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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第1章 塔に向かおう

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(1)いきなりの危機

よろしくお願いします。
 [常春の庭]からアースガルドへ送り出された考助は、落ち着いて周りの状況を確認する暇もなく目の前の状況に対処しなければならなかった。
 なにせ、着いたと思った瞬間すぐそばで爆発音が響いたのだから落ち着くどころではなかったのだ。

(なに!? どしたの、何が起こってるの?)

 混乱しながらも状況を見極めようと周りを確認する・・・までもなく爆発音の原因がわかった。
 考助の目の前で、一対一の戦闘が繰り広げられていた。
 少しばかり離れた場所で戦闘が行われているのでどのような人物(?)が行っているかまでは確認できないのだが。
 人物(?)となっているのは、遠目に見ても明らかにその二人は考助が知っている人類種ではなかったからだ。
 姿形はヒューマンと一緒だがその背中についているものが、明らかにヒューマンとは別種であると告げていた。
 両方ともにその背中には、翼のようなものがついている。
 もう少し近づいてきちんと確認したいと思っても現在進行形で戦闘が行われているので、近づこうにも近づけない。
 このとき、どうしようかな~、とか呑気に考えていたため、[常春の庭]で教わっていたことをすっかり忘れてしまっていた。
 アースガルドに送られる直前まではきちんと覚えていた。何せ命に関わることだ。
 それが、こちらに来てすぐの爆発音で吹っ飛んでしまった。
 この世界は、一瞬の油断が命につながるということを。

 二人の戦闘を見ていた考助の耳に、カサリという何かが草を踏みしめる音が聞こえてきた。
 戦闘が行われている方ではなく、考助の真後ろの方からだった。
 なんとなくその音に気付いた考助は、音のほうを振り返った。
 振り返ってすぐに考助の背中に冷や汗が流れる。
 考助のすぐ後ろに、腕を振り上げた状態の一体の熊がいた。
 ただの熊ではない。
 いやもちろん地球にいたただの熊でも考助にどうこうできる存在ではないのだが、それはさらに凶暴な存在であると聞いていた。

 アースガルドには魔物が存在していると。

「うわああああああああああ」
 考助にできたのは、その場で叫び声をあげることだけだった。
 逃げようとすることすらできなかった。
 振り返ってその熊(後にブラックベアーと呼ばれていることを確認した)を確認してすぐに足がもつれて倒れこんでしまっていたためである。
 叫び声をあげた考助に、あとできることといえば、目を閉じてその瞬間を待つだけだった。
 だが・・・。

 来るはずの衝撃は来ずに、ドスンという重量感のある音が考助の耳に届いてきたあと、二人の女性の声が聞こえてきた。
「主様!!」
「考助様、大丈夫ですか!?」
 その声が聞こえてきた後、そっと目を開けるとすぐそばにブラックベアーが倒れていた。
 そして考助のすぐ脇に、金髪と銀髪の女性が二人立っていた。
 どちらも不安そうな表情で考助を見ている。
「あ、ああ。・・・特にけがとかはないみたいだから、大丈夫」
 気の抜けた感じで、何とか返事を返して改めて二人の女性を見直した。
 まず一番最初に目についたのは、その背にある3対6枚の翼である。
 色は白と黒で違っているが、どちらも非常に美しい翼である。
 白い翼の女性は、金髪金眼でお堅い委員長といった印象を受ける美女。
 黒い翼の女性は、銀髪銀目でやさしそうなお姉さんといった印象を受ける美女。
 いろんな意味で対照的な二人である。

