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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第24章 塔と加護の力

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(2)フローリアの葛藤

 依頼を受け終わって、宿へ戻ってきていた考助達一同は、報酬の清算を行っていた。
 今回は前もって複数の依頼を受けていたために、前回よりも実入りが良かった。
 最初から複数受けても良かったのだが、三人(+五匹)で受けるのが初めてだったという事で、最初は一つだけにしていたのだ。
 依頼で受け取った報酬プラスその他の素材を売り払ったおかげで、かなりの額が稼げている。
 そもそも考助達がターゲットにしているモンスターは、冒険者たちの中では中の上あるいは、上の下の辺りの物を狙っているために良い値が付けられる。
 その報酬をきっちりと三等分して今回の清算は終わりだった。
 報酬に関しても、最初はセシルとアリサは三等分じゃなくてもいいと言っていたのだが、流石にそれは悪いという事で考助が妥協点として等分を提案したのだ。
 今は一緒に活動しているが、ずっとパーティを組んで活動を続けていくわけではない。
 ずっと続けていくのであれば、パーティのプール金として貯めていくという事も出来るのだが、そう言うわけにはいかない。
 考助としては、本来のパーティにお邪魔させてもらっている立場なので、プール金を入れることも言っていたのだが流石にそれは拒否された。
 その結果が、先の三等分という事になったのだ。
 三つに分けたうちの二つ分をどのようにしているかは、考助は関知していない。
 考助もそうなのだが、セシルもアリサも冒険者として活動して宿に泊まっているとき以外は、基本的に百合之神社で寝泊まりしている。
 そのために、普段は衣食住のうち食と住に関しては、ほとんどお金がかかっていないのだ。
 その分、百合之神社の管理の仕事と冒険者としての指名依頼があるのだが。
 はっきり言えば、二人の活動はクラウンの期待以上になっているので、何の問題もなく生活しているのだった。

 清算を終えて、後は解散というときになって、セシルが考助に気になっていたことを聞いてきた。
「そう言えば・・・・・・まだ、戻らなくてもいいんですか?」
 セシルのその問いかけに、考助は少しだけ考える様子を見せたが、すぐに返事をしてきた。
「うん。まだ・・・・・・駄目だね。今戻ったら、今までの事が水の泡になる・・・・・・とまでは言わないけど、意味が無くなっちゃうからね」
「そうなんですか」
 セシルとアリサは、考助が他の女性陣と別れて活動してる理由は、さほど詳しく聞いていない。
 下手に知ってしまうと色々と巻き込まれそうなので、あえて聞かないようにしているのだ。
「まあ、さほど長くはない・・・・・・と思うけど、状況次第ではまだ分からないな。迷惑かけてごめんね」
「迷惑なんて、そんな事!」
 頭を下げた考助に、アリサが慌てたように手を振った。
 実際、考助が加わったことによって、今まで以上に稼げていた。
 文句などあるはずがなかった。
 ちなみに、ナナが付いてきているから討伐が楽になっているわけではない。
 ナナがモンスターを狩るのは、彼女のストレス発散の時だけにしている。
 全てナナが手を出してしまうと、考助達の経験にならないので敢えてそうしているのだ。
「そうです。実際にこうして報酬を等分しても収入は上がっているんですから、迷惑なんてことはありません」
「そうか。それならよかった」
 セシルがそう言っているのに、もう一度謝るのはおかしいと考えた考助は、そう言って笑った。

