が目指すべき加護の力が何になるかは、明確にすることが出来た。
 さらに、考助が一度戻ってきたときに言われた言葉で、焦りも取ることが出来た。
 その後はシルヴィアも慣れた巫女としての修業を取り入れての作業なので、慣れたものだった。
 結果として、さほど時間を掛けずに加護の力を発現することが出来たのだ。

「それで? シルヴィアの力は何だったのだ?」
 シュレインがそう切り出してきた。
 ここまでは、見事に全員がバラバラの力を発現している。
 シルヴィアも違った力を発現していると考えての質問だった。
 それに対してシルヴィアの回答はというと、
「私の場合は、他の皆様と違って別にひねった物ではありません」
「というと?」
「私はコウスケ様の巫女ですから。物のステータスが見えるという物でしたわ」
 要するに、考助の左目の力の劣化バージョンということだ。
 神職と言うのは、神そのものあるいは神の力の一部をこの世界に呼び込むというのが、その役目だとされている。
 当然、神託を受けてその言葉を世界に伝えるというのもその役目のうちの一つだ。
 それから考えれば、考助の神としての力を巫女としてのシルヴィアが受け継いでいるのは、ある意味当然と言えた。
「今の私の場合は、精々持っているスキルが見える程度ですわ」
「なるほどの」
 シルヴィアの説明に、全員が納得したように頷いている。
 力の事もそうだが、シルヴィアがこの加護の力を得たのは、ごく自然な感じがしたためだ。
 流石は「考助の巫女」だと。

 そもそも考助自体が、左目の力を使いこなしているわけではないという事は、全員が知っている。
 シルヴィアが見えている物は、考助が見えている物よりもさらに少ないのだ。
 ついでに言えば、神能刻印機よりも少ない。
 それでも道具もなしに他人のステータスが見えると言うのは、隠したいものにとっては脅威と言えるだろう。
 結局のところ、加護の力はどれもが人が欲しがる力という事になる。

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「これで、全員が加護の力を発動できたわけだが・・・・・・戻ってくるのかの?」
 一通り全員の力を確認した後で、シュレインがそんなことを言って来た。
 苦笑しつつ放たれたその言葉に、全員が顔を見合わせた。
「まあ・・・・・・全員が進化するまで戻ってこないという事は無いと思うけれど」
「何分、冒険者活動を楽しんでいそうだからな」
「しばらく戻ってこないと思います~」
 続けられた言葉は、現状の考助の気持ちを見事に推察していた。
 帰って来たくないわけではない。
 冒険者として活動しているうちに、やりたいことが出来てしまったという気持ちが大きいのだ。
 もっともそんなことは、管理層にいる彼女たちには分からないのだが。
「皆が加護の力を発現できていることは、あの方も把握できていると思いますから、そのうち一度は戻ってくると思いますわ」
 シルヴィアの言葉に、皆がうんうんと頷いていた。
 約二名を除いて。

「というわけですから、そろそろ出て来ては如何でしょうか、主様」
「何となく皆が盛り上がっていて、出て来づらくなったというのは理解してもらえると思うわよ?」
 考助が戻ってきていることが最初から分かっていたコウヒとミツキが、考助に向けてそう言った。
 その言葉で、全員の視線がそちらの方に向く。
 そちら方向には、ばつが悪そうな表情になって、考助が立っていた。
 実は、全員が加護の力を発現できたというのが分かったので、急遽戻って来ていたのだ。
 管理層に戻って、すぐに姿を現そうとしたのだが、女性陣が報告会のようなことを始めてしまったので、顔を出しづらくなったのだ。
 流石にコウヒとミツキはすぐに気付いていたようだったが、空気を読んで今まで黙っていたのだ。
「「「「「コウスケ(さん、様)!!」」」」」
「ああ、ええと・・・・・・ただいま? それから、おめでとう」
 何となく照れくさそうな表情になった考助がそう言うと、皆の表情が一気に明るくなった。
 何だかんだと言っていても、考助がいるからこそ冗談も言えるのだと全員が理解しているのだ。
 勿論考助もそのことが分かっているので、特に何かを言ったりすることは、ほとんどないのだが。

 これで全員が無事に加護の力を発動できたことによって、今一番の懸念事項が無くなったことになる。
 正確には、進化をしないことには、彼女たちの最終的な目的は果たせないのだが、それはコレットの例もあるように、別に今すぐでなくともいいと言う者もいる。
 あとは本人たちの気持ち次第なので、わざわざ考助が管理層から離れている必要性もなくなったと言えるのであった。
何とか10話で全員が加護の力を発現することが出来ました。
考助がこそこそとやっていたことは、勿論この後も続けます。
ただ、別にそれに関しては、管理層からでも出来ることなので、この後は管理層から通うことになります。
もっとも冒険者活動を続けるかは、微妙ですが。
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