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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第23章 塔とプチ家出

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閑話 海賊?(前編)

 シュミットはクラウン本部の自室で、最近の状況を確認していた。
 商売そのものは順調と言っていい。
 クラウンのメインの稼ぎは、冒険者が売ってくる素材からの稼ぎとイグリッド族の作っている工芸品が柱になっている。
 イグリッド族の工芸品は、既にアマミヤの塔の特産品として広まっているだけではなく、指名したうえでの依頼も入ってきているほどだ。
 元々イグリッド族の工芸品には、製作者の名前を入れる習慣があった。
 その名前に気付いた者が、どんどん広めていったらしい。
 既に十数人近くの製作者が、その名前だけで依頼されるようになっていた。
 イグリッド族も注文対応をきっちりやってくれているために、指名依頼が実現している。
 職人によっては、お客から指定された物を作っているだけではつまらない、と依頼を断る者もいるのだが、イグリッド族の職人には今のところそう言う者はいないようだった。
 もっとも、間に入っているヴァミリニア一族の者が、きっちりと調整をしているのかもしれないが。
 仲介をする方としては、きっちりと期間内に仕上げてきてくれているので、特に問題はないのだ。

 冒険者からの素材は、セーフティエリアにある店からの仕入れが、他の店と大きく違っている。
 セーフティエリアには、既にクラウン以外の他の商人ギルドも窓口を開いたりしているが、どうしても輸送コストがかかってしまう。
 一方で、転移門を使って移送しているクラウンは、その分のコストが大幅に削減できているのだ。
 他の商人ギルドからは当然のように、転移門の使用許可を求められているが、これに関してクラウン側は譲ることは絶対にない。
 名目上、セーフティエリアにある店舗の転移門は、行政府が管理している物ではなく、クラウンが直接管理していることになっている。
 そのため他の商人ギルドは、文句を付ける相手がいないことになるのだ。
 強いて言えば、塔の管理者に文句を言ったり転移門の使用許可を取り付けたりすることになる。
 だが、塔の管理者が表に出てくることは無いので、何も対応が出来ないと言うのが現状だったりする。
 結果として塔において、クラウンの商人部門は他の商人ギルドと比べて、遥かに優位に立って商売することが出来ている。
 当然ながら不公平だと言う声はあるのだが、その声を上げるべき相手が塔の管理者になるので、いつも有耶無耶のままになって終わっていたりするのである。

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 そのシュミットの元にある情報が届けられた。
 その情報を持ってきたのは、リュウセンの街から北の街への交易路を取り仕切っている者だった。
 リックは商隊の全てを見ている担当になるのだが、当然一人ですべてを見るわけにもいかないので、更に八つに分けて担当を振り分けている。
 情報を持ってきたのは、その内の一つの担当者だった。
「海賊の活動が、活発になってきている、ですか」
「はい」
 話の内容としては、セントラル大陸の北北東側、要するにこの担当者が担当している地域の海域で、海賊活動が活発化してきているという話だった。
 基本的にクラウンは、陸路による大規模商隊での移動がメインになっている。
 ただし、陸上輸送はコスト面ではやはり海上輸送には敵わないので、当然のように船での輸送も行っている。

