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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第18章 塔と新たな力

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閑話 査察官(後編)

 ガザーラの言葉が冒険者たちの間に広まった頃に、ようやくロドゲルが我に返った。
「査察官!? 何ですか、それは?」
「あ~。それに関しては、俺もよくわかってないから、査察官よろしく。・・・おっと、お前は動くな」
 かっこよく決めた台詞も、結局はリサに丸投げになった。
 ちなみに、後ろの言葉はこの隙に逃げようとしたゲリックに向けたものだ。
 ゲリックに関しては、すぐに一緒に行動していた別の仲間が見張ることになった。
 そして、水を向けられたリサはため息を吐いた。
「全くもう。丸投げするくらいなら最初から目立たなければいいのに・・・まあ、どちらにせよ名乗るつもりだったからいいですけど」
 と、ひとしきりガザーラに文句を言った後、その視線をロドゲルに向けた。
「査察官ですか・・・まあ、言葉通りの意味ですよ。クラウン内で不正が行われている場合は、その対象者を処罰する権限を持った者です」
「そ、そんな話は聞いたことがない!」
「当たり前じゃないですか。最初っから不正しまくっていた貴方に、わざわざ教える必要がありますか?」
 無意味な反抗をするロドゲルに、リサはバッサリと切り捨てた。
「だ、だが、私は支部長だ! 査察官だか何だか知らないが、奴隷の小娘に私を罰することができるものか!」
 ロドゲルの言葉に、リサはため息を吐いた。
 確かにロドゲルの言う通り、リサは奴隷身分だ。だが・・・。
「確かに私は奴隷ですが・・・それにしても、貴方は全くリラアマミヤの基本理念を分かっていないんですね」
「な、何のことだ!?」
「折角なので、ここにいる皆さんにも聞いてもらいますが。いくつかある基本理念のうちの一つに、奴隷の扱いがあります。例え奴隷であってもその働き次第では、普通の者と同等の扱いを受けるんですよ?」
 そもそも奴隷は、主人に逆らうことが出来ない。
 逆に言えば、主人をうらぎらない存在という事だ。
 時と場合によっては、その性質は組織としては非常に優秀な存在となり得る。
「ましてやリラアマミヤでは、奴隷の扱いは信じられないくらいにいいものです。これで真面目に働かない奴隷がいれば、連れてきてほしいくらいです」
 だんだんとリサの口調が熱っぽくなってきた。
 それを見たガザーラが苦笑しつつ諌めた。
「おいおい、査察官。話がずれてきてるぜ」

 その言葉にハッとした表情になったリサは、一度コホンと咳払いをした。
「と、とにかく、奴隷であっても査察官である以上、貴方をどうこうする権利を今の私は持っているという事になります。いえ、むしろ奴隷だからこそ、とも言えますか」
「・・・・・・」
「そう言うわけですから、観念してください」
「・・・・・・クックックッ」
 それまで黙って聞いていたロドゲルが、突然笑い出した。
「この中で、こんなことを突然言われて、査察官なんてものを信じる者がいると思っているのか?」
「どういう事でしょう?」
「どうもこうもない。私は査察官という話は聞いたことが無いというのが全てだ。支部長である私が聞いたことが無い。貴方達の話は狂言。そんな話をまともに考える馬鹿はいないということだ!」
 ロドゲルの言葉に、周囲がざわめいた。
 それも当然だ。
 突然現れたリサが、しかも奴隷身分の女性が、そんな権限を持っているという事自体が、常識として信じられないことなのだ。
 この場合、普通に考えれば、ロドゲルの言葉の方が信憑性があるという事になる。
 査察官という存在が普通に知られていれば、ロドゲルの強弁も受け入れられることは無かっただろう。

 だが、そのロドゲルの言葉を聞いたリサとガザーラは、お互いに顔を見合わせて、笑いあった。
「いやいや。ここまで想像通りだと、ほんとに笑えてくるな」
「この場合は、流石と思っておきましょう」
 最初から分かっていたかのような二人の台詞に、ロドゲルが反応した。
「ど、どういう事だ?」
 そのロドゲルの言葉を無視して、ガザーラが懐から一枚のカードを出して、それを受付の方へと飛ばした。
「そのカードを刻印機で、読み込んでみろ」
 ロドゲルが止める間もなく、そのカードを拾った受付の一人が読み取り機の上に置いた。
 当事者以外は気づいていないのだが、カードを拾ったのは奴隷の一人で、支部の様子を定期的に報告する役目も持っている担当の一人だった。
 この間、ロドゲルが止めるのを躊躇したのは、そのカードがどういった物かが分からなかったためだ。
 普通に頭が働いていれば止めた方が最善だとわかったのだが、もしかして偽物では、と少しだけ考えてしまったので、その分止めるのが遅れてしまった。
 その時間が決定的になった。

