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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔へ色々な種族を受け入れよう

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(8) 奴隷と装飾

本日2話目になります。
読み飛ばしにご注意ください。
 第五層の村では現在、建築中になっている建物がいくつか出てきていた。
 第五層を根城にするような冒険者たちを狙って、借家や売家を建て始める業者が出てきたのだ。
 勿論、その中にはシュミットが依頼している物もある。
 この村では、土地が塔管理者からの借地という扱いになっている。
 冒険者や商人たちがテントを張って過ごす分には特に規制などは行われていないが、そのテントを張っている場所が借地として契約された場合は、立ち退きを要求される。
 それを無視した場合は、そもそも塔自体から追い出される。既に二、三組の冒険者が追い出されており、それ以来同じことを繰り返す者は、今のところ出ていない。
 また、そういった手続きは、全て転移門のある神殿で行われている。
 いずれはそういったことは全て、考助がリーダーとなって作られるギルドで行うことになっていた。
 ギルドカードの作成に目途が立ったので、ギルドの結成もすぐできる、と思っていたが、ここに来て問題が発生していた。
 どう考えても人手が足りないのである。
 その解決策のためワーヒドが管理層へ訪れていた。

「・・・・・・奴隷?」
「はい。人手不足とある程度の信用、両方を満たすのは奴隷を購入するのがよろしいかと思います」
 聞けば、この世界の奴隷は、考助が勝手にイメージする者とはかなり違う存在であるようだった。
 考助がイメージする奴隷は、犯罪奴隷がそれにあたり、過酷な労働に充てられてサボれば鞭打たれるような環境に行かされると言ったものだ。
 しかしそれ以外の借金奴隷や身売奴隷は、どちらかというと雇用斡旋と労働力提供と言った側面の方が強いということだ。当然、衣食住は保障されている。また、そういう者でなければ、購入はできない・・・ということになっている。
 ある程度の稼ぎがある者は、奴隷を雇うのはむしろ会社で部下を持つという意味とほとんど変わらない。
 場合によっては、どこぞの世界のブラック企業の社員よりよほどましだったりするようだった。
 と、そこまで聞いても、考助の心のどこかに抵抗があるのは、過去に育った環境のせいでどうしようもない。
 だが、残念ながらこの先の村のことやギルドのことを考えると、ある程度信用できる人手が必要なのもまた確かだった。
 結局、自身で雇ったものは、普通の扱いをすればいいと割り切ることにした。
「・・・・・・わかった。奴隷の雇用を許可するよ」
「そうですか。ありがとうございます」
 考助が許可を出すと、ワーヒドもほっとした表情を見せた。
「それで? ギルドの方はどうなるの?」
「そうですね・・・雇ってすぐに使い物になるわけではありませんが、そこは実戦で慣れていってもらうしかないでしょう。一週間もせずに準備ができるかと思います」
「わかったよ。じゃあそれまでに、ギルドカードの方も用意しておく」
「お願いします」
 ギルドカードに載せるステータス情報などの機能は出来ているが、どういうデザインにするかなどはまだきちんと決めていないのだ。
「それで、奴隷の購入には一緒に参りますか?」
「そうだな・・・いや、止めておくよ。顔を見せるのは、こっちに来てからにする」
 奴隷商などにワーヒドとの繋がりを勘ぐられたくないのだ。
 いずれは、自分が塔の所有者であることを公開するつもりだが、まだまだその時期ではないと思っていた。
「畏まりました」
「どれくらいの人数を買う予定?」
「初めは十人ほどでしょうか。場合によっては、戦闘奴隷を買って施設の護衛などをさせるのもよろしいかと」
「ギルド作るのに?」
「カードの物珍しさで人は集まるでしょうが、その中で信用できる者がどれくらい集まるかは、その時になってみないと・・・」
「・・・そっか。そうだよね。わかった。・・・これだけ?」
 考助の確認に、ワーヒドも頷いた。
「そうですね。・・・あっと、そういえば、シュミット殿への面通しはいつにされますか?」
 つい先日、ワーヒドから店を出したのはシュミットと聞いていて、一度会いたいと思っていたのだ。
「ああ、そうか。こっちはいつでもいいよ。向こうの都合のいい時間を聞いたらそれに合わせて行くから」
「わかりました。では、カードはよろしくお願いします」
「了解。シュミットと会う前に形にしておくよ」
 ある目的のために、シュミットにも見せる予定なのだ。
 ワーヒドはもう一度、わかりました、と頷いて第五層へと戻って行った。

