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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第22章 塔と祭り

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(9)ミスコン

 ディオンを追い払った後は、そのままドリア一家の屋敷に戻った。
 あの場所におびき寄せたのは、こそこそと付けてきているのを察知していたからだが、元々引き上げるつもりだったのもあるのだ。
 ついでに、アレクに頼んでデフレイヤ一族の者を呼んでもらった。
 勿論ディオンの動向を監視させるためだ。
 初めてこういった指示を考助から出したが、デフレイヤ一族の者はすんなりと引き受けてくれた。
 特にこちらから手を出すつもりはないが、考助の言ったことを理解できていなければ、本当に塔から追放といった事態になるだろう。
 屋敷でドリア夫妻と少しばかり話をしてからその日は塔へと戻ったのであった。

 その次の日。
 この日は朝から昨日とは別のメンバーと祭りを楽しんだ。
 シルヴィアとピーチは、イベントに参加するため抜けている。
 フローリアは、昨日の事もあってか管理層でお留守番だ。
 考助は特に気にしなくてもいいと言ったのだが、フローリア自身が落ち着いて祭りを楽しめないからと辞退したのだ。
 既に家族と一緒に祭りを楽しんでいたので、それで十分だと考えていたのもある。
 そんなわけで、昨日とメンバーを代えて、午前中はシュレイン・コレット・ワンリ・ハクと一緒に露店を一巡りした。
 今日の護衛はコウヒだ。
 ミツキは所要で別の場所に行っている。
 ちなみに、ナナは連れてきていない。
 昨日人ごみの中を歩いたので、疲れてしまったらしい。
 フローリアと一緒に管理層で留守番をしている。
 考助は、一人でいるフローリアを気遣ったのではないかと疑っているが、真実は分からない。

 昨日と違って特に事件があるわけでもなく、普通に祭りを見て回った。
 時間が午前中だけになったのは、午後から始まるイベントを見るためだ。
 そのイベントにシルヴィアとピーチが出ているので、全員でその様子を見るために、イベント会場でそこそこいい場所を陣取った。

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 二人が何のイベントに出るのかと言うと、なんとミスコンテスト・・・・・・のような物だった。
 流石に考助が転生前にいた所のように、水着審査があるわけではなく、単に美しさを競うようなものだった。
 勿論顔の容姿もあるのだが、どちらかと言えば、着ている物も注目されているようで、ファッションショーも兼ねているようだった。
 実際、服飾を売りにしている商人たちが、ここぞとばかりに張り切っているのが見えた。
 何でこんなものに二人が出ているのかと言うと、それは勿論、シュミットに乗せられたのだ。
 シュミットが口説き落とす時に、出て優勝するとコウスケ様が喜びますよ、とか聞き捨てならないことを言っていた。
 そんな物に出なくても、十分だとフォローしたのだが、時すでに遅し。
 考助が止めようとしたときには、既に二人は出ることを決意していたのだ。
 そうなってしまえば、考助にも止めることは出来ないので、結局二人そろって出場することになった。

 二人は一緒に出てくるというわけではなく、別々に出て来たのだが、贔屓目に見なくても他の出場者よりも出て来た時のざわめきは大きかった。
 最初に出て来たのはピーチだったのだが、着ていたのは豪奢なドレスだった。
 これでもかとばかりに飾り立てられていたのだが、品が悪く見えていないのが不思議だった。
「ふわー。ピーチお姉さん、きれいだね」
 考助の隣で見ていたハクが、そんなことを言った。
「そうだね。でも普通だったら、あれだけ飾り立てられたら、品が悪く見えそうなもんだけど?」
 首を傾げている考助に、コレットが笑って言った。
「それは簡単よ。しっかりとピーチが着こなしているだけよ」
「着こなしてるって・・・・・・普段あんなのピーチは着ていないだろう?」
「ピーチさんは、お顔がきれいですから大抵の物は着こなせますよ。それに、ああいうドレスを着ることも想定して訓練していたようですね」
 デフレイヤ一族の訓練にそんな物があるのかと、考助は感心したように頷いた。
「そういった潜入捜査をすることを想定しているんでしょうね」
 観客にはそんなことは分かるはずもなく、純粋にピーチの美しさを楽しんでいるようだった。
 コレットもその様子を苦笑しつつ見ていた。

 続いて出て来たのは、シルヴィアだった。
 シルヴィアが着ているのは、巫女服だった。
 勿論彼女が普段から着ているような簡素な物ではない。
 どう見ても儀礼用に飾られた巫女服だった。
 シルヴィアが出て来た時は、ざわめきと言うよりもため息の方が多かった感じだった。
「何というか・・・・・・これもまた違った意味で品があるな」
 ピーチとはまた違った意味で品があるように感じた。
 残念ながら考助には、それが何の違いか見分けられるほど経験値が無い。
「まあ、シルヴィアはあれが本職だしね」
「本職って・・・・・・。ああ、あれは本当に儀式用とかそういった物なんだ」
「それはそうよ。何だと思ってたの?」
 若干呆れたように、コレットから見られてしまった。
「う・・・・・・。いや、単にこういったショーの為の物かと思った」
「ああ、そういう事。まあ、そう言う面もあるけど、神殿の儀式とかだともっと派手なのもあるわよ?」
「あれより派手って・・・・・・」
 考助から見れば、シルヴィアが今着ているのも十分派手に見える。
 想像してみたが、自分が同じように飾っている神官服を着れば、間違いなく浮いて見えるだろう。
「金ぴかでいっぱいなの?」
 ハクが、コレットに首を傾げつつ聞いた。
「そんなのもあったわよ。どう考えても貴方には似合わないわね」
「・・・・・・自覚はしているから、突っ込まないで」
 笑いを堪えて言うコレットに、考助も項垂れるしかなかった。
「あら、そうじゃなくて。別にわざわざ飾りで覆わなくても、貴方だったらきちんと威厳を出せるってことよ?」
「威厳? 僕が?」
 そんなものを持った覚えがない考助が、首を傾げている。
「そうよ。今は抑えている物を半分だけでも出して御覧なさい。神職に対しては、一発だから」
 何のことかと言えば、神威の事だ。
 もし考助が、この場で全力で神威を解放しようものなら、神職にある者は間違いなく跪いてしまうだろう。
 そんな状況は勘弁してほしいので、考助も試してみる気にはならない。
「うーん。そうなのか」
 相変わらず自分の事には、鈍い考助であった。

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 そんな鈍い考助の事はお構いなしに、当然ながらイベントはどんどん進んで行った。
 結果として、シルヴィアとピーチでワンツーを飾ったのは言うまでもない。
 どちらがどちらだったかは敢えて伏せて置く。
 残念ながら着ていた服に関しては、どちらも優勝は逃してしまい、シュミットが悔しい思いをしたのは別の話だ。
 一同は、イベントを終えた二人を迎えて、再び祭りに繰り出した。
 当然ながらシルヴィアとピーチの二人は、普段着に着替えている。
 仮面もしているので、優勝者と準優勝者とは気づかれないだろう。
 そんな一行が祭りの最後に向かったのは、武闘大会が開かれている闘技場だった。
 そこでは祭りの最後を締めくくるように、決勝戦が行われるのだ。
 その決勝戦を見るために、一行は闘技場へと足を向けるのであった。
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