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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第24章 塔と加護の力

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7話

 コレットは考えていた。
 まずピーチが考助の加護の力の発現に成功した。
 その力は、まさしく見る力。
 いわば夢見の力と言うべきだろうか、夢を介して何かの事象を見る力なのだろう。
 本格的に発動した時は、考助に会いに行くと言うのがいかにもピーチらしいと思った。
 その後も何度か加護の力を通して夢見を行っているようである。
 その成長は、順調そのものと言っていいだろう。
 次はシュレイン。
 シュレインはまたピーチとはまた違った力の使い方をしたように見える。
 コレットやリリカのように、加護の力をそのまま発現するのではなく、加護の力を媒介として自身の力を高めるのに成功したようだった。
 「ようだった」と言うのは、シュレイン自身もまだよくわかっていないと言っていたからだ。
 考助の加護の力を媒介して儀式を行ったのは確かなので、その意味では加護の力を上手く使ったと言えるだろう。
 だが、この先加護の力を単独で使えるようになるかは未知数なようだった。
 それでも本来の目的である上位種への進化を見事に果たしたのだ。
 加護の力に関しては、特に焦らなくてもこれからじっくり見極めて行けばいいと言っていた。

 管理層にいるメンバーで既に二人が加護の力を使いこなしていることに関して焦りが無いと言えば嘘になる。
 だが、そもそも競争をしているわけではないのも確かなのだ。
 それに、自分が先に加護の力を発現したとしても、考助は戻ってこないだろう。
 コレットにしてみれば、考助が早く帰ってくるようにするために加護の力の発現を急いでいるという面もある。
 そもそも長寿のエルフ族であるコレットにとっては、子供に関しては焦りが無いと言ってもいい。
 正確には、焦りが無くなったと言うべきか。
 以前は子供を得るのに、全くの道すじが見えていなかったので、焦りもあった。
 だが、既に二人が道筋を見つけて、その内の一人は条件を満たしているのだ。
 コレットも長い時を掛けてでもその先に至ればいいと思っている所がある。
 もっともこのことをエセナに言うと、それがエルフの種としての弱点だと言っていたが。
 以前のように子供が生まれないという事はなくなった。
 それが逆にまたエルフ達の間で安心感を生んでしまう可能性があるのだ。
 子供が生まれるようになったきっかけであるコレットが、こんな調子では駄目だとも言っていた。

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「加護の力ね・・・・・・」
 思考がそれていることに気付いたコレットは、また加護の力の事を考えることにした。
 その時の声が漏れてしまったのか、コレットの傍にエセナが現れた。
「・・・・・・どう?」
 今、コレットは世界樹の麓にいる。
 以前、コレットにとっての加護の力がどういった物か考えた時、すぐさま精霊を見る力を思い浮かべた。
 精霊を見ると言うのはどういう事か、エルフ達にもよくわかっていない。
 ハイエルフになれば別だろうが、普通のエルフ達は精霊を見ることはほとんどできないのだ。
 精霊を使う力は、一人一人に備わっていても見る必要が特にないというのもあるのだろう。
 遥か昔にはエルフ達にも精霊たちを見ることが出来ていたという話だが、今となっては伝説に一歩踏み込みかけている。
 それでもコレットがエセナの巫女になった際には、精霊との感応力は上がっている。
 世界樹の周辺で暮らしているエルフ達の中では、ハイエルフ三人を除けば、コレットが一番になっているだろう。
 だがそれでも、完全に精霊を見るまでには至っていない。
 精霊を「見る」というのが、どういう状態なのかよくわからない。
 だからこそこうして精霊が多く集まる世界樹の麓で、加護の力の事を考えているのだ。

「うーん。以前よりはまし、と言う感じだと思うけど・・・・・・見えているかと言うとまだまだと言う感じね」
「そう・・・・・・」
 コレットの答えにエセナも特に表情を変えずに頷いた。
 エセナは世界樹の妖精なので、コレット以上に時間に関しては感覚が人とは異なっている。
 エセナにしてみれば、精霊はそこかしこにいるもので、最初から見えていた存在なので、見えるようにするという事がどういう事なのか分からない。
 以前に世界樹の妖精だったドリーに聞いてみても答えは同じだった。

