挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第24章 塔と加護の力

296/1194

(5)シュレインの進化

 部屋の中央に浮かび上がった魔法陣の真ん中で、シュレインが長い呪文を唱えていた。
 その呪文は現在に伝わっている魔法や聖法とは全く違っている。
 古い時代からヴァンパイアに伝わる呪文で、一部を除いて他の種族には伝わらなかった物だった。
 浮かび上がる魔法陣は、一見しただけだと禍々しく感じるような赤い色合いをしていた。
 それもそのはずで、その色はヴァンパイアにとっては特別な存在である血の色なのだ。
 過去においては、これに類する儀式を見て異端の技術だと弾圧を受けたこともある。
 確かに一瞬だけこの儀式を見れば、そんな印象を受けるかもしれないと、シュレインの様子を見ていた考助は考えていた。
 考助達が今いるのは、ヴァミリニア城にあるこうした儀式を行うための一室だ。
 いつものメンバーに加えて、ヴァミリニア一族の者達数人もこの儀式を見守っていた。
 何しろ彼らにとっては、行われなくなって久しい儀式なのだ。
 いくらシュレインが一族の中でも特別の力を有する存在だとしても何が起こるか分からない。
 そのために見守っている、と言うのが半分だ。
 残り半分は、純粋に現代に甦ろうとしている儀式を確認したいがためだった。

「・・・・・・全く、とんでもないですな」
 儀式を見守りながら考助の隣でそう呟いたのは、シュレインの側近であるゼネットだ。
 ちなみに、シュレインはこの儀式を行う前に、何が起こってもいいように儀式する場を結界で覆っているため、小声程度であればシュレインのところまでは届かない。
「それほどですか?」
「それはもう。今、姫が唱えている聖句でさえ、高位の使い手が十人がかりで行わないと出来ないはずですな」
 聖句と言うのは、ヴァンパイアにとって、という意味だ。
 本来であれば、複数の術者が集まって行う儀式だが、シュレインはそれをたった一人で行っているのだ。
「・・・・・・大丈夫なんですか?」
 考助はもとより、他のメンバーたちもヴァンパイアに伝わる呪文のことなどは全くの知識の範囲外なのだ。
 そのためどのくらいの負担がシュレインにかかっているかは、外見で判断するしかない。
 少なくとも様子を見ている限りでは、多少大がかりな魔法を使っていると言う感じだった。
「問題ないように見えるというのが、我らにとっては問題ですな」
 ゼネットがそう言って笑った。
 彼らにしてみれば、問題なく一人でこの儀式をおこなえていること自体が問題なのだ。
「姫自身の力もそうですが、あれは何ですか・・・・・・恐らくお主様の力も混ざっておる。おかげで、今のところは問題ないようですな」
「私の力・・・・・・ですか」
 考助を見ながらそう言って来たゼネットに、首を傾げながら考助は目を閉じた。
 もしシュレインが加護の力を使っているのであれば、それがどんなものであれ考助には感じ取ることが出来る。
 リリカとピーチが力を発現して以来、そういう事も出来るようになっていた。

「確かに使われているようですが・・・・・・何だろう? ・・・・・・何かを縛るような・・・・・・・?」
 よくわからない力に、考助は疑問を口にした。
 それを聞いた長が、驚きを顔に表した。
「それがお分かりになるのですか?」
「わかると言うか・・・・・・感覚的なもの?」
「それだけでも十分です。何しろ我々でもこの力を感じ取れる者が居なくなって久しいですからな」
 そういうゼネットも知識として知っているだけで、実際にその力を感じ取ることは出来ないという事だった。
「大丈夫なのかな、これ?」
「縛ると言っても、契約の事ですからな。お二人はそもそも既に血の契約を結んでいるのでしょう?」
 考助は、言われてようやくそのことを思い出した。
 一番最初、ミツキがシュレインを呼び出した際に、そんな契約を結んでいたなあ、と。
「今から行う儀式は、それのさらに強化した物といいますか、契約の中身は変えずに、結びつきを強くしたものですな」
 より力の強い契約を結ぶことによって、術者の力を飛躍的に高めることが出来るという事だった。
 まさしく、今のシュレインが欲している力そのものなのだ。
「・・・・・・そろそろですかな」
 そんな話をゼネットとしていると、いよいよ準備が整ったらしい。
 シュレイン以外に言葉を発する者はいなくなり、静まり返った部屋の中で唯一シュレインの声だけが響いていた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 結論から言えば、シュレインが行った儀式は成功した。
 流石に儀式を終えたシュレインはフラフラになっていたが、これは大きな儀式を行ったためだ。
 むしろヴァミリニア一族に言わせれば、この程度で済んでいることが信じられない話なのだ。
 儀式を終えた後で、考助は力とか契約とかを確認を取ってみたが、考助自身が何か変わったという事は無い。
 ゼネットが言っていたとおり、あくまでもシュレインの持つ力を高めるための儀式だったのだろう。
 何よりその儀式を行ったことで、シュレインに大きな変化が起こっていた。
 見た目は何も変わっていないので、周りの者は誰も気づいてはいないようだったが。