「ところで、明日はどうする?」
 考助達は、今日遠征から帰ってきたばかりだった。
 そこそこ稼げている冒険者であれば、休みを取ったりするのが普通なのだ。
 勿論、冒険者でも底辺にいるような者達は、日銭を稼ぐので精いっぱいになって毎日活動するのも珍しくはない。
 セシルとアリサは、一度顔を見合わせた。
「私は、疲れていないとは言いませんが、それはここまでの移動の物だと思いますので、明日になれば回復していると思います」
「私もです」
 二人にそう言われた考助は、腕を組んだ。
 考助としても二人と同じような感じなのだ。
 依頼を受けるのに、狩場まで移動しているので当然その分の疲労はあるが、絶対に休みが欲しいかと言うとそうでもない。
 無理をするのは駄目だと言うのは分かっているのだが、かと言って宿にいても何もすることがない。
「うーん。じゃあ、明日は依頼だけ見に行くだけ行って、明後日からまた活動開始と言うのでどう?」
「問題ありません」
「同じく」
 考助の提案に、二人が頷いたところで明日以降の予定は決まった。
 こうして、もうしばらく考助の冒険者活動は続けられることになるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 フローリアは自室でため息を吐いていた。
 ピーチが加護の力を発現して以降、シュレインとコレットは何か思い当たりがあるのか、精力的に動いていた。
 加護を与えられている中で、もう一人残っているシルヴィアは、巫女と言う特質を持っていた。
 フローリアにしてみれば、それさえ生かせば加護の力はすぐに発現すると考えていた。
 実際はそんなことは無いのだが、隣の芝生は青く見える、というやつだ。
 翻って自分のことを考えると、何が特性になるのかさっぱりわからない。
 得意な物は何かといわれれば剣と答えるが、自分程度の力量の持ち主は、かなりの数いるだろう。
 それ以外に何か、と問われても答えが出てこない。
 結果として、自分の特性が何かと言われても答えが思い浮かばないのだ。
 加護の力は、それぞれの種族あるいは本人の特性を強く現していると皆が考えている。
 フローリアとしてもそれは疑っていないのだが、そうすると自分の特性が何か、と言う問題に突き当たってしまうのだ。
 頭の中で色々なことを思い浮かべては消し去り、と言ったことをグルグルと繰り返して、最後に大きくため息を吐いて決断した。
 フローリアにとっての最後の手段を取ることにしたのである。

 最後の手段とは、スピカ神と交神をすることだ。
 そもそもこの管理層には、本職の巫女であるシルヴィアがいる。
 そのためわざわざ自分が神と交神をする必要性が無いために、考助から交神具を貰っているにも関わらず、ほとんど使ったことがない。
 その手段を取ることにした。
 個人的なことで、神と対話などしていいのかという感覚もあるのだが、シルヴィアや考助を見ていると今更という感じなので、そこは目をつぶることにした。
 久しぶりで上手くいくかどうか分からないが、慎重に神具を発動するとしっかりと動いてくれた。

『いつでも連絡していいのに、こういうときしか連絡してくれない』
 出て来たスピカの第一声がこれだった。
『も、申し訳ありません』
『いい。フローリアの気持ちも分かるから』
 いきなりの台詞に謝ったフローリアだったが、スピカとしてもさほどこだわってはいなかったらしい。
『それよりも、加護の事だよね?』
『は、はい。どうしていいのか、さっぱりわからないんですが・・・・・・』
『考助の加護の事は、私も分からない。けど、フローリアの事は分かっているつもり』
『・・・・・・それは?』
『フローリア・ドリア・フロレス。私が加護を与えた貴方は何者?』
 フローリアは、スピカがわざとフルネームで呼んだことが分かった。
 確かに立場上は、既にフロレス王国の王女ではないが、名前までは返上していない。
 逆に国王がそれを認めなかったのだ。
 家族としての繋がりまで捨てる必要はないと。
『そ、それは・・・・・・でも私はもう既に・・・・・・』
『それは関係ない。今聞いているのは、立場としてのことではない』
『わ、私は・・・・・・』
『私が出来ることはここまで。後は自分できちんと考えると良い』
 スピカはそう言って、あっさりと交神を終えてしまった。
 何となく急いでいた様子もあったので、本当に合間を縫って答えてくれたのかもしれない。
 そのことに感謝しつつ、フローリアは今聞いた話をもう一度しっかりと考えるのであった。
と言うわけで、フローリアの話でした。
元々方向性を掴んでいたコレットとシュレインは後ほどになります。
次はシルヴィアの話になると思います。
今回みたいに、考助はちらっとだけ出演かな?
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