 地球にいたころにはまずお目にかかることすらなかった美女二人に心配そうに注目されて、情けないことにへたり込んだ状況(もらしてはいないよ?)でいることに気恥ずかしさを感じて何となく俯いてしまった。
 それを見て何か勘違いしたのか、金髪の女性が銀髪の女性に非難するような視線を向けた。
「あなたが余計なこと(戦闘)をするから主様に余計な心労を与えることになってしまったではないですか」
「あらあら。そもそもあなたが余計なことを言わなければ、あんなこと(戦闘)にならなかったと思うけど?」
「・・・何!?」
「・・・なによ?」
 出会ったばかりでありながら二人の間から何となく不穏な空気を感じて、考助は慌てて話題をそらすことにした。
「あ、あの・・・助けてくれてありがとう。それで、その・・・主様って何!?」
 さっきから気になっていたことである。
 会ったばかりなのでそんな大げさな呼び名で呼ばれる覚えはない。いくら考助でもこんな美人と会っていれば忘れることはないのである。
 が、返ってきた返事は、答えになっていなかった。
「主様は主様です」
「・・・・・・えーと?」
 戸惑う考助に、銀髪の女性がとんでもないことを言い出した。
「私たちは、考助様のために創られた存在ですから主様扱いは当然かと」
「・・・えっ!? 何、それ!?」
「あれ? 聞いてませんでしたか? 考助様は、この世界は不慣れですからと案内役用にアスラ様が私たちを創ってくださいました」

(いや、創ったって・・・そんな簡単に・・・)

 何も聞いてなかった考助はびっくり仰天である。
「というわけで主様には、これから私共のどちらと行動を共にするのか選んでいただきたく存じます」
「・・・・・・え!? 選ぶの!?」
「そうですね。特に二人いる必要はありませんので」
 期待を込めた二人の視線を感じて、考助は思わずひきつった表情になる。
 なんというか、どちらを選んでも碌なことにならない気がする。
 二人が先ほど争っていた理由が、一瞬で理解できてしまった。
「え・・・えーと・・・」
 二人ともにこやかな表情で考助を見ている。
 だというのに、考助の背中は今、冷や汗が流れ落ちそうになっていた。

(いやこれ、片方だけ選んだら絶対アウトじゃね? いや、選んだほうが何とかしてくれる気もするけど・・・)

 ここにきて考助の優柔不断がさく裂した。
 かといって、いつまでも時間をかけるわけにもいかない。
 思い切って言ってみた。
「・・・えーと・・・二人共って、ダメ、かな?」
 言った瞬間何となく冷気を感じた気がしたが、気のせいだと思いたい。
「それが考助様の選択なら特に駄目ということはありませんね」
「・・・そうですね」
 この話題を引きずるのは、何となく考助にとって良くない気がしたので、先ほどから気になっていたことを聞くことにして、さっさと話題転換をすることにした。
「それで、まだ二人の名前聞いてないんだけど、教えてくれる?」
「ありません」
「・・・・・・は?」
「先ほども私が言った通り考助様のために創られた存在ですので、特に名前は与えられていません。・・・考助様につけていただくのが宜しいかと」
「・・・え? そうなの?」
 確認するように考助が見ると、金髪女性がコクコクと頷いた。
「是非お願いします」
 期待するような視線を向けられて、内心頭を抱えた。
「・・・名前・・・名前か・・・いきなり言われても・・・」
 美女二人に期待するような視線を向けられて、それを断るようなことができるはずもなく、少ない知識を振り絞って考える。

(金髪に銀髪・・・安直だけど、太陽に月? 太陽、光に・・・月・・・うーん・・・)

 なんとなく思いついた名前を提案してみる。
「じゃあまず君は、コウヒ(光陽)っていうのはどうかな?」
 まずは金髪の女性から聞いてみる。
「コウヒ・・・光陽ですか。とてもいいと思います」
 ニッコリと笑顔を向けられて、考助はホッと胸をなでおろす。

「次は私ですね」
 期待するように銀髪の女性から視線を向けられて、考助は内心びくびくしながらも考えた名前を口にする。
「えーと、君にはミツキ(箕月)という名前を考えたんだけど、どう?」
「ミツキ・・・箕月ですね。ありがとうございます。今日から私はミツキですね」
「私はコウヒです。これからよろしくお願いします、主様」
「よろしくお願いします。考助様」
 嬉しそうに二人から微笑みを向けられて、考助は何とかひねり出したかいがあった、と思わず美女二人の笑顔に見とれてしまうのであった。
イベント発生!! ルートの答えは次回。

2014/6/3 余計な文字修正
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