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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第22章 塔と祭り

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閑話 覚醒した神職

 リリカが変わったとサリーが気づいたのはいつだっただろうか。
 このアマミヤの塔を拠点に移してしばらくの間は、以前とは変わっていなかった。
 もともとサリーのパーティの回復役として、無くてはならない存在であるリリカ。
 いや、他のメンバーも一人欠けるとパーティとしてはうまくいかなくなるのだが、それでもリリカの存在は大きい。
 女性パーティだけで構成されているサリーのパーティにおいては、女性の神職はどうしても必要不可欠なのだ。
 神殿に行けば、女性の神職はたくさんいる。
 だが、わざわざ危険な冒険者になるような巫女は、なかなかいない。
 そう言う意味では、リリカがパーティに入ってくれたのは、非常に幸運だったと言える。
 サリーが初めにリリカが変わったと意識したのは、神殿の清掃活動に従事するようになってしばらくしてからだ。
 何というか、思い込めば一直線だった性格が、落ち着いて物事を見ている様子が見られるようになった。
 以前に神殿の扱いについて、行政府に直接抗議しに行くほどだったのだが、そうした行動が少なくなっていた。
 思えば、その頃から変わっていたのかもしれない。
 勿論その時は、サリーも気づいてはいなかったのだが。

 リリカの変化について仲間たちが気づいたのは、依頼をこなすためにフィールドに出ている時だった。
「あ、あんなところに、特薬草」
「おいおい、またかよ」
 呆れたように、サリーがリリカに向かって言った。
 その時既に、リリカは特薬草を採取していた。
 ここのところリリカは、フィールドに出るたびに、一度は珍しい素材を見つけたりしていた。
「うーん。なんでだろうね?」
「まあ、いいんじゃないの? パーティの稼ぎになることは間違いないんだし」
 首を傾げるリリカに、メンバーの一人であるクレールが笑顔を見せて言った。
 サリーのパーティは、戦闘で得た素材だったり採取した物は、パーティの共有財産になる。
 その上で再分配されるのだが、こうもリリカばかりが珍しい素材を見つけると、不公平感が出てくるかもしれない。
 だが、そのリリカは、特に気にした様子を見せていない。
 以前、二人きりの時に話を聞いたりしたのだが、今のままで構わないと言っていた。
 一応再分配は、パーティの共有資産から差し引いた額を分けているのだが、等分して余った半端な額をリリカに渡したりはしている。
 当然、他のメンバーに確認を取った上でだ。
 まあ、その分に関しては、リリカはパーティの共有資産に入れたりしているので、今のところは不満に思うメンバーも出てたりはしてない。
 リリカも余計な分を自分がもらうと、パーティに不満が出てくることは分かっているのだろう。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 祭りだと言うのに、神殿の清掃に行っていたリリカが戻ってきた。
「ただいまー」
 パーティが泊まっているのは、宿の大部屋の一つだった。
 冒険者は、大部屋を一つ借りて一つのパーティで泊まるのが普通だった。
「あれ? リーダー、祭りに行ってなかったの?」
「ああ、一人で落ち着いて飲んでる方がいい」
「ああ、そういう事」
 酒の入ったコップを掲げたサリーに、リリカは頷いた。
「帰ってくるときに、何か買ってくればよかったね」
「気にしなくていい」
 つまみは十分に用意してある。

