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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第18章 塔と新たな力

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(9)ふらつく考助

 結局ベッドから立ち上がれるようになるまでに一日かかってしまった。
 しかも立ち上がれると言っても、
「うわ。まだ駄目か・・・」
 と言った感じで、未だ軽い立ち眩みのような状態は続いていた。
 ベッドで体を起こしているくらいでは、特に違和感は感じないのだが、歩こうとすると駄目らしい。
 ここでさらに無理をしてもダメだと察した考助は、おとなしくベッドに戻った。
 はっきり言って、昨日一日ベッドでごろごろしていただけで、かなり飽きてしまったのだが、体調がこれではどうしようもない。

 ベッドに戻った考助は、昨日は出来なかったシルヴィアへの神託を試してみた。
『シルヴィア、聞こえる?』
 昨日ほどつらい状況ではなかったので、そのまま会話を続けることにした。
『こ、コウスケ様!? だだ、大丈夫ですか!!!?』
 相当慌てた様子で、シルヴィアから返答があった。
 エリスからは、普通に用事が増えたので遅れると伝えてもらっていたのだが、流石に考助自身から全く連絡が無かったので、心配をしていたのだ。
 その声を聴いて正直なことは言えないと察した考助は、努めていつも通りの声で返事をした。
『大丈夫、大丈夫。ちょっと予定が詰まってね。あと、例の件もなんか掴めそうだから、もう少しこっちに残るよ』
『・・・・・・わかりました』
 何となく返事までの時間がかかった気がしたが、考助は気づかなかったふりをする。
『そう言うわけだから、少しの間、そっちは頼んだよ』
『はい』
 シルヴィアの返事を聞いた後、すぐに神託を切ってしまった。
 実は、シルヴィアへと神託をつないだ瞬間、立ち上がった時と同じような状態になったので、悟られないようにするので精いっぱいだったのだ。
「うーむ。・・・これ、マジで大丈夫かね?」
 流石に自身の状態を楽観視できない状態だと、今更ながらに気付いた考助であった。

 相変わらず自分の事には鈍い考助であるが、昨日より回復しているという事はわかっているので、悲観的にはなっていない。
 そのうち治るだろうと思ってはいるのだが、あまりに帰還が伸びると流石に誤魔化しきれないことはわかってる。
 せいぜい一週間が限度だろうと当りを付けてはいるが、そこまでに治る保証は全くない状態だった。
 かと言って焦ったところでしょうがないことはわかっている。
 大人しくベッドで横になっているが、昨日散々眠ったので眠くなるはずもなく、ただただベッドの上でゴロゴロと寝返りをうつことくらいしかすることがない。
 そんな考助を、ジャルが訪ねて来た。
「来たよー。体調はどう?」
「おー。来てくれて良かった。もう暇で暇でしょうがなくてね」
「ああ、やっぱり?」
 ジャルとしても考助が絶対に暇していると思っていたので、仕事の合間を縫ってここに来たのだ。
 ついでに体調を崩している考助には悪いが、こんなにのんびりと話す機会もそうそうあるわけではない。
 ここぞとばかりに訪問してきたのだ。
 ちなみに、そんなことを考えたのはジャルだけではなく、スピカもエリスもこの後に訪ねてくることになるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 夜。
 結局、三大神の訪問を受けて、何とか退屈な時間を過ごしきった考助は、最後にして最大の客人を迎えていた。
「・・・なんか、ラスボスみたいな扱いで嫌」
「ははは。いや、ごめんごめん。でも、実際そんな感じだよね?」
 考助の雰囲気で察したアスラが、不機嫌な顔になった。
 そんなアスラを、考助が笑って誤魔化した。
「それで? どんな調子?」
「それが、よくわからないんだよね。こうしてベッドで横になってる分には全く問題ないんだけど、立ち上がるともうダメ」
「まあ、二足歩行の動物って立つ歩くっていう動作に、かなりの能力使ってるからね」
 アスラの意見に、何となく納得して頷く考助。
「いや、でも、普通は神託とかする方が、能力使わない?」
「そうでもないわよ。今、考助が不自由になっているのは、あくまで人として動く動作の時よね?」
「あー、なるほど。そういう事か」
 アスラの言いたいことが分かり、考助は再び頷いた。
 現在の考助は、魂だけで世界記録ワールドレコードに会ったおかげで、魂が何らかの変質を遂げている。
 それが何かはアスラにも分からないのだが、その魂の変化に肉体がついて行っていないことは分かっていた。
 魂の変化に、肉体が何とかバランスを取ろうとしているのだが、歩くといった動作をすることにまで処理が追いついていないのだ。

