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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第19章 塔で進化について考えよう

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(4)ヒューマンの進化

 新しい権能に関しては、現状確認のしようがないという事で、取りあえずいつものように時間が解決すると思うことにした。
 前のようにピーチに占ってもらうという手もあったのだが、それはピーチが断固として拒否してきた。
 確かに、進化に関わることなので、気になることは気になるが、現状特に急ぐ必要性もないので、そのうち分かるだろうと考えることにしたのだ。
 そんなわけで、考助は今、新しい権能に関わることではなく、別の問題を解決しようと頑張っていた。
 それが何かというと、現人神としての神威を抑えるための修業である。

 考助の目の前には、シルヴィアが難しい顔をして座っていた。
 別に怒っているわけではない。
 考助の神威がきちんと抑えられているのか感知しているのだ。
 神威を抑える訓練は、別に昨日今日から始めたわけではなく、シルヴィア監督の下以前から行っていた。
 勿論シルヴィアも四六時中一緒にいるわけにはいかないので、こうして時間を見つけては訓練の成果を見ているのだ。
 こうして考助が訓練をしているのには、勿論訳がある。
 といっても理由は一つだけなのだが。
 今のままでは、管理層に引きこもるだけになってしまうのだ。
 別に考助は、塔の管理だけを行って生きていくつもりは全くない。
 今までは、やることが次から次へと出てきて、その対処におわれていたので半引きこもり状態になっていた。
 だが、今後は塔の管理が落ち着いて来れば、世界を回っていろんな場所を見たいと思っていた。
 そもそも塔を攻略したのは、拠点を手に入れるためで、そこに引きこもるためではない。
 そんなわけで、いろんなところを回って見たいという願望はあるわけだが、神威垂れ流し状態だとそんな気軽に旅が出来ないのだ。
 神威を抑えられないと、どこへ行っても神職たちの撃に合うだろう。
 さすがにそれは、考助としても勘弁してほしいので、以前からコツコツと訓練をしていたのだ。

「以前見た時よりだいぶ改善していますが、まだ完全に抑えるところまでは行っていないようですわ」
 考助の視線を感じつつ申し訳なさそうに、シルヴィアがそう言った。
「いや。シルヴィアがそんな顔をする必要はないよ。単に僕の鍛錬不足なんだし。というか、何となく駄目だって言うのは分かってきたから」
 考助の返答に、シルヴィアが目を瞬いた。
「自身の神威を大分感じられるようになりましたか?」
「以前よりもはっきりとね。というか、前に神域に行った時の経験で分かるようになった」
 神域で行った自身の治療の経験が、意外な形で生きて来ていた。
 その前までは、そもそも神力は感じることは出来ても、現人神としての神威と言われてもピンと来ていなかったのだ。
 だが、その神威というのがどういう物か、あの時の経験でわかるようになっていた。
 一度その感覚をつかむと後は、今までよりは苦労せずにその制御が出来るようになっていた。
 というわけで、今の状況でもまだ駄目という事は、何となくわかっていたのだ。
「ちなみに、どれくらいの感じになっているの?」
「言葉にするのは難しいですが・・・雲一つない夜空で、月を探すところから、星の一つを探すくらい、ですわ」
 月は月と言われれば、誰でも見つけることが出来るが、何々の星というのは、専門家じゃないとすぐに言い当てるのは難しい。
 逆に言えば、専門家であれば見つけることは容易なのだ。
 シルヴィアが言いたいことはそういう事だった。
「うーむ。なるほどねぇ・・・」
 考助は唸るように言った。
 そもそも神職たちの目を欺くために訓練しているのに、専門家である神職たちに見分けがつくようだと全く意味がない。
 自由に塔の外に外出できるようになるには、まだまだ修練が必要だと感じる考助であった。
 今すぐに外に出る用事があるわけではないので、特に急いでいるわけではない。
 いずれは完全に神威を消せるようにするつもりなので、まだ十分ではないという事だろう。
「今までよりは、確実に進歩していますわ」
 以前までは、上手くいっているとは言い難かったのだ。
 それから比べれば、今の状況は雲泥の差だった。
「そうか。まあ、取りあえずコツみたいなのは掴んだから、もう少しで何とかなると思う・・・かな?」
「私もそう思います」
 考助の楽観的な意見に、シルヴィアも頷いた。
 実際、それくらい状況が良くなっているのだ。
 今まで先が見えなかった訓練に、ようやく希望が見えて来てホッとする考助であった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「ところで・・・」
 考助が少し言いづらそうにシルヴィアに切り出した。
 その珍しい様子に、シルヴィアが首を傾げた。
「どうしました?」
「いや、その、うん・・・。少し手を貸してもらえないかな? 考えてみたら、人間相手に使ったらどうなるのか試してなかったと思って・・・」
 何のことを言っているのかすぐには思い当たらなかったシルヴィアが、しばらくの間首を傾げていた。
「あ、新しい権能の事ですか?」
「うん。まあ、そうなんだけど・・・」
 考助としては、人体実験のようで何となく気が引けていたのだ。
 だからと言って召喚獣たちだといいのか、という話もあるのだが、そこはそれである。
 何となく考助のそんな考えを読んだのか、シルヴィアはためらうことなく頷いた。
「問題ありませんわ。是非、確認してください」
 そう言ってすぐに右手を差し出した。
 考助はしばらくためらうようにしていたが、その手をシルヴィアは強引にとってしまった。
 シルヴィアにしてみれば、何を今さらという思いなのだが、考助が自分を心配してこういう態度になっているのは分かっているので、嬉しいという気持ちもある。
 だが、こういう時に役に立ってこその巫女という立場だというのも理解しているのだ。
 勿論、考助がそんなことをさせるつもりはない、と言うのが分かりきっているので、そんなことを言うつもりはシルヴィアには無い。
 代わりにこうして行動で示すことにしたのだ。

