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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第23章 塔とプチ家出

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(7)ナナ無双

 今現在、考助の目の前でセシルたちのモンスター討伐が行われていた。
 狼二匹と狐二匹で牽制している隙を狙って、二人が精霊魔法を使って確実に仕留めている。
 考助達が今いるのは、第四十四層で中級ランクに位置しているモンスターが群れで出現する場所だ。
 モンスターによっては、単独ではさほど強くはないが、群れになると強さを発揮する物もいる。
 そういったモンスターが、大量に出てくる階層でもある。
 群れを成して襲ってくるため、従魔たちだけで仕留められるわけもなく、精霊魔法の出番となっているのだ。
 今相手にしているのは、ビッグマウスという大型ネズミのモンスターだ。
 これも個体ではさほど強くはないが、複数で連携してくるために、中級モンスターに分類されている。
 個体であれば下級に分類されるのだが、まず個体で遭遇することは無いために、中級モンスターとなっている。
 最初は十体いたビッグマウス達も、彼女たちに確実に討伐されていって、遂に最後の一匹になっていた。
 その最後の一匹を狼の一匹が仕留めて、この場での討伐は終了となった。

「いやいや、見事なもんだね。全く出番がなかったし」
 考助がそう言って、ビッグマウスの処理に加わった。
 もし危なくなれば介入することも考えていたのだが、全くその必要は無かった。
 ここに来るまでに、何度か彼女たちの戦闘を見て来たが、今のところぎりぎりの戦いになるような場面はなかった。
「ありがとうございます。ですが、ここまで楽になっているのは、間違いなくナナのおかげですよ?」
 セシルがそう言って、アリサからビッグマウスの肉を与えられて嬉しそうに食べているナナを見た。
 ナナは現在、大神としての姿ではなく、中型犬くらいの大きさになっている。
 それでもモンスター達には、その強さがわかっているのか、例え考助達を襲って来たとしても、ナナの所に近寄ろうとはしないのだ。
 そのため、ナナが傍にいる考助にも近寄っては来ていなかった。
 セシルとアリサも当然それが分かっているので、考助達の事を気にせずに戦闘に集中が出来ている。
 襲って来るビッグマウス達もナナを常に気にしているために、微妙に連携が乱れたりしていた。
 それだったら最初から襲わなければいいのにと思うのだが、モンスターにはモンスターの事情もあるのだろう。
 単純に縄張りを侵された為に来ているだけかもしれないが。

 今回引き受けた依頼は、このビッグマウスの毛皮を手に入れること。
 数は一応五体分となっているが、物によっては引き取ってもらえない場合もあるので、多めに狩っておくのは冒険者たちの間での常識だった。
 ついでに、ビッグマウスは肉も買い取ってもらえる。
 高級食材と言うわけではないのだが、生息している場所が大抵人里離れた場所なので、珍味となっていたりする。
 勿論これは、セントラル大陸以外の大陸の事情で、セントラル大陸ではまず手に入らない食材だった。
 だった、と言うのは、この階層にビッグマウスの生息が確認できたため、中堅以上の冒険者であれば手に入れることが出来るようになっていた。
 問題は持ち運びに関してなのだが、普通の冒険者たちは大抵荷車を用意して持ち運んでいる。
 ただし考助達は、荷車などは用意していない。
 これは肉を諦めているのではなく、別の手段があるためだ。
 血抜きなどのこの場で出来る処理を済ませた後に、セシルが一体一体ビッグマウスに触れていく。
 すると、そのたびにビッグマウスが消えて行く。
 これは、セシルが腕に着けている腕輪に秘密がある。
 秘密と言うよりも、考助が作ったアイテムボックスの魔法が封じられた腕輪なのだ。
 最初これを渡されたセシルは頭を抱えたのだが、今では普通に使っていた。
 当然こんなものは、普通の冒険者は所持していない。
 例によって、使われている素材の貴重性から量産は不可能だとシュミットも判断している代物だった。
 こんなものを持ち歩いていれば、最初は狙われたりもしたのだが、最近はほとんどなくなった。
 第五層を拠点にしている冒険者たちの間では、既にセシルから奪ったとしても意味がないと言う話が広まっているのだ。
 というのは、この腕輪はセシルの魔力に反応するように作られているので、セシル以外の者が使えないようになっている。
 どうせ隠すことは不可能だと悟ったセシルが、他の冒険者たちの前でそのことを証明したために、その話はごく当たり前に広まった。
 結果としてセシルたちは、討伐したモンスターの持ち運びには苦労をしなくて済むという状態になっている。

