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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第24章 塔と加護の力

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(1)ピーチの覚醒

 シルヴィアに連れられてくつろぎスペースにきたピーチは、先ほど夢で見たことを全員に話した。
 ピーチが、寝起きというよりも、初めて使った力のために何となく不安定な感じになっていた。
 そのため、メンバーを集めたのはシルヴィアだ。
「それで? どんな感じなのだ?」
 ピーチが皆に一通りの説明を終えると、シュレインがそう切り出した。
「ええっとですね~。ちょっと待ってください。私もまだ少し整理できていないようです」
 ピーチはそう言って、一旦目を閉じて深呼吸をした。
「大丈夫ですか?」
 シルヴィアが気遣わしげに、その様子を窺っている。
「大丈夫ですよ~。でもちょっとだけ、まだ頭の整理が追い付いていないようです」
 何しろ夢で見たことをそのまま現実の事のように覚えているのだ。
 ただしそれは、寝た気がしないという感覚とは全く違っている。
 それが逆に混乱を覚える要因になっているようだった。

 ピーチは、しばらくして目を閉じたまま呼吸を繰り返していると、段々と落ち着いてきた様子を見せた。
「もう大丈夫です~。心配を掛けました」
「本当に?」
「ええ。何しろ初めて使った力なので~。体は何ともないのですが、精神的に落ち着けませんでした」
 ピーチがニッコリ笑ってそう言った。
 ここ最近少しだけ不安定だったのが、嘘のように消えていた。
 夢(?)のおかげとは言え、考助に会えたのが間違いなくきっかけになっていた。
「まず加護に関しては、先程も言った通りあくまでもきっかけのようです。今回はコウスケさんに会えましたが、次も同じとは限りません」
「どういう事?」
「これはおそらくなんですが、夢魔サキュバスとしての力が大幅に伸びたのかもしれません」
 サキュバスは、夢魔族とも言われるように夢の中に出てくると言われている種族だ。
 ところが、実際のサキュバスたちにはそんな力はない。
 あるいは、今こうしてピーチがその力を一部とはいえ発現しているという事は、過去にはそういったこともあったのかもしれない。
「ひょっとすると、力のあるサキュバスだけがそう言ったことが出来たのかもしれませんね~。後で、長老あたりにでも確認して見ます」
 ピーチは自分の推論を言った後で、そう結論づけた。

「なるほどの。過去力のあったサキュバス、か」
 ピーチの推論に、シュレインも何か思う所があるのか、大きく頷いていた。
「あれ? シュレインも何か心当たりあるの?」
「いいや。吾には無いが、一族の者には古い話を知っている者もおるからの。その者に確認をして見ようと思ってな」
「なるほどねえ。じゃあ私も聞いてみるわ」
 コレットがそう言った後、シルヴィアとフローリアに視線を向けた。
「貴方達は心当たりは?」
 コレットのその視線に、二人は戸惑った表情になった。
「力のある者と言われても、な」
「それこそヒューマンの中で、英雄と呼ばれる者達は数えきれないほどいますから」
 多すぎで絞り込めないと言うのがヒューマンなのだ。
 思えば、神々の子を持った者達を調べていた時もそうだった。
 余りに共通点が無さすぎて、絞り込むのが難しかった。
 結局また逆戻りになってしまったと思う二人なのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ピーチの力の発現は、神域でも注目されていた。
 といっても注目していたのは、三大神とその主だったが。
「見事に発現したわね。もう少しかかると思ってたけど」
 そう言ったのは、アスラだった。
 実はアスラも考助と同じで半月はかかるだろうと読んでいたのだ。
 ところが、結果は一週間だった。
 こと考助が関わる事柄になると、アスラと言えども予想が外されることが多々ある。
「これで確定でしょうか?」
「間違いなくね。まあ、まだ先を見る必要はあるけれど」
 アスラの答えに、エリスが笑顔を見せた。
「そうですか。それはよかったです」
「あらあら~? エリス姉、随分と嬉しそうだねえ」
 エリスのその表情を見て、ジャルがニヤニヤとした。
「そ、そんなことはありません。まだ、シルヴィアの事がありますし」
「そうねえ。発現したと言ってもまだ一部分だけだし。実際、本人たちの希望に添えるかどうかは、まだ分からない・・・・・・あら?」
 そう言って首を傾げたアスラに、全員の注目が集まった。

