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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第16章 塔とゴーレム

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閑話 切実な問題2(後編)

「教会が記録を消した?」
 シルヴィアの話に、コレットがそう推測した。
「いや。そもそもこの本の元は伝聞というか、言い伝えを記録した物だ。その全てに神殿が関わっているとは考えづらい」
 口伝で伝わっているような話を、一つ一つ介入して訂正するのはあり得ない程の労力が必要になるのだ。
「むしろ教会に知られても大丈夫なように話が残ったと考える方がしっくりくるの」
 シュレインの言葉に、全員が腑に落ちたように頷いた。
「教会が手を出しにくい神の子に関する話は多く残っていて、その親に関しては教会が手を出してくる可能性があるから伝わっていなかったということね」
「あるいは、最初は伝わっていたとしても、教会に見つからないように、その部分だけ削って伝わったという事もあり得ますわ」
 全員で話していくと、段々とそれが正解のように思われてきた。
 実際、本にまとまっている話から推測すると、今までの話が一番しっくりくるのだ。
 そして、実際に彼女たちの推測は的を射ていた。
 神の子を授かった者が教会関係者でない場合は、強引に教会に帰属を迫られる例もあった。
 そのために親となった者は、自ら目立たないように行動していた。
 神に気に入られるほどの者なので、教会やその他の勢力から姿を消すのは簡単だったのだ。
 一方でその子達は、神の子である立場を存分に発揮して、教会に口出しされないように行動した。
 勿論親がそうなるように育てたというのもある。
 結果として、親に関する伝承が残らないという結果になったのである。
「教会の所業かどうかはともかくとして、親に関する伝承が残っていないのでは、意味がないのでは?」
 そもそも彼女たちが知りたいのは、子の残し方であって子供たちの活躍を知りたいわけではない。
 シュレインに同意するように、コレットが頷いた。
「そうよね。親がどうやって子を成したのかを知りたいのだから、親の事が分からないとどうしようもないわ」
 コレットがため息を吐いた。

「そうですかね~?」
 シュレインとコレットに異論を唱えたのは、ピーチだった。
「何かあるのか?」
「確かに神では無い方の親のことは書かれていませんが、子供の事と神のことは書かれていますよね~」
 ピーチの言葉に、シルヴィアがハッとしたように顔を上げた。
「神とその子供の関係から色々調べることが出来るということ?」
「恐らくですが~」
「すまないが、話が見えないのだが・・・」
 ピーチとシルヴィアの話に、他のメンバーが戸惑ったような表情になっていた。
「これだけの数の話がまとめられている本です。恐らく中には、子を成した神で重複している神もいますわ」
「その神がどういうタイミングで子を成しているのか、それを調べるだけでも価値はあります~」
「少なくとも神の側の状況を知ることは可能ですわ」
「それに、神の側ではない親の話も全くないわけではないので、それを確認するのも大きいですね~」
 重要な話は意図的に隠されている可能性はあるが、たとえ重要な話でなくても彼女たちが知りたいことのヒントは出ている可能性があるのだ。
「言いたいことはわかるが・・・同一の神か確認するだけでもかなりの手間になるぞ?」
「それこそ私の出番ですわ。それぞれの本に出てくる神の名だけでも抜き出してくれれば、後は何とか特定してみます」
 同一の神であっても時期によって、全く違う名を名乗っている場合もある。
 はっきり言えば、専門家である聖職者を除けば、自分を信仰している神以外に把握している者はほとんどいないだろう。
 だからこそシルヴィアの出番、という事になる。
「では、まずは親が出てくる話の調査、後は相手の神の名の調査をしてみると言ったところかの?」
「後は、生まれた子供についてもですね~」
「子供についても、と言われても具体的には、どういったことを調べればいいんだ?」
「どういった力を持っていたとか、ですかね~。神の親には無い力を持っていたりすれば、それはもう片方の親の力の可能性もありますから」
「ああ、なるほど。そういう事か」
 例え具体的な描写が無かったとしても、推測することは出来るものもあるということだ。
 ただ本を読むだけでは分からないことも目的を持って調べれば、他の見え方が出来る場合がある。
 今後はそう言ったことを踏まえたうえで、本の調査を行っていくことになったのであった。

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『中々難航しているようですね』
 女性陣の集まりから数日たったある日、珍しいことにエリスからその話題に触れて来た。
 いつもの短い交神だろうと考えていたシルヴィアは、咄嗟に返事が出来なかった。
「えっ・・・!? は、はい。どうしても漠然としすぎていて、具体的にこれ、というものが見つけられません」
『では、一つだけヒントを上げましょう。そもそも人や亜人と神々はどうやって子を成していると考えていますか?』
 それが分からないから調べているんだと、一瞬シルヴィアはそう考えたのだが、エリスがそんな無意味なことを言うはずがないと思い直した。
 そして、ハタと気づいた。
「え・・・!? あれ?」
『どうやら気付いたようですね。後は頑張って自分たちで答えを見つけてください』
 エリスはそう言って交神を終えた。
 だが、シルヴィアはそれどころではなかった。
 今エリスから聞いた話を皆に伝えないといけないということで、頭がいっぱいだったのだ。

「エリサミール神から何か話を聞けたのか?」
「そうですわ。しかも今まで私達がまったく気にしていなかった所の助言をいただけました」
「へえ。どんな助言?」
「そもそも人や亜人と子を成した神、というのはどういう存在だったと思いますか?」
 シルヴィアの言葉に、最初は全員が首を傾げた。
 だがやがて、ピーチが気づいたように「アッ」と声を上げた。
「地の神と天の神、ですか~」
「そういう事ですわ」
 シルヴィアとピーチが二人だけで納得して、ほかのは置いてけぼりになっている。
「すまん。全く分からないのだが?」
 シュレインが首を傾げつつ二人に聞いてきた。
「そもそも今の神の在りようは別にして、神代のころは、神は地上に存在していたと言われていますわ」
 今は神がその姿を見せるのには降臨か、召喚しかないのだが、神代のころは普通に神が地上にいてその力を振るっていたと伝えられている。
 むしろそう言った話が無い地方の方が珍しいくらいなのだ。
「そうよね。エルフもそう言った伝承が伝わっているくらいだし」
「その地上に存在した神、というのがヒントになると思いませんか~?」
「「「あっ・・・!?」」」
 ピーチの言葉に、シルヴィアを除いた三人が顔を見合わせた。
「勿論、地上にいた神だけが子を成したとは限りませんが、少なくともコウスケ様のことを考えると、その神の事を調べた方が近道になると思いませんか?」
 ある意味で、考助もまた地上に存在している神と言える。
 より近しい存在の話からヒントが得られないか、という事だった。
「もっと言うと、天の神も子は成しているのだから、二つの神の差を見比べてみるのもいいかもしれませんね~」

 結果として、神の子の話がまとめられている本の中のほとんどが、地の神が残した子達であることが分かった。
 地上に存在している神が、子を残しやすいという事が分かっただけでも、彼女たちにしてみれば大きな前進であった。
 何故なら現人神である考助は、まさしく地上に存在している神なのだから。
 このことは彼女たちの望みをかなえる希望となったと言える。少なくとも可能性はあることが示されたのだ。
 その希望を胸にさらに彼女たちは、精力的に調査を進めていくことになるのであった。
なんというか・・・1話分書きましたが、あまり話が進んでいないような・・・。
簡単には解決しない問題だとご理解ください。
「切実な問題」の話は今後も出てくると思いますので、よろしくお願いします。
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