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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第23章 塔とプチ家出

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(10)ピーチの覚醒

 考助がいなくなった管理層では、今まで通りとはいかないが、残ったメンバーによって変わらず塔の運営が行われていた。
 塔の運営と言っても、新しい召喚を行うとかの特別なことをしない限りは、今いる眷属たちに餌用の召喚陣を置くだけで良い。
 それに関しては、既にゴーレムが定時に自動で行っているので、問題ない。
 アマミヤの塔以外の塔に関しては、考助がいなくなる前からほとんど考助の手を離れていたので問題ない。
 とはいえ、時折寂寥感のような物が漂うときはあったが、むしろそれくらいは起こって当然だろう。
 今までメンバーの中心にいた考助がいなくなっているのだから。

 そんな中にあって、ピーチはいつもの塔での作業を終えて自室で休んでいた。
 こうして一人で過ごしていると、どうしても考助の事を考えてしまう。
 ここまで考助に依存しているとは思っていなかったのだが、いなくなると見えてくる物もあるのだと理解させられた。
 勿論、サキュバスとしての性質もあるのかもしれないが。
 サキュバスとしての性質なのか、それともピーチ本来の性質なのか、あるいは両方なのか。
 いずれにせよ、少なくともこういった自分の感情を知ることが出来たのは、考助がいなくなってよかった面の一つだろう。
 そんな前向きなことをようやく考えられるようになっていた。
 と、そんなことをベットの上で考えていると、いつの間にかウトウトと眠ってしまっていた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 気づけば、空を漂っていた。
 魔法の力を使って浮かんでいるのとは違っていて、ふわふわと本当に漂っているような感覚なのだ。
 そもそも、よく見れば手足と言った体自体が無い。
 不思議な感覚だが、自分の視線だけで空を飛んでいるような感じなのだ。
 初めてのその感覚に、何となく楽しくなってきたピーチは、その状態であたりを散策することにした。
 どこかまでは分からないが、ごく普通の平地が広がっている。
 平地だけで流石に場所の特定は出来ない。
 不思議と元に戻れなくなるのではないか、と言うような危機感は全くなかった。
 漂っている状態で、何故だろうと考えたが、ふと最近同じような事になったことを思い出した。
 それは、初めて考助の加護の力を発現しかけた時と同じ感覚を覚えていた。
 あの時は、今のように体が無いという事は無かったのだが、間違いなく同じ感覚というよりも、それを強くしたような感覚だった。

 何となく予感のような物を覚えて、その予感がした方へと移動した。
 どれくらい移動しただろうか。
 身体がないためか、時間の感覚が全く分からない。
 かなりの距離を移動したようにも思えるし、さほど移動していないようにも思える。
 ただ、間違いなく目的の場所についたと確信した。
 何故ならそこには、会いたかった考助がいたからだ。
 傍には女性二人もいる。
 それは、セシルとアリサの二人だった。

”コウスケさん・・・・・・!”
 呼び掛けようとしたが、体が無いことを思い出した。
 当然声を出すこともできない。
 念話のような事が出来ないか試したが、それも無理だった。
 慌てて何とかしようとするが、どうしても声を掛けることが出来ない。
 なぜそこまで慌てているかと言うと、考助に向かってモンスターの一体が近づいていたからだ。
 空の上から見ているためか、それが分かったのだ。
 しかも考助は、それにはまだ気づいていないようだった。
 離れた場所にいるために、それも当然かもしれない。
 だが、間違いなくそのモンスターは、考助を捕捉していた。

 一緒に行動している従魔たちは、モンスターとは真逆の離れた場所で狩りをしていた。
 考助の希望で、指示だけ与えて従魔たちだけで狩りをするとどうなるのかを観察しているのだ。
 本来であれば、護衛の役目をかねているナナだが、基本的には考助のいう事は絶対なので、指示されたモンスター達を狩るのに集中していた。
 察知能力が高いナナが傍にいないせいで、考助本人もセシルとアリサの二人もそのモンスターには気づいていない。
 その隙を狙っていたのかどうかはともかく、タイミングとしては最高だったのだろう。
 ピーチの予想通り、モンスターが考助に向かって突進して来た。
 少し離れた場所にいたためか、ナナも間に合わない状態だった。
 思わずピーチは、目を閉じようとしたが、そもそも目で見ているわけではないので、その後の流れを全て見ることになった。

