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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第21章 塔と加護と進化と

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(3)加護について

 メンバーたちの加護の力に関しては、それぞれに任せることにした。
 種族特性が絡むとなると、考助自身が余計な口出しをするより、各個人に任せた方がいいと判断したためだ。
 ただ、種族特性によって見える物が違っているという結論に関しては、考助自身は肯定も否定もしていない。
 間違っているとは思わないが、それが全てだとは思えないのだ。
「どういうことかの?」
「うん。いや、確かに種族特性に応じた力が発現してるとは思うけど、それって単に使い慣れてるからだと思うんだよね」
 慣れ親しんでいる力だからこそ、加護を与えられたときに一番馴染んでいる力として発現しているということだ。
 どちらかと言うと、種族特性の力が発現しているというより、慣れ親しんだ力が加護の力と混ざっていると考えている。
「使い慣れた力を<見る>という事に特化して発現しているという事か?」
「そうそう。そんな感じ。といっても結局種族特性が、使い慣れた力であることは、大体当てはまるんだろうけど」
 中には種族特性とは外れた力を得意としている者がいてもおかしくない。
 ヒューマンを除くメンバーで種族特性から外れている者はいないので、検証することは出来ないのだが。
「という事は、私達も得意分野であれば、発現する可能性があるという事ですわね」
「なるほどな」
 シルヴィアとフローリアも、若干安心したように頷いている。
「要は使い慣れた力で試してみると分かるという事か。それなら・・・む? 私は何が当てはまる?」
 考え込むフローリアに、考助は苦笑しつつ言った。
「まあ、そもそも今言ったこともあくまで予想でしかないから、正解かどうかは分からないよ?」
 神の力について、その神自身が言っているにもかかわらず、何とも情けない話だが、そう釘をさしておく。
 何しろこれが初めての事なので、正解など考助にも分からないのだ。
 あるいは、今後長い間を掛けて見極めていくことになるのだろう。
「ただ、一つだけわかるのは、力を発現させたいときは、加護の事を意識して使う事だね」
 先ほどピーチが加護の力を発現できたのは、明らかに加護の事を意識していたからだ。
 なぜか、それが考助にも分かった(・・・・)
 分かったというより、伝わってきたと言うべきだろう。
 初めての感覚で何ともいえない感じだったのだが、不快な感じはしなかった。
 これがピーチだったから感じたのか、あるいは加護を持っている者全てから感じるのかは分からない。
 勿論その感覚は、考助の行動を阻害するものではない。
 加護を持っている者が、力を使った際に一々惑わされるのであれば、考助よりもはるかに多く加護を与えている女神達がどうなっているんだという事になりかねない。

「・・・そう言えば、他の女神達って、どれくらい加護を与えているんだろう?」
 ふとした考助の疑問に答えたのは、やはりというかシルヴィアだった。
「教会が把握しているのは、三大神様で一柱に付き4~5人程度でしょうか? 勿論、教会が把握していない者もいるでしょうが」
「そもそも教会が把握しているのは、ヒューマノイド種に限ってではないかの? 流石に召喚獣にまで与えていることは、把握しておらんのではないか?」
「それは勿論そうですわ」
 神が与える加護はヒューマンだけに与えられる物だ、などという事は主張はしていないが、流石にモンスターにまで与えていることは想像の埒外だ。
 シルヴィアとて、考助の召喚獣たちに加護が与えられているのを見て、初めて知った口だった。
 もっとも、召喚獣の加護に関しては、全員がここで初めて知ることになるのだが。
「それを考えると、正確な数は女神本神に聞かないと分からないという事か」
「そもそも女神自身も把握してないという事はないかの?」
 女神の実態を知ってしまった考助としては、あり得そうだと思ってしまうのはどうなんだろう、と思ったが一応空気を読んで、発言するのは控えておいた。
「まあ、その辺はちゃんと本人に聞いてみるよ」
「それがいいですわ」
 巫女としてシュレインの意見に肯定も否定もできなかったシルヴィアが、考助のフォローに乗っかってきた。
 明らかにシルヴィアの女神に対する評価が、当初と比べて下がってきているような気がするが、大丈夫なんだろうか、と思う考助であった。

