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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第22章 塔と祭り

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(6)加護の授与

 一応リリカは落ち着いているように見えるが、念のため考助はシルヴィアを見た。
 その意味をしっかりと理解した、シルヴィアも頷きだけを返した。
 要は、もう大丈夫かと確認を取ったのだ。
 確認を取ったことには、きちんと意味がある。
 むしろこれからが本題という事になるのだ。

「落ち着いたかな?」
 シルヴィアには確認が出来ているが、一応リリカ本人にも確認を取ることは忘れない。
 他人では分からない違和感などがあるかも知れないからだ。
「あ、はい。だ、大丈夫です」
 未だ考助に話しかけられることに慣れていないリリカに、考助は内心で苦笑をした。
 そんなに緊張しなくてもいいのになあ、と思うが勿論口には出さない。
 そんなことを言っても、無意味だという事は分かっている。
 むしろ悪化しかねない。
「それで、ここからが本題なんだけど・・・・・・」
「・・・・・・ハイ!!!?」
 考助の前置きに頷こうとしたリリカは、一瞬間をあけてから引き攣ったような声を上げた。
 先程の事でも十分驚きの出来事だったのだが、それが前置きとはどういう冗談だ、と思ったのだ。
 しかし、すぐに相手が誰かを思い出して、慌てて頭を下げた。
「あ・・・・・・・・・・・・す、すいません!!」
「あー、それ、もういいから。そんなことで頭を下げられても、話が進まないから」
「で、ですが・・・!」
 流石に見かねたシルヴィアが、間に入ることにした。
 これ以上、考助が何かを言っても逆効果にしかならないだろうと思っての事だ。
「リリカさん、コウスケ様が良いと言っているのですからいいのです。それよりも話を聞く方が先ですわ」
「は、はい!」
 リリカが、今度はシャキッと背筋を伸ばした。
 もうこの時点で、考助もリリカの性格を何となくだが、把握出来てきた。
 大丈夫かな、と思いつつようやく本題の話をすることにした。

「突然なんだけど、僕の加護、受け取ってもらえないかな?」
 そう切り出した考助だったが、次の反応があるまでに、かなりの間があった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハイ?」
「いやだから。僕の加護をあげたいんだけど、受け取ってもらえない?」
 もう一度言い直した考助だったが、今度はリリカからの返答は無かった。
 正確には、何とか答えを返そうとしているのだが、パクパクと口が動くだけで声になっていなかった。
「コウスケ様、流石にそれは唐突過ぎだと思いますよ?」
 アレクが苦笑をしながら助言をした。
 この場には、第三者であるリリカがいるので、完全に余所向けの対応になっている。
「え? 何が?」
 考助は意味が分からずに、首を傾げた。
 加護を与えることなど、考助にしてみれば今更と言う感覚なのだ。
 何しろ塔のメンバー全員に与えた上に、眷属たちには数えきれないくらいバシバシ与えている。
 今更一人くらい増えたところで、大したことは無い、と言う感覚だったのだ。
 だが、残念ながらそれは、世間一般の考え方とは大幅にずれていたのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 アレクは、頭を手で押さえつつ、シルヴィアを見た。
「これは、貴方のせいだと思うんですがね」
 そう言って、シルヴィアの教育不足を指摘した。
「あら。私ひとりのせいにされても困りますわ。それに、コウスケ様にとっては、加護を与えることなど、大したことではないのも本当の事ですから」
「そうは言っても、周囲への影響ぐらいは教えておかないといけないだろう?」
「まあまあ、ここで二人で言い合っても仕方ないだろう?」
 言い合う二人に、フローリアが割って入った。
「取りあえず、コウスケ、様。加護を得ることがどういう事かは、私の事を思い出せばいいだろ・・・・・・でしょう?」
 普段の言葉遣いがどうしても出てしまって、怪しい話し方になっていたフローリアだったが、考助も彼女が言いたいことはわかった。
 同時に、リリカとアレクの反応も理解できた。
 通常は、下手に加護など貰ってしまえば、政争の道具にされるか、良くて教会でちやほやされつつ、囲われてしまう事になる。
 少なくとも、今のような冒険者活動など不可能になってしまうだろう。
「むー、むむ・・・。そうか。・・・・・・あ、そうだ。いいこと思いついた」
「いいこと?」
 なんとなく嫌な予感しかしなかったが、一応フローリアが聞き返した。
「リリカさんが加護をもらったことなんて、どうせ誰にもばれないんだし黙っておけばいい」
 名案だと頷いている考助に、全員の頭が真っ白になった。

