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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第20章 塔の機能を使ってみよう

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(8)アマミヤの塔での反応

 アマミヤの塔の第五層にある行政府の会議室では、アレクをはじめとした高官たちが集まっていた。
 今回の騒ぎに対する対策を決めるためだ。
 勿論、塔の外の勢力に対する対策もあったが、今メインで話されているのは、街の住人達に対する対策だった。
「それで? 今回の件の噂はどうなっている?」
 アレクの問いかけに、一人が答えた。
「各国の諜報員が頑張っているようです。アマミヤの塔(・・・・・・)がやらかした事として完全に広まっています」
 諜報員と言っても行商人が噂レベルで話をしているだけなので、止められるわけではない。
 また止める意味もないとアレクは考えていた。
「塔の階層にも使える可能性があることは?」
 アレクが懸念しているのは、この部分である。
 外敵から町を守るためには、頼もしい力となる攻撃兵器も、それが自分たちの頭上に向けられると考える者は必ず出てくる。
 例えそんなことがなくても、それこそ諜報員がそう考えるように仕向けることもできる。
「話としては広まっているようですが、実際に向けられると考えている者は少ないようですね」
 アレクはそれを聞いて内心でホッとした。
 塔の支配者が非道な存在だと思われていれば、まず自分たちに向けられることを考えるのだが、そうではないということは、今までの戦略が上手くいっていることになる。
 まあ実際考助は、そんなことをする人物ではないことは、ここにいる者達は一度は顔を合わせて知っている。
 ただ、町に住んでいる住人達はそうはいかない。
 ただでさえ考助は表に出てくることがない。
 現人神とされているので、それはそれでありなのだが、だからと言って実際にこの塔の実権を握っているのは間違いないのだ。
 ある意味で町の運命を握っている人物が、暴君であると思われると、今後の統治に影響が出てくる。
 わざと恐怖政治を行うという選択肢は初めからないのだ。

「正確に言えば、そんなこともあるのか、と流されている感じでしょうか」
 行商人を装った諜報員が、今回使われた兵器を塔の内部に向けられる可能性があると囁いたとしても、町の住人はまともに受け取っていないというのが実情だった。
 そもそもそんなことをする必要がないと思われているのだ。
「・・・どういうことだ?」
「そもそも自分たちを殺すつもりなら、大量のモンスターを使うなどいくらでもやりようがあると考えているようで・・・」
 何のことは無い。
 考助が大量の召喚獣を抱えていることは知られていないが、塔内の転移門の行き先が明らかに調整されていることは、理解されているのだ。
 例え攻撃兵器のことが無くても、塔の支配者はこの街を潰そうと思えばいつでも出来るとわかっている。
 だが、そんなことは町が出来てから短い間とは言え一度も行われていない。
 それどころか、クラウンや行政府と言った組織は作ったが、ほとんど表に出てくることはない。
 多くの街が、領主や貴族と言った存在によって振り回されていることを知っている住人にとっては、ある意味でこの町は住みやすい町なのだ。
「なんというか・・・心配し過ぎだったと言うわけか。まあ気を緩めれば、いつ別の方向に向かうかは分からないから、気を緩めないように」
 アレクは高官たちにそう言って、会議を締めることにしたのであった。