「どうかなさいましたか?」
 エリスの質問に答えず、しばらく瞑目していたアスラだったが、やがて目を開けてニコリと笑った。
「執念と言うか何というか・・・・・・。いえ、この場合は恋する乙女の力なのかな? 進化も一緒にしたみたいね」
「「「まさか!!」」」
 アスラの言葉に、エリス・スピカ・ジャルの三柱が同時に驚きの声を上げた。
 いくらなんでもそれは、彼女たちにとっても予想外だった。
「しかも、今まで見たことない種族ね、これは」
 そう言ったアスラは、ついには笑い出してしまった。
 すぐに進化をしてしまっただけでも十分に驚くことなのに、さらに新しい種になってしまった。
 こんなことは、少なくともアスラがこの世界を見守るようになってから数えるほどしかなかっただろう。
 それも世界が今ほど安定していない、まだ混沌とした時期の事だ。
 しばらく言葉を失っていた三柱だったが、やがてエリスがアスラに問いかけた。
「それで、どういった種族になっているのでしょう?」
「彼女、メインはサキュバスだけど他に二つ混じっているでしょう? サキュバスが表に出てくるんじゃなく、三つとも綺麗に混じりあった感じになっているわね」
「それはまたすごいですねえ」
「あり得ない」
 感嘆するように言ったのがジャルで、驚きを隠せないように言ったのがスピカだ。
「正確に言えば、彼女の性質がそのまま進化した感じなんでしょうね。間違いなく考助の加護の影響ね、これは」
「それは、その・・・・・・世界に影響は?」
 言いにくそうに、エリスがアスラに問いかけた。
「無いわよ。そんな物。元々ある物が混ざって新しくなっているだけなんだし」
「そうですか」
 アスラの答えに、エリスがあからさまに安心した様子を見せた。
 高位の種族が出る場合は、世界に大きな影響を与える場合がある。
 そういった時は、場合によっては討伐する対象になったりするのだ。
 もっともそういったことも、世界が混沌としていた時期の事で、現在のように安定しているときには起こったことはない。

「あとはまあ、本人がいつ気づくかと言ったところだけど、それも時間の問題でしょうね」
「では、順調そのものと言っていいでしょうか?」
「そうねえ。でも貴方達は、さほど安心していられないでしょう?」
 アスラはそう言って、エリスとスピカの方を見た。
 彼女たちには、加護を与えている者達がいるのだ。
「それは、しばらく様子を見てからがいい」
「そうですね。私もそう思います」
「そう。それならいいけど、しっかり注意をしておくことね」
 アスラの助言に、エリスもスピカも頷いた。
「ああ、いいなあ。私も誰かに加護与えようかな?」
 その様子を見て、ジャルがそんなことを言いだした。
「それもいいかもね。でも、今回の件に関しては、多分手遅れよ?」
「え? どういう事?」
「だって、もう一人の空いている方は、既にきっかけをつかんでいるみたいよ?」
 アスラがそんなことを言いだして、ジャルは肩を落とした。
 加護を持っていないのは三人いるが、うち一人は今回発現して、もう一人は条件的に加護を持てないようになっている。
 世界樹の巫女と言うのは、そう言う存在なのだ。
「そんなあ。今まで全くそんなそぶり無かったのに」
「彼女が正式に発現できたことで、触発されたのでしょうね。それに、ヴァンパイアの力が混じっていたことも良かったのかもしれないわね」
 アスラは、そんなことを言って視線を遠くに投げかけた。
 今後も、考助を中心とした者達の動向は、彼女たちにとっても目が離せないことになるのであった。
第24章スタートです。
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