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『特に問題ないですよ?』
 シルヴィアの件をエリスに聞いてみると、あっさりとそう返事が返ってきた。
『そうなの?』
『ええ。そもそも信仰と言うのは、頭を下げて傅くだけが信仰ではないですよ。宗教と言う形になっているからこそ、そういったことも必要かもしれませんが』
『ああ、なるほど』
『だからと言って、暴言を吐くような者に対して庇護を与える気もありませんが。シルヴィアはそんなことはしないでしょう?』
 それどころか、シルヴィア自身は真摯に女神という存在を信仰している。
 その形が以前とは変わってきているだけだ。
『信仰の形と言うのは、人それぞれです。勿論、同じように形式ばった信仰と言うもそれはそれでありです』
 ありだからこそ、女神達は昔から、教会と言う在り方を否定していないのだ。
『例えば、格式ばった形式は嫌だと言うのは、確かにありかもしれませんが、それはそれで統一してしまえば、一種の強要になります。
 人によっては、礼儀作法にのっとったほうがいいという者もいるでしょう?』
 一つの型にはめてしまえば、それはそれで結局強要しているのと同じことになるのだ。
『確かに、そうかもね』
『教会のように大きな組織になってしまえば、どうしたって礼儀作法のような物は必要になります。そうでなければ、争いが起きます』
『・・・・・・』
 断言するようなエリスの言葉に、考助は既に実践済みなんだと理解した。
 現状考助は、極端に言えば傅かれるような態度は嫌っている。
 教会に聖職者たちを置いていないのもそのためだ。
 だが、それではいけない時が来るのかもしれない。
 今何事も起きていないのは、あくまで一地方であるアマミヤの塔の周辺だけの信仰だからなのだろう。
『勘違いしてはいけませんが、貴方のやり方を否定するものではありませんよ?』
 ここまで話しておいて、エリスがそう言って来た。
『・・・そうなの?』
『私達には私達のやり方があるように、貴方には貴方のやり方があります。そもそも存在のあり方自体が違うのですから、やり方も違っていていいでしょう?』
 実際の世界に存在している神と、普段は神域にいて神託や加護と言った形で関わる神。
 エリスは、その信仰の仕方も違ってきていて当然だろうという事を言いたいのだった。

『さて、説教臭いことを言ってしまいましたが、交神してきた本来の目的は違うのですよね?』
『ああ、そうだった。エリス達って、加護を与えた者全てを覚えているの?』
 そもそもこのことが聞きたくて、交神したのだ。
『勿論です、と言いたいですが、残念ながら覚えていませんね』
『そうなの?』
『ええ。そもそも私達にとって加護やそれに類するものというは、其方の世界との繋がり(・・・)です。繋がりが切れてしまえば、当然忘れてしまう事もあります』
 エリスが言う繋がりと言うのは、ピーチの時に感じたあの感覚の事だと理解できた。
 同時に、繋がりが切れるという事は、相手が信仰を失う事なんだと気づいた。
『流石に私達のような者であれば、そうそうないことなんですが・・・それでも全くないというわけではないですから』
 寂しそうな声色のエリスに、考助もため息を吐いた。
 いつかは、必ず自分もそういう事を経験することになるのだろう。
『なるほど、ね』
『そういう事です。これで聞きたいことはお終いですか?』
『ああ、有難う』
『どういたしまして。それよりも、定期訪問以外にも出来るだけこちらに来るようにしてください』
『ん?』
『定期的に来るようになったせいか、あの方がもっと来ればいいのにと、愚痴を言うようになりました』
『アハハハハ。考えておくよ』
『そうしてください。それでは』
『ああ。またね』
 そう考助が返事をした後で、交神はプツリと切れた。
 本来の目的とは違った神様側の事情を聞けたので、新米神として自覚し始めた考助としては、非常に参考になる話だったと思うのであった。
本来ここに召喚獣への考助の加護を入れるつもりでしたが、予定外の話を入れたために先延ばしになりました。
召喚獣の加護の話は次話になります。
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