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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第24章 塔と加護の力

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6話

 シュレインが真祖ヴァンパイアへ進化を果たしたことを確認した後で、考助は再び冒険者活動へと戻って行った。
 その際に、コウヒとミツキが付いてくることを言って来たが、考助はそれを拒否した。
 二人の顔が、代弁者として一般に知られているとは思えないが、人間離れしたその美貌はどうあがいても悪目立ちする。
 セシルとアリサの二人と一緒に行動しているだけでも注目を集めているのに、それ以上の二人を連れて歩くとどういう事になるのか。
 少なくとも考助にとっていいことにはならないだろう。
 何より、塔の階層で何か起こった場合、特に戦闘力が必要になったときは、二人の力は絶対に必要になると説き伏せた。
 考助自身に何かあった場合は、百合之神社に逃げ込むからいい、とも付け加えて。
 考助の言い分に、最後まで二人は渋っていたが、結局は無理やり納得させることで決着したのである。

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「と言うわけで、またよろしくお願いします」
 そう言ってセシルとアリサの二人に頭を下げた考助だったが、管理層に戻る前に話はしていたので、二人は驚いてはいなかった。
「こちらこそよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
 セシルとアリサは、二人同時に頭を下げた。
「迷惑かけると思うけど、もうしばらくお願いね」
「迷惑なんて、とんでもない!」
「そうですよ! 確かに、コウスケ様がいらっしゃることに慣れてしまったら、私達にとっては危ない面もありますけれど、迷惑だなんて思っていませんよ」
 アリサが言った危ないと言うのは、勿論戦闘においてもそうなのだが、立場的な意味も含んでいる。
 一応建前上は、貴族の護衛となっているが、人目のあるところ以外では多少砕けてきている。
 考助としては、そちらの方が気楽でいいのだが、後々の事を考えると二人にとってはまずいことらしい。
 二人も立場というものがあるので、それ以上は考助としても突っ込んではいない。
 考助が、望んだにせよ望まないにせよ立場という物を得てしまったので、周囲がそれを気にするのは当然だという事も分かっているためだ。
 こうして再び考助は冒険者活動へと身を投じるのであった。

 冒険者活動といっても普通に過ごしてさえいれば、モンスターから素材を得たり自然物を採取したりするだけだ。
 そのため、イベントなど起こるはずもなく数日間は普通通り過ごしていた。
 そんなある日。
 何となく気まぐれで、街の神殿へと足を運んでみた。
 普段の神殿がどういう状態なのか、見てみたかったのだ。
 事前にそのことをセシルとアリサに言うと、何があるかわからないという事で、当然のように二人がついてきていた。
 もし考助一人を行かせて何かが起こった場合、責められるのは二人だと分かっているので、考助も止めなかった。
 そして考助は、神殿に着いてすぐに、二人がついてきたことを感謝することになる。

「コ・・・・・・フガフガ」
 考助の姿を見て、いきなり名前を叫ぼうとしたリリカの口をセシルが慌てて塞いだ。
 その時考助が心の中で、セシルよくやった、と思ったのは当然だろう。
 少しの間だけフゴフゴとやっていたリリカだったが、やがて静かになり降参するように両手を上げた。
 それを見たセシルもようやくリリカの口をふさいでいた手を下した。
「・・・・・・ごめんなさい」
 それでもまだセシルとアリサに睨まれていたリリカは、ようやく謝った。
 反射的に名前を言おうとしたのだが、この場でその名前を口にするとどうなっていたのか理解できたのだ。
「気を付けてくださいね。本当に」
 今までのやり取りである程度注目が集まっているが、本当の名前を呼ばれるよりは遥かにましだ。
 もう一度謝ろうとしたリリカを止めて、考助は先ほどから思っていた疑問を口にした。
「ここにきているってことは、今日は冒険者活動は休み?」
「休みと言えば、休みですねー」
 普通にそうですと言う返事が返ってくると思っていた考助は、微妙な返答に首を傾げた。
「? サボってここに来ているの?」
「ち、違いますよ! パーティが活動していないのは本当です! というより、しばらくパーティとしては活動は出来ないでしょうね」
 思ってもみなかった返答に、考助はもう少し詳しく話を聞いてみた。

