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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第22章 塔と祭り

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閑話 裏側の決着

ディオンのその後です。
 ディオンは現在、ナンセンの宿に宿泊していた。
 当初ディオンは、そのまま塔の宿に泊まるつもりでいたのだ。
 別に、誰かも分からない男から言われたとおりにする必要もないと考えていたのだが、部下の一人がすぐに塔から出るように進言してきたのだ。
 結果としてその部下の言うとおりにして正解だったのだが、そんなことは苛ついているディオンには関係が無かった。
 ところが、その部下のいう事を無視してでも塔に留まろうとしたのだが、その状況を変えることが起こったのだ。
 塔の外の街で待機していた部下から、すぐに父に連絡を取るように報告があったのだ。
 父と言うのは、当然ディオンの父の事で、現ビエラ家当主のことだ。
 いくらディオンとは言え、こうも自由に動けているのは、その当主の黙認があるからこそだ。
 ただしここに来る条件として、連絡はいつでも取れるようにと言われていた。
 その約束がある以上、その報告を無視するわけにはいかなかったのだ。

 ナンセンの宿で父であるビエラ家当主アデルモと遠距離通信を行った。
 塔からわざわざ出て来たのは、塔の中から連絡が取れるかが不明だったためだ。
 さらに、距離が離れているにも関わらず通信が出来るのは、公爵家の財力があるからこそだ。
 金に物を言わせて買った使い切りの道具を使って交信を行うと、すぐにアデルモが出て来た。
 いつもは泰然とした雰囲気のアデルモが珍しく若干慌てた雰囲気になっていた。
 内心で首を傾げつつ挨拶をしようとするが、アデルモはそれを制止して、すぐに要件を切り出した。
 その要件とは、塔から完全に引き上げるように、という事だった。
 いきなりの事で、慌てたディオンだったが、すぐに理由を問いかけた。
 だが、アデルモはそれには答えず、戻ってくるようにと言うだけだった。
 流石のディオンも、不可解に感じつつもアデルモのいう事は聞くしかない。
 何しろ、ここに滞在する費用も、公爵家から出ているのだ。
 不満全開で、もう一度戻ってくることを決意しつつ、ナンセンからも去るのだった。
 この時は、もう二度と塔に踏み込むことが無くなるとは考えもしていなかったディオンであった。

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 アレクとの交信を終えたフロレス王国国王フィリップは、すぐに公爵を呼び出した。
 なぜアレクと直接交信出来ているのかというと、以前にアレクから直接通信道具を送ってきたのだ。
 最初は冗談だと思ったのだが、塔にいるアレクといつでも交信が出来る魔道具という事だった。
 しかも既存の交信用の魔道具と違い、使い捨てですらないという。
 最初は疑い、事実だと分かると量産できないかアレクに打診した。
 それも当然だろう。
 使い勝手のいい交信用の魔道具は、長年研究されているが実現できていない物なのだ。
 もしこんなものが実現されていると知られれば、開発に成功した開発者は真っ先に各国から狙われることだろう。
 だが、アレクから量産できない理由を聞いて、断念するしかなかった。
 使われている材料が、とんでもなく高価な物だったのだ。
 流石に国宝まではいかないが、その素材だけでも小国であれば傾くような値段がつくものが使われていたのである。
 希少性もそうなのだが、何しろその素材が採れるモンスターを討伐することが、出来ないはずだったのだ。
 誰がそんなモンスターを討伐したのか、聞こうとするほどフィリップは愚かではなかった。
 何しろアレクがいるのは、既に攻略されている塔なのだから。
 その塔に出現するモンスターから採れた素材という事は、当然討伐したのは塔を攻略した者なのだろう。
 そんな者に迂闊に手を出せるはずがない。

 そんな高価な交信具を使って、アレクから通信が入っていることに気付いたフィリップは、すぐに用件を聞いた。
 そもそもアレクが、わざわざこうして交信をしてくること自体珍しいことだった。
 何かあったと考えるのが当然だろう。
 そして、そのアレクから要件を聞いたフィリップは、見事に表情を変えた。
 そんな父の苦悩を分かっているのか、アレクが最後に付け足して来た。
「別に今すぐどうこうという事はないです。というよりも、もう関心を失っているでしょう。ですが、次があった時にはどうなるか・・・・・・出来れば考えたくありません」
 息子の言葉に、フィリップは深く頷き、さらに深く感謝した。
「そうか。済まなかった。知らせてくれて感謝する」
「いえ。流石に私も故国での騒ぎは、出来るだけ起こってほしくありませんから」
 そう言って来たアレクにもう一度礼を言ったフィリップは、そうしてすぐに行動を開始したのであった。