 そんなことをエセナと会話しながらコレットはふとピーチの時のことを考えた。
 彼女の場合は、どうやって加護の力を発現したのか。
 考えてみれば、種族特性がどうのと言うのは、ピーチが力を発現したからこそ分かったことで、後からついてきた物だ。
 だからと言って、唐突に発現したと言うのも考えづらい。
 それは、リリカのとこの事を考えても同じだろう。
 当然、メンバーたちはリリカの時の状況もきちんと聞いているのだ。
「ちょっと先走りすぎたかな?」
 種族特性がどうのと言うよりも先に、加護の力を意識するようにした方がいいのかもしれない。
 コレットはそう考えなおした。
 加護の力というのは、要するに考助の力という事だ。
 それなら最初から考助の事を考えてしまえばいい、といささか乱暴なことを考えるコレットであった。

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 コレットが世界樹の麓で思考の渦に巻き込まれている丁度その時。
 フローリアがシルヴィアの所を訪ねていた。
「済まないが少しいいか?」
「あら。どうかしましたか?」
「いや。私は巫女としての修業をしたことが無いからな。間違ってないか確認してほしいのだ」
 ある程度の家柄の子女であれば、一定期間神殿に入って神の元で修行を行う、と言うのは一般的な話だ。
 だが、王家に生まれたフローリアは、残念ながらそう言った機会がなかった。
「そういう事ですか。それなら構いませんわ」
 一度同意したシルヴィアだったが、でも、と続けた。
「付け焼刃で行っても加護の力を発現するとは限りませんが?」
 巫女としては一流のシルヴィアがそう言うのだから間違いないだろう。
「ああ、分かっている。だが、神の力を感じ取りたいんだよ。そのやり方が違っていたら何にもならないからな。別に正式なやり方でなくともいい」
「わかりましたわ」
 シルヴィアもフローリアが言いたいことを察して、頷いた。
 フローリアもまたリリカの話を思い出したのだろう。
 そもそもリリカが加護の力を自然と使えるようになったのは、考助の神としての力を感じ取ることに優れていたからだろう。
 それならシルヴィアが真っ先に発現していないとおかしいという事になるのだが、それはまた別の話なので、敢えてシルヴィアはここでは言わなかった。
 それに、フローリアの考え方自体は間違ってはいないのだから。

 フローリアがその場で精神を落ち着かせ始めた。
 そのやり方を見てシルヴィアは驚いた。
 巫女の修業をしたことがないとは思えないほど、見事だった。
 やり方そのものはシルヴィアとは異なっているが、巫女としての修業とは、要は神と繋がるためのものなのだ。
 教会でさえ修行の仕方は神殿ごとにあるとさえ言われている。
 それから考えれば、フローリアが行っている方法は全く問題なかった。
 考えてみれば、フローリアは巫女の修業を行わずにスピカ神の加護を得ているのだ。
 神託を受けることさえあったのだから、そもそもこういう事が出来るようになっていておかしくはない。
 さらにもう一つ。
 シルヴィアが見たところ、フローリアも加護の力を発現する一歩手前まで行っているように見えた。
 何かの拍子に発現してもおかしくはないだろう。
 きわめて順調に行っていると言えた。
 フローリアが目を開けてからシルヴィアがそのことを伝えると、嬉しそうな表情になった。
「そうか。よかった。・・・・・・ただ、一つ聞いていいか?」
「何?」
「他人のそんなことまで分かるのに、シルヴィアが加護の力を発現していないのはおかしいと思うのだか?」
 フローリアが不思議そうに首を傾げると、シルヴィアは笑顔を浮かべた。
「そんなことはないですわ。他人のことは見えても、自分の事は見えないと言うのは、良くあることですから」
 笑いながらそう言うシルヴィアを見ながら、フローリアはあることを察したが、それは口には出さなかった。
「そうか。・・・・・・そういう事にしておこう」
「そうしてください」
 こうしてフローリアは、シルヴィアのちょっとした秘め事を知ることになるのだが、その秘密は全員が加護の力を発現できるようになるまで守られるのであった。
さて、シルヴィアの秘め事というのは何でしょうか?w
ちなみに、考助は大体察しています。
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