「よかったの?」
 ワーヒドを見送って机の上に寝そべっていたワンリを撫でていた考助に、ミツキが問いかけてきた。
「奴隷のこと? ・・・何か最初は抵抗あったけど、許可を出したらなんか吹っ切れた感じ? あとは、実際に見て判断するよ」
「そう。それならいいわ」
「・・・? 何かあった?」
「いいえ。嫌々雇うことになっても、お互いにいいことにならないから、気になっただけよ」
「なるほど、ありがとう。でも、大丈夫だよ」
 今では思った以上に奴隷を雇うことに対して抵抗が無いことに、逆に自分でも不思議なくらいである。
 転生した際に、何か補正でもかかったのかとも思ったが、考えても分からない。
 それに、奴隷の問題はともかく、今、考助は別の問題で頭を悩ませていた。
 その問題とは、ギルドカードについてである。
 カードの素材そのものは、組み込む機能のこともあって錬金術で作り出していたカード状にしているのだが、装飾などは完全に門外漢である。
 ただ飾り付ければいいというものでもなく、組み込んでいる術式を邪魔しないように飾り付けなければいけないということもある。
 何の飾り気のないままでも機能上は問題ないのだが、それでは何か面白くない。

 腕を組みながら目を瞑って悩んでいた考助の後頭部に、何か柔らかい物が押し付けられた。
 それと同時に、頭上から聞きなれた声も降ってきた。
「考助、何を悩んでおる?」
 シュレインである。
 ここ最近のシュレインは、というか第七十六層の管理を任されるようになってから、考助と接触するのを好んで、色々やってくるのだ。
 不思議なことに、コウヒもミツキもそれを見て止めることをしないので、考助もされるがままになっていた。
 コウヒやミツキに負けず劣らずのボディラインを持つ女性に接触されて、悪い気はしない。するわけがない。悲しき男のサガである。
 考助は、シュレインにくっつかれたまま、無言でギルドカードを渡した。
「・・・これは?」
「今度作るギルドで使う予定のカード」
 シュレインに見せるのは初めてだったので、カードに付く予定の機能を一から全て説明して、実際にシュレイン用のカードを作ってみせた。
 それを渡されて実際に確認したシュレインは、呆れたような表情を見せた。
「これはまた、大層な物を作ったの。おそらく人の世界では、オーバーテクノロジーもいいところだぞ?」
「んな、大袈裟な」
 その返事を聞いたシュレインは、傍にいたミツキが首を振っているのを確認して、ため息を吐いた。
「大袈裟なものか。・・・そもそも神力を使える者がいないのに、それを使って作った道具などあるわけがなかろう。・・・これは普通に神具と言うべきものだぞ?」
「・・・・・・え!? そうなの?」
 思いつくままに作っていたせいで、そういうことを考えるのは頭からすっぽり抜け落ちていたのだ。
 かと言って、ステータスを見せるという考助の左目と同じ理を使っている以上、神力を使うことはどうしても避けられない。
「・・・・・・うーん・・・・・・。・・・まあ、仕方がないか」
「そうか? まあ、考助がそういうのなら吾も構わんがの。
 それはともかく、カードの装飾だがの。イグリッド族の者に相談してみてはどうかの?」
「・・・え? どういうこと?」
「おや? 前にも言ったと思うが・・・? かの一族は、地下に穴を掘って住みついている一族だからか、手先が器用な者が多くての。こういった装飾に関しては、ドワーフ族を超えるとさえ言われておるよ」
「・・・・・・そんなこと言ってたっけ?」
 これに関しては、完全に考助が失念していただけなので、シュレインを責めることなどできない。むしろ塔にとっては重要な情報を忘れていた考助が悪い。
 早速、見本のカードを持っていって、シュレインと共にイグリッド族を訪れることにした。

 突然の考助の訪問に、イグリッド族の族長は恐縮した様子を見せたが、考助の注文には喜んで応じてくれた。
 彼らにとって考助は、安全な住みかを提供してくれている存在なのだ。
 装飾に関しては、技術的には問題なくできるそうで、後で装飾を施したサンプルをいくつか作ってくれるとのことだった。
 その答えに安心して管理層へ帰った考助だったのだが・・・。
 初めてイグリッド族を見た考助には、色々と興味深い種族だった。
 聞いていた通り見た目は人形のような容姿を持った種族なのだが、その口から出てきた言葉は、どこの地方から出てきたのかという方言満載の喋りだったのだ。
 そのギャップに色々とやられた考助は、次はきっちり時間を作って来ようと決意するのであった。
方言・・・どうしましょうか。
とりあえず、どこの地方とは特定はせずにごちゃ混ぜか、思いつくまま適当にしようかと思っています。
(その前に、彼らと会話すること場面が、今後出てくるかも未定です)

2014/5/11 イグリッド族についての矛盾点を修正
2014/5/24 誤字修正
+注意+
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