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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔へ色々な種族を受け入れよう

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(6) 変化

 第五層の第一号店の開店の報告を聞いて、順調な滑り出しにホッとしていた考助は今、第七層で灰色狼達に囲まれていた。
 ギルドカード(予定)へのステータスを転写させる神具の開発に行き詰っていたところに、イスナーニに気分転換してくるように勧められたのだ。
 第七層の灰色狼は、更に数を増やして現在では百頭ほどになっていた。
 <統率>のスキルを持つ個体が増えたので、それに合わせて召喚数を増やしたのである。
 おかげで、この周辺一帯は完全に彼らの縄張りになっている。
 とはいえ第七層全域を制圧するほどではない。だが、狼たちの行動範囲を考えると、今ある拠点だけではこれ以上の縄張りを広げるのは厳しいかもしれない。
 かといって、下手に第七層にもう一つの拠点を作ると、その二つの拠点同士で勢力争いが発生しかねないので、考助の小さな悩みの種になっている。
 どうしようかと考えている考助のそばに寄ってきた狼がいたので、首筋を撫でてやる。
 するとその狼も嬉しそうに尻尾を振り返してきた。
 その狼の様子を見ていた考助は、ちょっとした違和感に気付いた。
「・・・あれ? お前、少し白くないか?」
 違和感の理由に気付いて、周囲にいるほかの個体と比べて見ると、明らかに毛色が白くなっている。
 慌ててステータスを確認してみる。

 固有名:ナナ
 種族名:白狼
 固有スキル:遠吠えLV4 体当たりLV5 噛みつきLV4 威嚇LV4 集団行動LV4 言語理解(眷属)LV1 神力操作LV1
 天恵スキル:統率LV3 大神の欠片(新月)
 称号:考助の眷属 大神の使い

 見たことのないスキルと称号が増えていた。
 他の狼達にないスキルが<神力操作>で、<大神の欠片(新月)>と<大神の使い>に関しては、完全に初めて見るものだった。
 大神=オオカミというくらいだから、狼につく特殊な物かもしれないが、他の狼達には確認しても無かった。
 種族名も灰色狼から白狼に変わっている。
 これも特殊な称号やスキルを得たから変わったのか、白狼になったのでこれらのものがついたのかは不明だ。

(うーん・・・他に比べるものがないから比較のしようがないな・・・)

 どこか別で白狼という種を確認することができれば、比較することも可能なのだが、残念ながら召喚リストにも無かった上に、塔の他の場所でも見たことはなかった。
 一応、考助に付いてきたミツキに確認してみた。
「ミツキ、白狼とか大神って聞いたことある?」
「大神・・・はないけど、白狼は聞いたことあるわ」
「え・・・!?」
「確か、雪の降る寒い地域にいる狼だったはずだわ」
「寒いところか・・・」
 考助の管理している塔には雪の降る階層はなかったはずなので、それでは見たことが無くても仕方がない。
「詳しく知りたいんだったら、私より詳しそうな人に聞いてみたら?」
「詳しそうな人・・・? そんな人いたっけ?」
「雪の降る寒い地域に住んでた人達が、いるじゃない?」
「・・・・・・あ、そうかエルフ」
 第七十三層に移住してきているエルフたちは、元々雪の降る地域に住んでいたのだ。
 早速ナナを引き連れて、第七十三層に行ってみることにした。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 現在、第七十三層ではエルフたちの移住が着々と進められていた。
 そんな中訪れた考助に、エルフの代表者であるリレースは、快く対応してくれた。
「移住作業でお忙しいのにすいません」
「いえいえ、とんでもありません。それで今日はどのような用件で来られましたか?」
「ええ。ちょっとお伺いしたいことがありまして・・・この白狼についてなんですが」
 考助はそう言って、一緒に連れてきたナナの首筋を撫でた。
 撫でられたナナの尻尾は嬉しそうに左右に揺れている。
 それをみたリレースは、一つため息を吐いた。
「・・・やはりその狼は白狼でしたか」
「? そうですが、何か?」
「いえ、すみません・・・私たちにとって白狼は、天敵といっていい存在でして・・・」
「ということは、あちらの里では、白狼が出てきてたんですね?」
 勢い込んで聞いてきた考助に、リレースはわずかに首を傾げたが、話を続けた。
「ええ。単体でも油断すれば危ない相手ですが、それ以上に集団で襲われると非常に手ごわい相手でした。
 さすがにあちらでは、厳しい環境のせいでそこまで大きな集団になることはありませんでしたので、幸いにも対処は可能でした」
「・・・なるほど。ということは、あまりこちらには連れてこないほうがいいですかね?」
「いえ、そこまでしていただかなくても大丈夫かと。我々エルフは、野生の者が相手に従っているかどうかの見分けはつきます。もちろん、下手にちょっかいを出せば、すぐに自分に牙をむくことも分かってますから、変に手を出すものもいないでしょう」
「そうですか。それはよかったです」
「それで、聞きたかったことはそれだけですか?」
「いえ。それもなんですが・・・白狼と合わせて大神について何か聞いたことはありませんか?」
 考助から飛び出してきた質問に、リレースは目を丸くした。
 自然を崇拝するエルフにとって、大神というのはごく普通に知られている神の一柱である。
 ただ、その神の名を人族である考助のから聞くとは思わなかったのだ。
「白狼と狼ですか・・・残念ながら私では・・・」
 わからない、と続けようとしたリレースに、口を挟んできた者がいた。
「大神の化身、白狼」
 その舌足らずな口調で話したのは、世界樹の妖精であるエセナだった。
 考助が七十三層に来ていると気づいて来たのだろう。
 残念ながらその口調と言葉足らずなせいで、内容は伝わりづらいのだが。
「・・・・・・大神とは自然の神。あるいはハイエルフの方々ならば、何かわかるかもしれません」
 エセナの口調から大神と白狼の間に何か関係があるのならば、と思いリレースはそう口にした。

 たまたま建築中の村の中にいたゼパルが、この場に呼ばれた。
 先程のエセナの言葉を繰り返し、何かわかることはないかと問いかけた。
 しばらくの間、目を閉じて考え込んでいたゼパルは、やがて口を開いた。
「これは伝説というよりほとんど御伽噺の類になるのですが、よろしいですか?」
「なんでもいいよ。知ってることあったら教えて」
「わかりました。・・・かつて、この世界が出来たばかりの頃、大神は地上で普通に生活していて、その時のお姿が白狼だったという話があります。ただ、今のような狼の大きさではなく、比べ物にならないほどの大きさだったということです」
「なるほど・・・ね」
「御伽噺として伝わってることからも分かるように、我々の間でもほとんど信じている者はいませんが」
 そういうことならエルフまでその話が伝わってないのも分かる、とリレースは頷いている。
「それで、なぜまたそのような話をお求めでしたか?」
 ゼパルに問われた考助は、ナナの話をした。
 それを聞いたゼパルとリレースは、絶句した。
「・・・・・・なんと、まあ」
「いやまあ、完全にその話と結び付けていいかは、わからないけどね」
「・・・それは、まあそうでしょう」
「とにかく、参考になったよ。ありがとう」
「こんな事でしたら、いつでも聞きに来てください」
 ゼパルとリレースは、考助に向かってそう言った。

 ミツキとナナを連れてエルフの村を出た考助は、次は狐たちの様子を見に向かったのであった。
次話翌日20時投稿予定
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