「最初にこの身体に魂を入れた時みたいに、肉体を調整できないの?」
「無理よ。あの時の考助の魂は、私でもきちんと把握できたけど、今の貴方はあの方の手が入っているから私にも正確には把握できないもの」
 結局のところ、考助自身で自分の魂の状態を把握しないとどうしようもないという事だ。
「うーむ。魂の把握ね・・・」
 そんなことが出来れば苦労は無いのだが、この状況を脱するためには、どうしても克服しないといけないらしい。
「なんかいい方法ない?」
「あればアドバイスも出来るんだけどね。こればっかりはどうしようもないわ」
 そう言って肩を竦めるアスラ。
 実際、自分の魂の在りようを把握する方法など、他者から聞いてどうこうできるものではない。
 どうしても個々に悟っていくしかないのである。
「うーん。・・・せめて肉体から離れて、魂だけになることが出来れば、まだ分かり易いと思うんだけど」
「え? 出来ないの?」
 考助の告白に、アスラはキョトンとした。
「出来ないよ! てか、心読めるんだからそれくらいわかってよ!」
「無茶言わないでよ。でも、そういう事なら話が早いわ」
「どういう事?」
「どういう事も何も。肉体から魂を離すことは簡単に出来るわよ?」
 そう言った考助の方を見たアスラは、どうする、と視線で聞いてきた。
「ぜひ、やってみてください」
 考助はそう言った後、アスラに向かって頭を下げるのであった。

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「おお。これが幽体離脱ってやつか」
 考助は、自分の体がベッドの上に横になっているのを、感慨深げに見つめた。
 森の中の岩で横になった時は、寝ていたという感覚しかないため自分が魂になっていたという意識はなかった。
 だが、今回は自分の体がはっきり目の前にあるので、分かり易い状況なのだ。
 なかなかできない体験に、しばらく楽しもうかと思っていた考助だったが、体を見ていた時にふとあることに気付いて、すぐにその考えを改めた。
「ごめん、アスラ。すぐに戻してもらっていい?」
「え? いいけど・・・自分が戻りたいと思ったらすぐに戻れるわよ?」
 アスラにそう言われた考助は、一度目を閉じて身体の中に戻るイメージをしてみた。
 その次の瞬間には、体に重みを感じるという、不思議な感覚に陥った。
 体に戻った考助は、すぐに目を開くが、眩暈を感じてすぐに目を閉じた。
 それで先ほどの感覚は間違っていないと理解できた。
「あー、うん。・・・なんでこんな体調になっているのか、理解は出来たよ」
「え? ほんとに?」
「うん。アスラが言っていた魂が肉体に定着していないというのもあるんだけど、あとは身体から魂が離れていたことも原因みたいだ」
 今魂が戻ってきて眩暈を感じたのもそのためだった。
 魂の状態で体を見た時に、何となく変な感じを受けたのだ。
 その直感と、視界から(・・・・)の情報ですぐに戻るべきだと判断して、アスラにすぐに戻り方を質問したのだ。
「そんなに影響あるの?」
 そして、これはアスラも分かっていなかったらしい。
「うん。まあ、これが自分だからそうなのか、それとも他の人類種たちもそうなのかは分からないけどね」
 そもそも身体から魂を離すなど、高位の神官や巫女でも不可能なので、それに答えられる者など皆無と言っていい。
 ましてや、考助は長い修行を得て魂が離れるようになったわけではないので尚更だ。
「まあ、でも原因が分かったおかげで、退屈な時間は減らせそうだけどね」
「あら。そうなの?」
「多分、だけどね。流石に今日は無理だから、明日にでも試してみるよ」
「そう。無茶はしないようにね。今日はもうこのまま寝る?」
「ああ、そうさせてもらうよ」
 考助がそう答えると、アスラは考助の額に手を触れた。
 そしてアスラが手を離したときには、考助は既に寝息をもらしていたのであった。
病弱考助でした。
次話には完治して、塔に戻れ・・・るといいなあ。
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