「それで、どうですか?」
 諦めたように新しい権能を試した考助だったが、結果は良いことと悪いことの半々だった。
 まず良いことというのが、シルヴィアにも<進化の萌芽>が出ていたこと。
 これによりステータス表示と同じように、召喚獣に限らず見ることが出来ることが分かった。
 そして、悪いことというのが、<進化の萌芽>というのもそうだが、その後の説明も全く同じだったのだ。
 すなわち、魂の器の拡大というメッセージも全く一緒だったのである。
 ヒューマンでも確認できることは分かったのは収穫だが、それ以外に関しては、全く進展が無かったという事になる。
「うん、まあ、そんなに甘くはない、という事かな? ・・・シルヴィア?」
 だが、考助の説明を聞いて、シルヴィアはなぜか嬉しそうな表情になっていた。
 考助に名前を呼ばれて、シルヴィアははっとした表情になった。
「いえ、済みません。ですが、私も進化出来るという事でしょうか?」
「うーん、そこが微妙なんだよね。そもそもヒューマンが進化するなんて今まで見たことないし。それに、黒狼たちだってほんとに進化するかは分かっていないからね」
 その考助の言葉に、シルヴィアは今度は微妙にがっかりした表情になった。
 何やら浮き沈みの激しいシルヴィアに、流石の考助も気が付いた。
「シルヴィア、何かあったの?」
「ああ、いえ。まさか自分が進化できるとは思わなくて・・・それからヒューマンの進化ですが、過去にはあったそうです」
「え!? まじで?」
「はい。ヒューマンがそのまま進化したのか、あるいは強い者の子や子孫がなったのか、詳しくは分かりませんが、かつてはハイヒューマンという種がいたそうです」
 ハイヒューマンの事は、古い文献には結構出てくる。
 何しろ有名どころの英雄譚のいくつかは、そう言ったハイヒューマンが活躍していると言われているのだ。
「なるほど、ハイヒューマンねえ。他の種族はどうなんだろう?」
「流石に他の種族までは・・・ただ、有名どころではハイエルフはいますが」
 ハイエルフに関しては、現在南の塔に実在している。
「ああ、そうか。ハイエルフも進化と言えるのか? あれ、でもあれってハイエルフがエルフに堕ちたという話もなかったっけ?」
「さあ、どうでしょう? その辺までは私も詳しくはないですわ」
 シルヴィアも他種族の事までは、詳しくは知らなかった。
 そもそも管理層には、いろんな種族がいるのだから直接聞いた方が早い。
 早速皆に確認してみようと思う考助であった。
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