「いえ。コウスケ様、流石にそれは・・・・・・不可能かと」
 ミツキを除いて、一番最初に立ち直ったシルヴィアがそう言った。
「何故?」
「何故って、それは・・・・・・加護を持っていることを隠すことはほぼ不可能ですわ」
「そうなの? 加護持ちって、どうやって調べるの?」
「それは、教会が・・・・・・あれ?」
 首を傾げたシルヴィアに、考助がやっぱりと頷いた。
「多分だけど、神様達から神託を得て分かるとかじゃないの? だったら、口止めしておけばいいだけだし」
「「あ!」」
 聞いていたピーチとフローリアも、声を揃えて納得した。
「そう言えば、そうでしたわね。特に問題ありませんね」
 シルヴィアも改めて頷いている。
「もしばれる可能性があるとすれば、クラウンカードに出てくることだと思うけど、これは非表示にすればいいだけだし」
「確かに言う通りだな」
 フローリアが、最後に締めるように再度頷いた。

「いや、待て。本当に、大丈夫なのか?」
 アレクが塔のメンバー一同に待ったをかけた。
「ではアレク様。逆に伺いますわ。教会が神託を得る以外にどうやって、神々の加護を得たことを知るんですか?」
「それは・・・・・・高位の神職が知るとかか?」
「あり得ませんわ」
 アレクの意見は、シルヴィアが一蹴した。
「そもそも神の力のことすら欠片もわかっていないのに、神の力そのものである加護のことなど見抜けません。加護があることで神気を感じることはあるかも知れませんが、それは神職にある者であれば、多かれ少なかれあることですわ」
「・・・・・・つまり?」
「リリカさんが、コウスケ様の加護を得るのに、何の障害もないという事ですわ」
 それこそ専門家であるシルヴィアの意見で、アレクも沈黙をするしかなくなった。

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 今までの会話を呆然とした表情で聞いていたリリカだったが、完全に外堀が埋められていくのを感じて内心で慌てていた。
 このままだと加護を与えられてしまいそうである。
 止めが、次の考助の言葉だった。
「僕の加護は嫌かな? 嫌なら止めるけど」
 申し訳なさそうに言う考助を見て、リリカは完全に観念した。
 神本人に、目の前でそんな顔をされてしまったら断ることなどできるわけがない。
 何とも神らしくない神だなあ、と開き直った事で、幾分気が楽になったというのもある。

「あの・・・・・・」
「何?」
「嫌ではないんですが、加護をもらって私は何をすればいいんでしょうか?」
 リリカの質問に、考助はシルヴィアの方を見た。
「え? 加護を貰った人って何かしないといけないの?」
「普通はその神のために動くとか、あるいは神託を授けるとかですわ。コウスケ様の場合、そのどちらも必要ありませんが」
 常にこの世界に存在している考助は、この世界で動ける手足などは特に必要としてない。少なくとも今のところは。
「そうだな。強いて言えば、加護を受け取ってもらえるかどうかを確認すること自体が、やってもらいたいことかな?」
 現状、考助の加護を得ている者達は、眷属を除けば、考助に近しい者達だけだ。
 それ以外の者にきちんと加護を得られるのかを知りたい。
 勿論、誰でもいいわけではなく、加護を与えられる者には条件があるのだが。
 幸いにもリリカにはその条件が備わっていることが分かったので、この話を持ち掛けたのだ。
 考助がリリカの事を気にしていたのは、加護を与える条件を持っていることが分かっていたからなのだ。
 結局、リリカはそれらの話を聞いて、加護を受け入れることを決めるのであった。
渋っていた割にはあっさりと受け入れることを決めたリリカでした。
良くも悪くもこれが彼女の性格です。
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