「それで? 被害のほどは?」
「いえ。私どもはそもそもさほどの数を出してはいないので、被害と言えるほどの被害はありません」
 メインを陸路の大規模商隊での輸送に頼っているので、そもそもの絶対数が少ない。
 だが、クラウンから買い取った商品で儲けを出している商人ギルドが被害を受けるなどの間接的な被害が起きてきているのだ。
「なるほど。そういう事ですか」
 シュミットは話を聞いて、渋い顔になった。
 クラウンの船が直接的に被害が出ているのであれば、それこそ塔の機能を使う事も打診できた。
 だが、今回のような間接的なものになると、それも難しい。
 どこかで線引きをしないと、自分の所も助けてくれと言われて、際限がなくなってしまう。
 だからと言って、全く無関係な所にまで助けを出してくれと言う気にはならない。
「とは言っても、わざわざ報告に来るという事は、馬鹿にならない被害が出ているのでしょう?」
「ええ。すでに、商品の代わりに冒険者を多く乗せて対応している所も出てきています」
 海賊の被害にあう事を考えれば、冒険者の数を増やして対応した方がいいのだ。
「今はまだ大丈夫ですが、価格に影響が出ることが噂として出てきています」
「・・・・・・そっちの問題もありましたね」
 うっかりしていたが、海賊に対応した場合にかかる経費は、当然商品にしわ寄せがくる。
 買い叩かれるほどにはならないが、全体で買取価格が下がってくれば、当然その影響はクラウンにも出てくるのだ。
「わかりました。取りあえず、こちらで検討しますので、海賊の情報は特に注視してください」
「はい」
 報告が終わった部下が頭を下げて出て行った。
 残されたシュミットは、一つ大きくため息を吐いた。
 どう考えても商人部門だけで対応できるような話ではないので、他の部門と話す必要があった。

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「それで? 実際被害はどんなもんなんだ?」
 シュミットから報告を聞いたガゼランが、そう聞いてきた。
 ここには工芸部門長のダレスや生産部門のフーリクも来ている。
 ちなみに生産部門は、部門長をケネルセンの六侯が持ち回りで担当することになっている。
 現在の担当はフーリクなのだ。
「それが・・・・・・被害は出ているのは確かなんですがね・・・・・・」
 聞かれたシュミットが、何とも言えない表情になっていた。
「なんだ? 何か問題でもあったのか?」
「海賊とやらに奪われた積荷ですが、そっくりそのまま元々卸す予定だった所に売られているようなんですよ」
「ハ? どういうこった?」
 シュミットの言葉を聞いたガゼランが疑問を口にしたが、フーリクはすぐに思い至って頷いた。
「なるほど。そういう事か」
「はい。流れている先は、東の大陸が全てです」
「一つだけか?」
「いえ。複数ですが、さほど多くはないですね」
 シュミットとフーリク二人だけで、さっさと話を進めてしまって、ガゼランやダレスが置いてきぼりになっていた。
「おいおい。どーいうこった?」
 ガゼランの疑問に、二人がハッとしたように苦笑した。
「すいません。商売の話なので、つい先走ってしまいました」
「要は、被害に遭っているという商人ギルドと海賊とやらがグルなんだろう」
「まあ、まだ確定しているわけではないですがね」
「グルって・・・・・・そういう事かよ」

 海賊に襲われたことを装って、実際にはその海賊と取引をして多少の安値で売ってしまう。
 海賊は、その商品を元々売るつもりだった場所へとそっくりそのまま売り払う。
 襲われたと言い張っている商人ギルドは、安値で売った分を海賊に襲われたと言って、その商品をさらに安値で買うことにより補てんすることを思いついたのだろう。
 本来であれば、海賊に襲われると商品の値段は上がるのだが、あくまでその商人ギルドは襲われている側なので、仕入れ値で補てんするなどと言いくるめて交渉できるとみているのだ。
「まあ、そんなことをしても長続きはせんよ。すぐに他のギルドに締めあげられるだろう」
 フーリクはそう言ったが、シュミットが首を振った。
「ところがそうもいかない事情があるようでしてね」
「なんだと?」
「どうもその海賊の役目をしている集団ですが、裏に国があるようでして」
 流石にそれを聞いた他の者達は、すぐに事情を察した。
 間に国家が入っているとなると、単に儲けを狙っただけではなく、別の意図も見えてくる。
「・・・・・・こちらを狙い撃ちか?」
「そこまで露骨ではないですが、まあほぼ間違いないでしょうね」
 狙われている船から考えて、その大部分がクラウンが扱っている商品を積んでいる船だったりするのだ。
「それはまた、面倒なことを始めたもんだな」
 フーリクが渋面になりながらそう言ったが、この場にいる全員が同じことを思い浮かべるのであった。
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