 儀式を行った部屋の片隅で休息をとっているシュレインに、考助は一枚のカードを差し出した。
 シュレインが休んでいる間に、コウヒに急遽とってきてもらったクラウンカードだ。
 コウヒが持ってきたときは、空のカードだったのだが、今は考助が現在のシュレインのステータスを書き込んだ。
「・・・・・・これは?」
「新しく作ったクラウンカード。儀式のせいか魔力の質も変わったみたいだからね。新しく作らないと駄目だから作っておいた。後はシュレインの魔力を流し込んで表示するだけだよ」
 考助はにこやかに笑いながらそう言った。
 その笑顔にちょっとした違和感を感じたシュレインだったが、素直にクラウンカードに魔力を通してステータスを表示させた。
 儀式を行ったとは言え、何かスキルに大きな変化があるわけではないと思っていたシュレインだったが、ある一点で視線が止まった。
「・・・・・・・・・・・・!!!!!?」
 シュレインは、思わず何度かその表示を確認した後で、驚いた表情のまま考助を見た。
 見られた考助は、笑顔のままだった。
「これは、本当かの・・・・・・?」
 若干不安そうに考助を見ながら、シュレインがそう聞いてきた。
「こんなところで、そういう冗談はやらないよ」
「それは、そうだろうが・・・・・・いや、信じれらないと言うのが、本音で・・・・・・」
 混乱しているシュレインが、何度か首を振った。
 そんなことをしていれば、当然周りにいた者もその様子に気づく。
 少し離れた場所で雑談していたメンバーたちが集まって来た。

「どうしたんですか?」
 他のメンバーに先んじて、シルヴィアが聞いてきた。
「ああ、それはね・・・・・・」
 答えを言おうとした考助をシュレインが止めた。
「いや、我から言わせてくれ」
「そう? わかったよ」
 シュレインの様子から考助は、素直に答えを言うのを譲った。
「どうやら儀式のおかげで、進化できたようだ。吾は、加護の力を発現するだけのつもりだったのだがな」
「「「「「えっ・・・・・・!!!?」」」」」
 一同声を上げて驚いている。
 そのメンバーたちに、シュレインはクラウンカードを差し出した。
 今更スキルレベルがどうこう言う関係ではない。
 ステータスの種族の所に、以前とは違って「真祖ヴァンパイア」と表示されていた。
 それが進化と言うかは別として、間違いなく儀式を行う前のシュレインとは違う種族名になっていた。
 その表示を見たメンバーは、最初は驚き、次に喜びを表した。
 勿論先をこされたという思いはある。
 だが、それ以上にこれでようやく道が見えたという喜びの方が大きいのだ。
 まるで光が見えていなかった過去の状況からすれば、喜びの方が大きくなるのは当然と言えるのであった。
というわけで、シュレインが進化を果たしました。
皆様もある程度予想は出来ていたと思いますが、真祖ヴァンパイアですw
ちなみに、儀式が成功したから進化できたわけですが、考助の加護の力が無ければ成功はしていなかったです。
ピーチのように分かり易い発現の仕方ではないですが、こういう発現(?)のしかたもありますよということです。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