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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第17章 塔と代弁者と愚か者たち

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(9) 代弁者出現

 謎の女と話をしていた時間は、少なくとも体感では一時間もない。
 だが、気がついたときには一日が過ぎていた。
 話をしていた時間が長かったのか、あるいは女が去るときに何か仕掛けをしたのかは分からない。
 結果として、慌てた様子で部下が部屋に入ってきたときには、既にそれだけの時間が過ぎていたのだ。
 その部下が言うには、何をしようとドアを開けることが出来ず、終いには壁ごと破壊しようとしたが、それもかなわなかったという事だった。
 壊すことも出来ず、中の様子をうかがう事も出来ない状態で、彼ら三人がどういう状態にあるのか全く分からなかったそうだ。
「・・・やってくれたものだな」
 そう吐き捨てたジザリオンだったが、現状が認識できないほど鈍ってはいなかった。
 この状況において、一日という時間がどれほど貴重かというのはわかっていた。
 あの女の目的もある程度は推測が出来る。
 三人を隔離することで、今回の件の対処を遅らせようとしたのだろう。
 だが、ジザリオンにしてみれば、甘いと思っていた。
 自分が同じ立場なら、一日なんて中途半端な状態ではなく、結果が出るまで隔離した状態にしただろう。
 あるいは、一日しかダメな理由でもあるのかもしれない。
 ただ少なくともジザリオンはまだ対処が出来る範囲だと考えていた。
 確かに、自分たち三人は首謀者ではあるが、この件に関わっていたのは、三人だけではない。
 その者達が、ある程度の対策はしているだろうと考えていたのだ。
 ・・・この時までは。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 すぐに執務室には何も異常がないという事が分かったので、ジザリオンはすぐに手を打ち始めた。
 あの女が何か仕掛けを残していることも考えたのだが、とある理由(・・・・・)で執務室で作業をしないと効率的ではないので、この部屋で作業をするしかなかったのだ。
 その理由というのが、魔法具の関係でどうしても位置をずらすことが出来ない物であったのだ。
 それは遠距離通信を行う魔道具だ。
 一度切りしか使うことしかできない使い捨ての上に、非常に高価なのだが、その効果はこういった時ほど発揮する。
 場所も固定した場所でしか使うことが出来ないなど、色々制約があるために、どうしてもこの部屋から離れることはできなかった。
 ファットとキキは、既にそれぞれの屋敷へと帰っている。
 勿論、連絡は遠距離通信を使って取ることを決めていた。

 それからジザリオンは、何らかの手を打とうと各所に連絡を取り始めたのだが、自分の見通しが甘かったと認めるしかなかった。
 今回の件で、直接的にかかわった者達との連絡は取れなかった。
 一日隔離されていたジザリオン達と同様な状態で、部屋に閉じ込められたり、どこにいるのか分からないような状態になっていた。
 ジザリオン達が隔離されていた間に、あの女が何かをしたのは間違いなかった。
 三人が隔離されていた間に、今回の件に関わっていなかった者達は、既に誰が何をしたのかまで特定できているような状態になっていた。
 ジザリオンにしてみれば、普段からそれくらい働いてくれれば色々なことが出来たのにと思ったのだが、今はそんなことを考えても仕方ない。
 現在直接ジザリオンの所に直接行使に来ないのは、あくまでもジザリオンの立場が立場だからだ。
 もしこれが、市井の者であれば、とっくに捕らえられて何かの処分を下されているだろう。
 それはともかくとして、ジザリオンはその立場を最大限利用して、今回の件を逃れるつもりだった。
 サジバルの人材が使えなければ、外の人間を使えばいいのだ。
 いくらなんでも、遠く離れた町の人間にまで手を出せるとは考えていなかった。