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「すぐにそなたの子息を塔から引き揚げさせろ」
 アデルモを呼び出したフィリップは、余計なことを言わずにすぐにそう切り出した。
「なっ・・・・・・!?」
 フィリップが言った意味を理解したアデルモは、すぐさま反論しようと口を開きかけた・・・・・・が、国王が手のひらを向けて来た為に、言葉を発することが出来なかった。
「そなたが言いたいこともわかる。余にはそなたの息子の行動を制限する権限などない。・・・・・・だが、それが国に関わる事になると話は別だ」
「・・・・・・どういう事でしょう?」
 フィリップが言った事が分からずに、アデルモが問いかけた。
 勿論、探りを入れるためだ。
 そしてフィリップも、この件に関しては、アデルモに隠すことなどないので、すぐに事情を話した。
「・・・・・・これが、この国出身のただの冒険者だったり、商人だったりすれば話は別なんだろうがな。公爵家の跡取りとなると、余としても無視するわけにはいかん」
 フィリップから全ての事情を聴いたアデルモは、若干顔が青くなっていた。
 普段であれば、そのような表情を見せることのない公爵家の当主に、フィリップも多少溜飲を下げた。
「そ、その話は一体どうやって・・・・・・」
 そもそもアデルモさえまだ聞いていない情報を、どうやってフィリップが仕入れることが出来たのか、当然ながら思った疑問を口にした。
「余にも独自のルートくらいあることは、そなたにも分かっていよう? そんなことよりも、早く先ほど言った通り子息を呼び戻すんだな。余はこの国で、サジバルの街の再現をしとうない」
 サジバルの街で起こったことは、既に世界中に広まっている。
 勿論その原因も合わせてだ。
 だからこそ、各国は調査員と言う名のスパイは入れているが、あくまでも情報収集だけに限っているのだ。
 余計な工作活動などすると、どんな報復があるのか分かったものではないと理解できている。
 当然その情報は、アデルモにも伝わっている。
「そ、その・・・・・・塔を離れるだけでは駄目なのでしょうか? 国に戻るのではなく」
 そう進言したアデルモに、フィリップは訝しげな表情になった。
「ん? いや、それなら構わんと思うが?」
「で、でしたら、フローリア姫を探すのは・・・・・・」
 何とか加護持ちを家に入れたいアデルモとしては、どうしてもフローリアを探し出して既成事実化してしまいたいのだ。

「ああ、そうか。そなたには()()言ってなかったか。フローリアなら、既に塔の管理者のお手つきになったそうだぞ?」
「なっ・・・・・・なんっ!?」
 突然もたらされた情報に、アデルモは驚愕した。
「いや、済まなかったな。元婚約者だったそれぞれの家の者達には伝えていたので、そなたにも伝わっていると思っていた」
 申し訳なさげに言う国王に、アデルモは内心で絶対嘘だと思いつつ、大袈裟に肩を落として見せた。
 フィリップが言ったことを理解できないほど、アデルモの頭の回転は弱くはない。
「・・・・・・そうでしたか」
「うむ。それが良い事なのか、悪いことなのか、この国としては微妙な所だが・・・・・・まあ、こちらから余計な手出しをしない限りは大丈夫であろう。そういうわけだから、先の件頼んだぞ」
 フィリップはそれだけ言い置いて、アデルモとの会談をここで打ち切った。
 何とも言えない表情をして去っていくアデルモを見送ったフィリップは、しっかりとこの後どういう対処をするのか確認するよう手配をしたうえで、次の仕事に取り掛かるのであった。
ディオンのその後と言いつつ、出て来たのはアレク父がメインでしたw
ちなみに、アレク父が使っていたような魔道具は、少しずつですが表に出ています。
一般の人が持つと大変なことになるので、主に高い地位にある相手に渡していっています。
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