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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2章 塔の運営を開始しよう

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(10)吸血姫

本日2話投稿の1話目になります。
 コウヒが第七十三層でリストンの相手をしている間に、考助はいつものように狼達や狐達の様子を見に行ったりして過ごした。
 各層の見回りから管理層へ帰ってくると、コウヒも帰ってきていた。その後は、本を読んだりして過ごした。
 本に関しては、最初に管理層に設置した時にあったものだが、何となく読み始めてみたが、上手くいけば面白いことができそうなので最近はまっていた。
 理論は本で理解できそうなので、そろそろ実践に移ろうと考えている。
 まあそれはもう少し落ち着いてからだと考助は思っていた。
 それはともかく、次は<ヴァミリニア城>である。
 夕食を終えた後、ミツキの要望があったので、召喚前にヴァミリニア城を第七十六層に設置する。
 片づけなども終えて、召喚を行うため三人で第七十六層に向かった。

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(でっかい城だなぁ・・・)

 というのが、最初にヴァミリニア城を見た時の考助の感想である。
 もっとも考助が城を見るのは、今世でも前世でも初めてなので、比較対象があるわけではないのだが。
 実はヴァミリニア城は、この世界では標準程度の大きさの城で、この城より大きいものもいくつか存在している。
 まあ城自体を見たことがない考助に、それに気づけというのは無茶な話である。
 それはともかく、今三人は城の中で、管理画面に表示されていた<ヴァミリニア宝玉>を探していた。
 探すといっても当たり自体は、実はすでにミツキが付けていた。
 真っ直ぐ向かえなくもないのだが、考助の希望によりせっかくなので、城の探索がてら寄り道しつつ向かっているのだ。
 そういうわけで、王座らしきものがある謁見の間(?)やら、おそらく今は本が入っていない棚がたくさんある元は図書館であろう部屋やら、やたらと厳重な鍵と仕掛けが施されている扉がついた今は何も入っていない宝物庫やらを見回った後、目的のものがある部屋へと来ていた。

 <ヴァミリニア宝玉>は、城の地下に当たる場所にあった。
 それなりの大きさの部屋の真ん中に、ぽつんと豪華な台座が一つありその上に水晶のような透明な玉が一つ載っかっていた。
 念のため左目で確認してみると、間違いなく<ヴァミリニア宝玉>だった。
 さり気なく所有者が考助になっている。これは管理層で設置したのが考助だからだろう。
「・・・・・・考助様?」
「大丈夫」
 いきなり<ヴァミリニア宝玉>を触ろうとした考助を心配してミツキが止めようとするが、左目で大丈夫なことを確認していた考助は、気にせず右手を宝玉の上に置いた。

<所有者確認。設定の変更を行いますか? はい or いいえ>

 いきなり脳内に出てきたので、そのまま「はい」を選択する。

<所有者変更の手続きを行います。変更者の右手を置いてください>

「ミツキ、右手置いて」
「? ・・・こう?」
 考助に言われるがままに、ミツキも宝玉の上に右手を置いた。

<・・・確認しました。所有者の変更を終了します>

「・・・これは?」
「うん。なんかわかんないけど、変更できるみたいだからやってみた」
 あっさり言った考助に対して、何かを言おうとしたミツキを制して、
「どのみち、ここはミツキが管理することになるんだから、変更しておいた方がいいよね?」
「・・・わかったわ」
 多少強引だが、考助としてはミツキに所有してもらった方が安心なので、納得してもらった。
 今後のことを考えると、ミツキに渡しておいた方がいい気がしたのだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 そんなことをしつつ、いよいよ本来の目的である召喚をすることになった。
 といっても準備は万端ということで、ミツキはすぐに召喚を行った。
 特に問題が起こるわけでもなく、無事に召喚は終わり、後には白髪赤目の女性が残されていた。
 コウヒやミツキとはまた違った、大人の妖艶さを持つ美女である。
「・・・吾を呼び覚ましたのは、そなたか?」
「ええ、そうよ。是非ともあなたにやってもらいたいことがあってね」
「ふむ・・・・・・そのやってもらいたいということも気になるが・・・そこに控えておる人族も気になるの? 吾のために用意してくれた生贄か?」
 白髪の美女がそう言った瞬間、ミツキからプレッシャーがあふれ出た。
「・・・たとえ冗談でも、言っていいことと悪いことがあるのよ、契約の守護者さん?」
「む・・・これは済まなかった。久方ぶりの復活で、多少浮かれていたらしい。謝りたい」
 ミツキのプレッシャーに気圧されつつもしっかりと謝罪を口にした。
 そのことに溜飲を下げたのか、ミツキも即座にプレッシャーを放つのを止める。
「わかってもらえればいいわ。それで、私の主を紹介するわ」
「・・・・・・主だと?」
「ええ。そうよ。といっても、あなたには口で説明するより手っ取り早い方法があるからその方法をとらせてもらうわ」
「・・・なんだと?」
「コウヒ、お願い」
 疑問を浮かべる白髪美女を余所に、ミツキがコウヒへ目配せした。
 それを受けたコウヒは、どこから取り出したのかいつの間にか両手にワイングラスとナイフを手にしていた。
「すいません主様。こちらを持ってもらえますか?」
「・・・? ああ」
 考助は戸惑いつつも左手で、差し出されたワイングラスを受け取った。
 さらに空いている右手をコウヒに取られ、グラスの上に持ってこさせられた。
「申し訳ございません。少しの間だけ我慢してください」
「・・・コウヒ? クッ・・・!?」
 コウヒはナイフを考助の掌の上で走らせる。
 当然のように考助の手から血が流れ出てきて、それをグラスが受け止める。
 その間、何も聞いてなかった考助は、それでもされるがままにしていた。
 グラスの中に一センチほどの血がたまると、コウヒはグラスを受け取り、即座に右手の治癒を行った。
 治癒のおかげですぐに右手の傷は収まり、後には考助の血が入ったグラスが残されミツキへと手渡された。