 全てのビッグマウスを片付け終えたセシルは、考助を見た。
「これで依頼は終わりですが、すぐに戻りますか?」
 考助達がこの階層に来るまでに、丸一日がかかっている。
 この塔を攻略した時のように、コーたちを使えばそんなにかからないのだが、わざわざ目立つ必要もないので徒歩でここまで来ていた。
 第四十五層までの階層は、冒険者たちが普通に活動している階層になるので、どこにその目があるのか分からない。
 目撃されるのが一度や二度ならいいのだが、それ以上になると、確実に冒険者たちの間で噂になるだろう。
 そういう理由もあって、飛龍たちは使っていない。
「んー。それでもいいけど、他にお金になりそうな物って、この辺にある?」
「それは勿論あります」
 考助の質問に、アリサが即答した。
 そもそも一つの依頼だけを片づけるために、ここまで遠征してくる冒険者は少ない。
 複数の依頼を同時に受けることも可能なため、大抵は二つ三つを同時に受けてくるのが普通なのだ。
 今回考助達は一つしか受けていないが、これもお金には困っていないからこそできることだったりする。
「だったら、他にも何か狩ってから行こうか」
「狩りですか? 採取ではなく?」
「ああ。ナナが今の戦闘を見て、狩りをしたがっているみたいだからね」
 考助がそう言ってナナの方へと視線を向けた。
 そこには、ビッグマウスの肉を食べて満足そうにしているナナが寝そべっていた。
 食事の後は、狩りをしたいという事だろう。
 普通は逆なのだが。
「そうですか。わかりました」
 アリサがそう言って、次の狩場へと案内し始めた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 次の狩場は、ナナ無双だった。
 アリサが案内したのは、ブラックホースというモンスターが群れを成しているところだった。
 いくつか群れになっているところはあったのだが、その一つを狩ることにして向かった。
 ブラックホースは、馬と同じ種とは言えその性格ははっきり獰猛で、モンスターの例に洩れず肉食だ。
 最初ブラックホース達は、考助たちを認識した途端に、勢いよく向かって来たのだが、途中でその勢いを失った。
 明らかにナナを意識したためだった。
 だが、その時には既に遅かった。
 考助が「好きに狩っていいよ」と言った瞬間から、蹂躙が始まった。
 ナナと一頭目のブラックホースが交差したと思った次の瞬間には、ブラックホースの首が飛んでいた。
 基本的にナナはその牙を使って狩りをするのだが、明らかに魔法的な何かも使っているだろう。
 その光景を見たブラックホースたちは、すぐに逃げに転じたのだが、時すでに遅し。
 あとはナナが好き勝手に、残りの五頭を狩って終わった。
 五頭は生き延びるために別々の方向に向かって逃げたのだが、結局全てナナに追いつかれて狩られてしまった。

「・・・・・・なんというか、見事としか言えないですね」
「あっという間だった・・・・・・」
 ナナの戦闘を見たアリサとセシルの感想だ。
「まあ、一対一で上級モンスターを圧倒できるくらいだからなあ」
 考助にしてみれば、当然とまではいかないが出来るだろうなという感想だった。
「上級モンスターを圧倒ですか」
 セシルがその感想を聞いて、若干引き攣った表情になっていた。
 強いとは聞いていたが、そこまでとは思っていなかったのだ。
 ブラックホースの傍で嬉しそうに尻尾を振っているナナの所まで行った考助は、その首筋を撫でて褒めてあげるのであった。
ナナ無双でした。
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