 リリカのパーティは、ここ数日冒険者活動を停止していた。
 パーティーの中で不和が起こったとかそういうわけではなく、急にパーティメンバーが結婚を理由に二人も抜けることになったのだ。
 二人の仲間が抜けること自体は特に揉めることもなく、仲間同士でささやかな祝いを行って送り出した。
 だが残されたパーティは、今まで通り活動するというわけにもいかなかった。
 何しろいきなり二人も抜けたので、戦闘時の連携が大きく崩れてしまったのだ。
 かと言って、女性だけのパーティにいきなり男を入れて補充するわけにもいかずに、リーダーがここ数日メンバー集めに奔走しているという事だった。
「まあ、いきなり見つけるのは難しいと思うので、しばらくは依頼のレベルを下げて対処することになると思います」
 リリカはそう言って話を締めくくった。
「なるほどね。ちょっと聞きたいんだけど、そう言うのって当然収入減るよね?」
「まあ、ぶっちゃけるとそうなりますね。そのせいで解散してしまうパーティも多いですから」
 パーティを組んでいるリーダーにとって、メンバーが抜ける時ほど頭が痛い問題はない。
 だからと言って、結婚するなとは言わないのだが。
「でもここならさほど時間を掛けずに新しいメンバーも見つかるかも知れませんね」
「え? どういう事?」
 リリカは、先ほどメンバーを見つけるのに時間がかかると言ったばかりだ。
「簡単な話です。新しいメンバーはすぐ見つけてもその人が、私達のパーティに定着するかは分からないという事です」
 塔での活動は冒険者にとっては、良い稼ぎ場所になっているので、新しい人材も見つけやすい。
 セシルとアリサのような特殊な事情がある場合は、勿論別なのだが。
 ただし、一時的にパーティメンバーとして活動していく者は見つけることが出来ても、リリカが言ったように定着するかどうかは別問題なのだ。
 活動を続けることによって、どうしても合わないという事も出てくるのだ。

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「おや何だい。ひょっとして、リリカも寿退団かい?」
 考助達が話をしていると、一人の女性が話しかけて来た。
「あ、リーダー。・・・・・・って、何ですか。彼とはそんなんじゃないです!」
 考助が誰だと思っていると、リリカがその女性に話しかけた。
 話しかけて来たのは、リリカパーティリーダーのサリーだった。
「まあ、それはそれで納得するが・・・・・・」
 サリーがそう言ってセシルとアリサの方へ視線を向けた。
「む。それってどういう意味ですか・・・・・・あ、いえ。言わなくていいです。答えは分かっていますから」
「なんだ分かってるじゃないか」
 少しだけ落ち込んだ様子を見せたリリカに、サリーはニカッと笑った。

「一応断っておきますが、コウ様には私達など足元に及ばない女性がいますからね?」
「しかも複数」
 何故かセシルとアリサが、考助にとっては余計な情報を付け加えた。
 それを聞いてサリーは、目を丸くして考助を見た。
「この二人が足元に及ばないって・・・・・・あんた、そんなにすごいのかい?」
 何がどう凄いのかよくわからなかった考助は、返答に困って結局何も答えずに終わった。
 どう答えても考助にとって碌でもない結果になりそうだった。
「そんなことより、こんな所に何しに来たんですか?」
 困っている考助を見て、リリカが慌てたように口を挟んできた。
 その様子にサリーは首を傾げつつもリリカに答えた。
「リリカに会いに来たに決まっているだろう? 仮のメンバーが何とか揃ったから、明後日から様子見で遠出するからと伝えに来たんだ」
「ああ、そうなんですか。わかりました」
 宿で待っていればそこで会えるのに、とは思っていてもリリカは言わなかった。
 ここまでわざわざ来てくれるのが、このリーダーのいいところだと思っているからだ。
「んじゃ、私は退散するわ」
 サリーは軽く右手を上げて、去って行った。
 本当にリリカに先ほどの事を伝えるためだけに来たのだ。

「本当に良いリーダーみたいだね」
 去っていくサリーを見ながら、考助がそう言うとリリカも嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「ええ。そうなんです」
 その答えは、サリーは良いリーダーなのだと思っているのがよく分かる返事だった。
閑話っぽい本編でしたw
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