 そのカードを置いた受付の女性とそれを見ていた他の女性達は、そこに表示された物を見て唖然とした。
 今まで見たことが無かった物が表示されていたのだ。
 いや、話には聞いたことがある。
 クラウンカードは、他のギルドや公的ギルドの物とは別に、通常のランク以外の物を色で示されている。
 通常の冒険者であれば青、クラウンに貢献していると認められれば赤、といった感じだ。
 その中にプラチナの色が付けられているカードがあるという話を、受付になる者であれば必ず最初に聞く。
 そのカードを持っている者は、クラウンにとって重要な人物だと教え込まされる。
 とは言え、そんな色のカードは、今まで見たことが無いというのが実情だ。
 そのカードを持つ者が、どうして重要視されるかというと、それは非常に重要な権限が付けられているためだった。
「プラチナカード・・・」
「・・・・・・なっ!?」
 受付の一人が呟いた言葉に、ロドゲルが思わず絶句した。
 勿論ロドゲルもそのカードの意味は知っていた。
「流石にそのカードの意味は分かっているみたいだな」
 ガザーラはそう言ったが、実際反応しているのは、業務担当をしている者達で、カウンターの外にいる冒険者たちは蚊帳の外になっていた。
 置いてきぼりになっている冒険者たちのために、ガザーラが説明を続けた。
「簡単に言えば、そのカードを持っているやつは、アマミヤの塔への転移門の使用許可を取り消すことが出来る」
 ガザーラは簡単にそう説明したが、その意味が浸透するまで少し時間がかかった。
 ただ、本部が塔の中にあるクラウンにおいて、その権限を持つことがどういう意味を持つのか、冒険者の間でも少しずつ浸透していった。
「一言で言えば、本部に来れない役職持ちなどありえないという事になるわな」
 そういう事である。
 逆に言えば、このプラチナカードを持っている人間は、クラウンにおいてかなりの重要な位置に占めることを意味している。

「言っておきますが、カードを破棄しようとしても無駄ですよ?」
 カードをどうにかしようとして動こうとしたロドゲルに向かって、リサがそう言った。
「勘違いされている方が多いですが、カード自体はあくまでも自分でステータスが見れるようにした物です。紛失したり破棄したりしても、その人個人の情報は既に登録されているので、いつでも再発行は可能です」
 当然ながらなりすまし等も不可能なのだが、その辺は常識の範囲内なのであえて言っていない。
「一応私の物だと証明しますから、返してもらっていいですか?」
 リサはそう言って、受付の方へと近づいて行った。
「ま、待て・・・!!」
「おっと、往生際が悪いぜ」
 ロドゲルの行動は、すぐにガザーラが止めた。
 受付の一人が震えながらカードをリサに差し出して、リサはそのカードを受け取った。
 カードを受け取ったリサは、すぐに魔力を込めてそのカードが自分自身のものだと証明した。
 そのカードをリサではなくガザーラが持っていたのは、あくまでも用心のためだ。
「これで、証明が出来ましたか?」
 間違いなくリサの魔力でそのカードは発動していた。
 ここまでされて、リサが偽物だと思うような者達はいなかった。
 当然ロドゲルの言葉に従おうとする者も、それこそ身内の者だけになったのであった。
 そうなってしまっては、もはやロドゲルの悪事もここまでという事で終わることとなった。

 結局、クラウンとしてもギリギリのところで信用を失うことなく、再び新しい支部長を据えることが出来た。
 後任の支部長は、クラウンからの人選で選ばれた人材であり、このロドゲルの事もあり、その後も北の街の人間から支部長が選ばれるのはかなり先のことになるのであった。
こうして悪は滅びるのであった!

・・・はい。すみません。なんとなく言ってみたかっただけです。
査察官が顔をさらしていいのか? とか突っ込みが来そうですが、リサが来るということはすでに証拠十分な状態で来ています。
本文中にちらりと出ていた、奴隷さん(女性)達だったりデフレイヤ一族の働きのおかげですね。
もちろんリサも現地入りして最後の調査をする役目になっています。
今回は騒ぎがあったためにこんな形になりましたがw
+注意+
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