「それよりも、何か好い事でもあったのか? 神殿に行ってたと思ったが?」
「あれ? わかる? 流石リーダーだなあ」
 サリーがリリカの変化に気付いて聞くと、その当人は頬を撫でた。
 特に本人としては、顔に出していたつもりはなかった。
「いや、顔に出ていたというよりも、何となく雰囲気が朝出ていく時と違ってる」
「ふーん。そうなんだ。まあ、あったと言えばあったけど、詳しくは言えないかな?」
 リリカが首を傾げつつそう答えた。
 サリーもプライベートに関わる部分まで深く聞くつもりは無かったのだが、リリカの次の言葉で今の雰囲気は納得できた。
「ただ、神殿でシルヴィア様に会えたよ」
「何? 今日も来ていたのか? 今日みたいな日に神殿に行くなんて、リリカぐらいだと思ったが?」
「うわ。ひっどー。でもまあいいや。今日は、そのおかげで、シルヴィア様に会えたから」
 以前からリリカが、塔の巫女であるシルヴィアに憧れていることは分かっている。
 <塔の巫女>という呼称は、最初に誰が呼んだかは分からないが、いつの間にかシルヴィアに付けられていた。
 サリーも一度だけ神殿で会った事があるが、確かにリリカが憧れるのもよくわかる存在だった。
 勿論、リリカだけではなく、神殿に清掃活動来ている熱心な信者や神職たちも同じように感じたというのも同時に理解できたのだが。

 結局この日は、特にこれ以上の変わった話をすることは無く、後は仲間たちが祭りから戻ってくるまで、普段と変わらない会話をしたのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 街での祭りが終わって数日が経ったある日。
 行政府からは重大な発表があったりしたが、冒険者であるサリーたちには特に何かが変わるわけでもなく、今日もいつも通り依頼をこなしていた。
 今日の依頼は、街の周辺に出てくるラジカルブタの討伐だ。
 この辺りにある農作物を荒らす害獣の為、狩れば狩るほど報酬になる。
 勿論狩りをするためには、そのラジカルブタを見つけないといけないのだが・・・・・・。

「あっ。あっちの方向にいない?」
「・・・・・・いるね」
 リリカが差した方向を、パーティの索敵役であるアウラが同意した。
「おいおい。ほんとに今日はどうしたんだ? これで何度目だ?」
 既に三度、リリカはアウラよりも早くラジカルブタの群れを見つけていた。
「うーん。なんか、勘が良くなってるみたいな感じ? 実際にちゃんと確認できているわけじゃないから、アウラはどうしたって必要だよ?」
 リリカ本人もよくわかっていないのか首を傾げていた。

「勘が良くなっている・・・・・・ね」
「ん? リーダー何か思い当たりでもあるのか?」
 群れのいる場所に向かう途中でのサリーの呟きに、クレールが反応した。
「いや、何。大したことじゃない。リリカが神殿通いするようになってから、そうなっている気がしただけだ」
 サリーの言葉に、一同が沈黙した。
 全員心当たりがあるのだろう。
「へー。神様のご利益ってか? そんなこともあるのか?」
 クレールがリリカの方を向いて聞いた。
「いや、どうだろ? 自分の事だからよくわかんないよ」
 ほんとは心当たりがありすぎるのだが、流石に加護の事は言えないので、リリカは無難にそう答えておいた。
「そんなもんか」
 聞いたクレールは、そう納得してくれた。
 けれども、こういったときに妙に勘が鋭いサリーは、誤魔化しきれてないかもとリリカは思っていた。

 この日は、五つの群れを見つけることが出来た。
 今までだと、三つも見つければいい方だったので、かなりの収入になった。
 五つの群れのうち、三つがリリカが見つけて、残り二つはアウラが見つけた。
「やれやれ。これは負けてらんないな」
「だから、さっきも言ったけど、ちゃんと私が見つけているわけじゃないから、ノーカウントだって。私の場合は、どちらかと言うと、お告げに近いかな?」
「へ? なんだそれ?」
「うーん。私もよくわかってないんだけど、巫女の力を高めるとそういう事が起こるみたい?」
「なんだ。自分もよくわかってないのか?」
「だからさっきからそう言ってるじゃない」
「まあ、おかげで稼げたんだから良しとしようか」
 結局よくわからないという結論のまま話は終わった。

 この後もリリカは、貴重な素材を見つけたり、討伐モンスターを見つけたり、まさしく神がかったような活躍をすることになるのだが、それはまた後日の話である。
というわけで、リリカの後日談です。
加護の力かと言うとまだ微妙な所ですが、確実に塔のメンバーよりも実践的に力を使っていますw
しかも無意識に。
リリカ、すげー。
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