 自分に向かって来るモンスターに気づいた考助が、慌てず騒がず何かに指示をした。
 ナナが傍にいなくなることで隙が出来ることは、分かっていたのだ。
 すぐにピーチも考助の傍にいる妖精に気付いた。
 あれは恐らく土の妖精のノールだろう。
 その指示が間に合ったのか、突進して来たモンスターが何かに弾かれて、考助までその牙を届かせることが出来なかった。
 さらに別の所での戦闘を終えたナナが、すぐに駆けつけてきてそのモンスターに追撃を掛けた。
 あとは、もうナナの独壇場で、あっという間にそのモンスターを片づけてしまった。
 セシルとアリサの二人が考助の傍に寄って、何事かを確認している。
 恐らく怪我がないことを確認しているのだろう。
 見た感じでは、どこにも怪我はないようなので、ピーチも安心してホッとした。

 モンスターを倒したナナを撫でていた考助が、ふとこちらを見た。
 その視線を感じて、ピーチは思わずドキリとしてしまった。
 身体も無いはずなのに、その視線ははっきりと自分を捉えている。
 考助にはどのように見えているのかは分からないが、なぜかきちんとピーチとして捉えていると分かった。
 その顔が笑顔になったと思った瞬間、急速に意識が浮上するような感覚を覚えた。
 もう少し待って、と思うがどうしてもその感覚に逆らうことは出来なかった。

 ピーチは、自室のベットの上でパチリと目を開けた。
 目の前にはなぜかシルヴィアがいた。
 いくら仲が良いとは言っても、流石に他の人の部屋に勝手に入るようなことはしないのだが、
「大丈夫? 何かうなされてたみたいだけど?」
 と言われて、その理由が分かった。
 どうやら考助を呼びかけた時の物が、そのまま寝言(?)として声に出ていたようだった。
 しかも部屋の外に聞こえてしまうほどの大きさだったらしい。
 若干赤くなったピーチだったが、それよりも今あったことを皆に伝えないといけない。
 先程の事はしっかりと覚えている。
「大丈夫ですよ~。心配かけてごめんなさい。それよりも皆に話したいことがあるんです」
 黙っておくという事は、流石に全く考えていなかった。
 いろんな意味で、今回のピーチの体験は彼女たちにいい影響を及ぼすであろうから。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「コウスケ様、どうかしましたか?」
 笑顔を浮かべながらある一点を見つめる考助に、セシルが首を傾げつつ聞いてきた。
「ああ、いや。何でもないよ。ちょっと良い事があったんだ」
「そうですか」
 たった今考助は、モンスターに襲われかけたのだが、それが良い事とはどういう事なんだとセシルは首を傾げたが、それでも一応頷いておいた。
 考助も敢えて説明しようとはしなかった。
 今、考助が見た物をセシルに説明しても、余計訳が分からなくなると思ったのだ。
 考助にしても感覚的に捉えただけなので、上手く言葉で説明できる自信がない。
 光だったとか半透明だったとか、そういった形のある物ではなかった。
 だが確かに、ピーチが上空にいたのを感じた。
 感じたのは、加護の力を通してだった。
 考助の予想では、早くても二週間はかかると思っていたのだが、一週間ほどで力を発現するきっかけをつかめたらしい。
 流石に今すぐに戻れる程ではないが、思った以上に順調に行っているようだった。
 今はピーチだけだが、いずれは他のメンバーもそれぞれの感覚を掴めるだろうと思っている。
 ピーチが出来たのなら自分たちも、と他の者達も考えるだろう。
 それに、別に全員がすぐに結果を出す必要性もない。
 誰か一人だけでも結果を出すことが出来れば、それが全員の安心感になるだろう。
 勿論、考助も含めてだ。
 だからこそ、今はまだ会いたいという想いを抑える考助であった。
これで第23章は終わりです。
ピーチがぎりぎりで結果を残してくれたので、次章の初めには管理層へ戻れると思います。
その前に閑話を挟むと思いますが、お待ちください><

11/12 ナナがモンスターの接近に気付かないのはおかしくないか、というご指摘を受けましたので、別の場所で戦闘中であることを付け加えました。
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