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 次にアレクはクラウンを訪問した。
 アレクの前には、シュミットをはじめとした三人の部門長がいる。
「そちらはどうだ?」
「どうもこうもありません。そんなこともあるんだ、とあっさり受け入れられています」
 何とも逞しいものですとシュミットが言った。
「まあ、そもそもこんなところに来て生活しようってやつらだ。元々それなりの度胸や覚悟があるということだ」
「冒険者たちはどうだ?」
「ああ、そっちは最初から問題にしていない。そもそも自分たちを殺すには、剣一本あれば事足りると理解している奴らだからな」
 常に死と隣り合わせの活動をしていて、わざわざ自分たちを始末するのに、大掛かりな仕掛けなど必要がないと分かっているのが冒険者だ。
 流石に、塔の支配者が自在にモンスターを召喚できることまでは知られていない。
 だが、そもそも転移門を閉じるだけで自分たちを締めあげることが出来るというのは、既に常識になっている。
 今までそんなことをされたことがない上に、わざわざセーフティエリアなんてものを設置する者が、そんなことをするわけがないと思われているのだ。
「なんというか、コウスケ殿はそこまで考えて行動しているようには見えないが、そのことごとくがいい方向に考えられているようだな」
「まあ、現人神であることが発表されたのが、一番大きいでしょうね」
 シュミットがため息を吐きつつそう答えた。
「・・・ああ、なるほど」
 ここにいるメンバーは、考助とはそれなりに長い付き合いになる。
 現人神になる前から知っているのだから、ついついそのことを忘れてしまう。
 だが、住人や冒険者にとってはそうではない。
 最初は塔の支配者は、未知の人間だったのが、今では現人神に支配されているという事になる。
 大袈裟に言えば、現人神の加護を間接的に得ていると考えているのだ。
「何と言うか・・・これからも、何度もこうして振り回されることになるのだろうな・・・」
 思わず呟いてしまったアレクに、他の面々は苦笑するしかなかったのであった。

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「さて、これで他の国も引いてくれるといいんだけどな」
「いや、それはない」
 考助の呟きに速攻で否定したのは、フローリアだった。
「あ、やっぱり?」
「今回はこちらの攻撃を見せただけで引いてくれたからな。そもそも神が出てきた時点で引くつもりだったのではないか?」
「どういうこと?」
 コレットが分からずに首を傾げている。
「アマミヤの塔を支配しているコウスケが、現人神であることは知られておるからの。軍が動いたときに出てくるかどうかを知りたかった、と言ったところか」
「コウヒさんの件もあるのに、ずいぶんと危ない真似をするんですね~」
「いや、今回の件は、向こうもかなりの勝算があったのではないか?」
 フローリアがそう言って、シルヴィアの方を見た。
「そうですね。そもそも神が直接手を下すことなど、ほとんどありえないですからね。ついでに言えば、代弁者にしても神々にしても直接手を下しているのは、神に関わることだけです」
 以前のコウヒの事件は、あくまで考助のことを直接・・揶揄するような内容だったためだ。
 これが、クラウンだったり塔の事を揶揄するような内容であれば、コウヒが表に出ることはなかった。
「でも、一応アマミヤの塔として抗議はしたけど?」
「それも直接現人神として抗議をしていれば、結果は変わったかもしれないな」
「ははぁ、なるほど~。あくまでアマミヤの塔として抗議したから、神が直接出てくることは無いと判断した?」
「王国の誰かが最終的には決めたんでしょうが、間に聖職者がいたとしても不思議ではないですわ」
 フローリアの言葉に、なるほどと考助が頷いた。
 そもそも考助自身は、直接手を下せるような力を持ってはいない。
 そのことは世間に広まっているわけではない。というより、ここにいるメンバーくらいしか知らないはずなのだ。
 それでも進軍を続けたという事は、それなりの理由があると思っていたのだが、そういう事らしい。
 今ここで話されているのは、あくまで推測でしかないのだが、その実かなり真実を言い当てていた。
 神が直接出ることはない、と判断した所までは見事に当てたのだが、残念ながら今回は塔の機能を使うという予定外の方法で防がれたというのが誤算だったという事だ。
「まあ、確かに万が一神としての力を持ったとしても、わざわざそれを使おうとは思わないな」
 だったらあの攻撃兵器はなんだという突込みが、メンバーたちではない各所から飛んできそうだったが、考助にしてみればあくまでもあれは塔の機能の一部だ。
 他の塔にそう言った機能があるかどうかは分からないが、別に出来たとしてもおかしくないと考えている。
 わざわざ使える範囲を、大陸内に限っているのがその証拠だと考えている。
 実際は同じように攻略をして確認しないと分からないのだが。
 ちなみに、考助以外のメンバーたちも同じように考えているので、彼女たちも考助に染まっているといえる。
 それが良いことなのか悪いことなのかは、今のところはわからないのであった。
今回の件の塔側の反応とコラム王国の行動の理由の一端でした。
もちろん最初の話のように利益を求めての行動でもあります。
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