挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第21章 塔と加護と進化と

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

265/1254

閑話 ゴーレムか人形かそれとも別の何かか

 クラウン商人部門長のシュミットは、定期的に管理層へ訪ねるようにしている。
 公的な用事というのももちろんあるのだが、それは大抵定例会議の時に済ませている。
 管理層に定期的に尋ねるようにしているのは、考助の新しい魔道具の開発に期待しているためだ。
 勿論、毎回毎回新しいものがあるわけではない。
 むしろ空振りで終わる時の方が多い。
 部門長として忙しい今のシュミットにとって、時間はそれなりに貴重だが、それでもこうして訪ねてくることには意味があると考えている。
 たまにしか新しい魔道具は出てこないとはいえ、そのたまに出てくる魔道具が、クラウンにとって非常に有益な物が多いからだ。
 残念ながら考助が作る魔道具は高度すぎ、クラウンで雇っている魔道具職人には、再現が出来ない物も多い。
 再現できないどころか解析すら出来ないという物もあるのだから、どれほど高度な物かわかるだろう。
 そう言った表向きの理由もあるのだが、行商人だったころに行っていた取引を懐かしんでいるという事もある。
 部門長となったシュミットは、大きな商売の取引をすることはあっても個人レベルの取引をすることは無くなっていた。
 立場上当然と言えば当然なのだが、それが時折寂しくもある。
 だが、考助との取引はあくまでも一対一の話し合いなので、ある意味で行商人の個人取引と言える。
 まあ塔の支配者と、その塔に存在する組織の重役の話し合いが、個人取引と言えるのかは、微妙な所なのだが。

 いつものように管理層へ訪ねて来たある日のこと。
 見慣れない者が、シュミットを出迎えた。
 いつもなら女性メンバーの誰かが気づいて対応してくれているのだが、その日は違っていた。
 見覚えのない女性が、対応をしていた。
 余談だが、考助の周囲にいる女性は、コウヒとミツキを筆頭に見目麗しい女性が揃っている。
 その女性陣にも劣らない見目をしているその女性は、完璧なメイド姿をしていた。
 基本的に管理層への日用品などは、クラウンを通して卸している。
 そのためシュミットは、管理層へ卸している全ての商品を把握していた。
 だが、そのメイドが着ている服を卸した記憶はなかった。
 その服だけでなく、そのメイド自体も覚えがないのだが、新しい人間を管理層へと入れたという話は聞いたことが無かった。
 内心で首を傾げつつもシュミットは、勧められた椅子へと座った。

「何かお飲物でも入れましょうか?」
「ええ。お茶を入れてくれるとありがたいです」
 ここで遠慮をしても逆に失礼になるので、そう答えた。
 シュミットの答えを聞いたそのメイドは、完璧な動作で対応を行っていた。
 一度会議室を出て行ったそのメイドは、お茶を持って戻ってきた。
「お待たせしました」
「ああ、有難う。ところで、君はいつこっちに来たんだい? 記憶になくて、すまないね」
「いえ。つい先日、出来たばかりですから。お会いするのは、初めてです」
「・・・・・・出来た?」
 何とも不思議な表現をすると首を傾げたシュミットだったが、その呟きを聞きとがめたメイドの答えを聞いて、飲みかけていたお茶を吹き出しかけた。
「はい。私は、先日完成したメイドゴーレム一号です」
「!!!!!!!!!?」
 吹き出しかけたお茶だったが、何とか堪えることは出来た。
 耐えることが出来たシュミットだったが、咳き込むことまでは止められなかった。
「な、なんだってー・・・・・・!?」
 会議室にシュミットの声が響いたのは、その後すぐの事だった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「・・・・・・で、どういう事ですかな?」
 シュミットにギロリと睨まれた考助は、苦笑混じりで答えた。
「どうもこうも、つい二日前程に、コウヒとミツキが合作で新しいゴーレムを完成させたんだよ。それが、彼女」
 考助に手で指し示られたメイドゴーレム一号は、ぺこりと頭を下げた。
 こういう時は余計なことは言わないように、創作されている。
「彼女がゴーレムですと?」
「そうみたいだよ? 何せ完成するまで一切、僕にも見せてもらえなかったからね。まさかここまで完成度が高いとは思わなかったよ」
 言われなければ、普通の人類種だと思っていただろう。
 ヒューマンとするには多少の違和感があるが、そういった種族だと言われれば、普通に存在してそうな出来だったのだ。
 ちなみに、腕を触れさせてもらったが、感触は全く一緒だった。
 最初は、ワーヒド達の時のように召喚をしたのかと思ったほどだ。
 お披露目の時のメンバーたちの様子から、何となくシュミットがこういう反応を見せることは考助も予想は出来ていた。
「・・・・・・完成度が高い、の一言で済ませていい出来ではないと思いますが?」
「あ、やっぱり?」
 見た目も動作も初見でゴーレムだと見抜けるものはいないだろう。
 それほどの出来なのだ。
 しかもメイドと言う実用的な作業も行っている。
 もし競売にでも出されたら、例え好事家でなくとも、どれくらいの高値を付けるか予想も出来ない。
「勿論、売りに出すことは・・・・・・?」
「無理」
 考助の一言に、内心でため息を吐いた。
 予想通りとはいえ、勿体ないという気持ちも抑えられなかったのだ。
 だが、その気持ちも次の考助の言葉で萎えた。
「今のところコウヒもミツキも、ここで使う物以外は作る気が無いようだしね。それに、これほどの物を、数体だけ売りに出してもいいの?」
「・・・・・・・・・・・・え?」
「あれだけの動きをするゴーレムを数体だけ世に出したら・・・・・・想像するだけで怖いんだけど?」
 金額が天上なしで吊り上がるだけならまだいい。
 下手をすれば、武力的な争いにまで発展することも・・・・・・無いとは言えないのだ。