「・・・どういうことですかな?」
「どうもこうもありませんよ。貴方はやりすぎた。いや、手を出してはいけない所に手を突っ込んでしまった」
 その返答に、ジザリオンは呆然としてしまった。
「あの塔の支配者が本当の神であるかどうかはともかく・・・いや、あの神殿が発表している以上本物なのでしょうが、神々と直接繋がりがあるのは、十分に推測できたでしょう?
 それなのに今回のようなことを起こした。非難こそすれ、味方する者はいないと思いますよ? 誰もとばっちりは食いたくないでしょうし」
「・・・一つ聞いていいですかな? 今回の話はどこから?」
 代弁者の出現はサジバルの街で起こったことだ。
 それにしては、あまりにも情報の伝わり方が、早いだけではなく、正確に伝わっている。
 その答えはあっさりと相手からもたらされた。
「塔の行政府かクラウンからに決まっているではないですか。まあ何か隠しているのはわかっていましたが、今回の件で裏付けが取れましたね。やはり侮れません。
 それに、どこの街も『粛清』は受けたくないと思うのは、当然でしょう?」
「馬鹿な。それが、塔の目的だということが分からないのですかな?」
「そうかもしれません。いえ、そうなんでしょう。今回の件が、仕組まれたのかどうかはわかりません。
 ですが、少なくとも貴方の街に出現した代弁者は、本物です。それを神殿が認めてしまった。それはもう変えられないのですよ」
 相手の突き放すような言い方に、ジザリオンは顔を歪ませた。
「私だけではありません。他の人間にも確認してみましたが、貴方達に手を貸そうという者は一人もいませんでしたよ」
 それほどまでに、この世界では代弁者の伝説というのは、根強く伝わっているのだ。
 今回出現したからの情報が持ち込まれて裏付けが代弁者が本物であるとミクセンの教会が認めてしまった。
 これを覆すことは、いくらジザリオンでも出来るものではない。
「というわけですので、連絡はこれっきりにしてください。私が味方だと思われてはたまりませんので。今後通話を使われても出ません。それでは」
「ま・・・待て!」
 慌てて会話を続けようとしたジザリオンだったが、既に通話は一方的に切られていて、既に魔道具は使い物にならなくなっていた。
 もう一度同じ相手に、別の新しい魔道具でつなごうとしたが、宣言通り相手が出ることは無かったのである。

 その後、何人かに連絡を取ったのだが、返事は芳しくなかった。
 というよりも相手にされなかった。
 完全にジザリオンを見切っていることが分かった。
 恐ろしいのは、セントラル大陸すべての都市に網羅されて情報が伝わっていたことである。
 四つの都市に転移門、東西南北の都市に支部があることはわかっているが、たった一日で情報が伝わっているというのに愕然としてしまった。
 今更、という感じだが、アマミヤの塔が抱える行政府とクラウンという組織の力を見誤っていたことを認めざるを得なかった。
 代弁者と協調したのかは分からないが、それでも見事という他なかった。
 この街にいるはずの連絡がつかなかった者達も連絡が取れる状態になっていたが、その時には既に手遅れの状態だった。
 街の誰もが代弁者の『粛清』を恐れたために、行動が早かったのだ。
 サジバルの街に意図的に情報が流されていることも感じていたが、対処する事もできなかった。
 サジバル内部だけで話が完結していれば対処することもできたのだが、外部からの情報が伝わり裏付けが取られるとどうしようもなかったのだ。
 ここまで来るといっそ見事という他ない。
 どこまで代弁者とあの女が関わっているかは分からないが、思惑通りになったのだろうと思うしかなかった。
 代弁者が出現したあの日から十日。
 その宣言に押されるように、今回の件に関わったすべての者達の処罰が決まっていた。
 あり得ない程の速さの処置は、明らかに代弁者を意識しているものだった。
 こうしてサジバルという街は、ジザリオン達三人を含めた全ての者達を切り捨てることを決定したのであった。
本編でここまで考助が出てこないのは、初めての事ではないでしょうか?w
長々と書いてしまいましたが、この辺省くと訳が分からなくなりそうだったので、
書ききってしまいました。
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