 グラスを受け取ったミツキは、そのグラスを美女の方へ差し出した。
 ところが、よく見るとその美女の様子がおかしかった。
 どことなく、呆然としたような、あるいは陶然としたような表情になっている。
 ミツキにグラスを差し向けられて、ようやくそれに気付いたようにグラスに目を向けた。
「どうしたの? せっかくの考助様の厚意を無駄にするつもり?」
 目の前の美女の様子を見て、どこか面白そうにミツキがグラスを差し出す。
「む・・・いや、しかし・・・これは・・・」
 最初ためらうような様子を見せた美女だったが、覚悟を決めたようにミツキからグラスを受け取り、その中身を味わうように飲んでいった。
 グラスの中身が空になるまで飲み干した美女は、少しの間余韻に浸るように目を閉じていた。
「・・・・・・・・・・・・ああ」
 そして、まるで万感の思いを込めたように一つ息を吐き出し、考助の方へ向いて言った。
「先程の吾の態度を改めて謝罪したい。吾が名はシュレイン・ヴァミリニア。吸血姫シュレインと申す」
「ああ、いや。特に気にならなかったから別にそれはいいんだけど・・・それより、ヴァミリニア・・・!?」
「? ・・・吾が家名がどうかしたかの?」
 不思議そうな顔をするシュレインから視線を外して、考助はミツキを見た。
「いや、さすがにそれは私も知らなかったわ」
「・・・どういうことかの?」
「ここ、お城なんだけど<ヴァミリニア城>って言うらしい」
「なんと・・・!? ということは、あれは、まさか・・・」
 そういってシュレインは、<ヴァミリニア宝玉>を確認する。
「・・・間違いなく<ヴァミリニア宝玉>。これは、一体どういうことかの?」
 慌てたように考助に詰め寄るシュレインに、考助は若干引いてミツキに丸投げすることにした。
「ああ、うん。いや、こっちもあまりよくわかってないんだけど・・・とりあえず現状分かってることは、ミツキから聞いて」
「・・・・・・考助様?」
「僕たちは、拠点に戻るから、ミツキよろしくね」
 どことなく焦った様子の考助に、疑問を浮かべつつコウヒが進言した。
「しかし主様、かなり夜も更けています。今から戻るのは・・・」
「危険?」
「・・・いえ、コーたちもおります。何とかなるでしょう」
 考助の困ったような顔を見たコウヒは、何を思ったのか即答した。
 なぜかミツキの方は、裏切者ぉ、という顔をコウヒへ向けていた。
 そして訳も分からず、その様子を見ているシュレイン。
 結局、ミツキは一人城に残ってシュレインに状況を説明することになり、管理層へと戻ったコウヒは、しばらくの間ご機嫌な様子であった。
ミツキ「なぜあんなに慌てて戻ってきたの?」
考助「・・・なんか、血が狙われた気がしたから・・・」
シュレイン「吾はそこまで見境なしではないわ」
考助「・・・・・・ホントニ?」
シュレイン「・・・・・・タブン」

※後にこんな会話があったとかなかったとか。

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次話20時投稿予定

2014/6/3 誤字修正
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