「・・・・・・量産することは?」
「開発部門の進捗はどうなってるの?」
「・・・はっきり言って、芳しくないですな」
 イスナーニが部門長になっているクラウンの開発部門では、ゴーレムも研究開発の対象になっている。
 むしろ、メインがゴーレム開発と言っていい部門になっていた。
 だが、イスナーニはともかくとして、その部下たちはまだまだ使い物になっていなかった。
 その開発部門が参考にしているのは、彼女よりはるかに劣っているゴーレム一号なのだ。
「一号の技術ですらその状況だからね。彼女の技術に追いつくには、とてもとても。それに・・・・・・はい、これ」
 考助は、シュミットに向かって一枚の紙を差し出した。
「これは?」
「必ず聞かれると思ったからね。彼女に使われている材料を一覧にしておいた」
 この考助の言葉を聞きながらその用紙を見ていたシュミットだったが、最初の一行目から顔が蒼くなり、最後の行に差し掛かる頃には白くなりかけていた。
「どれだけ金額が上がっても欲しがる人はいそうだけど、実際に払えるかどうかは、微妙? 世界中を探せばもしかしたらいるかもしれないけど」
「・・・・・・もしいたとしても、払った瞬間に即破産でしょうね」
 ようやく立ち直ったシュミットが、何とかそう答えた。
 一つの材料だけで、ごく一般的な商会であればつぶれてしまいそうな物が使われている。
 中には、シュミットでさえも名前しか聞いたことが無いような物まで含まれていた。
 材料一つだけでも国を相手にするような物が、大量に使われているのだ。
 そんな材料をふんだんに使えているのは、勿論塔に出現しているモンスターから素材を得ているためだ。
 討伐自体は、コウヒかミツキが自分自身で行った結果なので、問題なく手に入れることが出来ている。

「と、言うわけで、材料の関係から量産はほぼ不可能。コウヒもミツキも他に売る気はないって言ってたし。売ったとしても騒ぎになるだけで、良いことないし」
 完全に状況を理解できたシュミットも肩を落とした。
「確かに外には出さないほうがいいでしょうね。残念ですが」
「勿体ないって気持ちは分からなくはないけどね。外に出したら面倒事しか来ないだろうから、しょうがないよね」
 考助としても出来ることなら、ゴーレムの価値を高めるためにも、こういったゴーレムも作れるんだと、出来れば表に出したかった。
 だが、厄介ごとしか発生しないような物をわざわざ外に出す気はない。
 仕方ないが、現状は開発部門に期待するしかない。
「そうですな。・・・・・・では、今日こそは新しい物を見せてもらいましょうか」
 完全にメイドゴーレムの事は諦めたシュミットだが、考助の道具まで諦めたわけではなかった。
 こうなることが予想できていた考助も、苦笑しつつシュミットとの対話を行うのであった。
ようやくコウヒとミツキ共同開発のメイドゴーレムがお披露目になりました。
二人は、考助にゴーレムを作っていることは言っていても、どういった物になるかは言っていませんでした。完全に二人は秘匿して作成していました。
完成時にお披露目されたときのメンバーの反応は・・・・・・今回のシュミットの反応で分かっていただけるかとw
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