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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第16章 塔とゴーレム

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(6) 狼の新しい種

 考助はゴーレムの作成とアマミヤの塔の管理作業の合間を縫って、管理層のくつろぎスペースのソファーで昼寝をしていた。
 傍にはミツキがいるだけで、他のメンバーは誰もいない。
 そのミツキがある者に気付いて考助を見ていた視線を、一瞬だけそちらの方へと向けたが、すぐに考助へと視線を戻した。
 それは考助に向かって来ていたのだが、危険はないと判断したのだ。
 ミツキが確認したその白い塊は、考助が寝ているソファーまで一直線で近寄り、考助の身体が無い隙間にふわりと飛び乗った。
 考助の目が覚めないのを確認した後、そっとその四足を考助の身体の上に乗せた。
 ちなみにこの一部始終を見ているミツキは、面白そうにその白い塊がすることを見ているだけだった。
 完全に考助の身体に乗ったその白い塊は、そろそろと考助の顔に近づき、ペロリと考助の頬を舐めた。

「ウワッ・・・!?」

 頬を舐められる感触に驚いた考助が、ガバッと上半身を起こしたが、その考助の上に乗っていたナナは、慌てた様子も見せずに考助の足元にしっかりと着地した。
「わふっ・・・!!」
 その鳴き声で考助が、足元にいる白い塊に気付いた。
「お前、ナナか・・・!?」
 考助が驚いているのは、その大きさだった。
 どう見ても小型犬程度の大きさしかなかったのだ。
「わうっ・・・!!」
 ナナが肯定するように、首を上下に揺らした。
「うわー。まじか。滅茶苦茶可愛いな。普段の大きさもいいけど」
 考助が小型化したナナに向かって手を差し伸べると、嬉しそうにナナが飛びついてきた。
 いつもと違って大した衝撃もなく受け止めることが出来た。
 考助は、そのまま起こした身体をもう一度倒して、ソファーの上に寝そべる。
 その考助の顔をナナは嬉しそうにペロペロと舐め始めた。
 考助も考助で、顔を舐められるままに小さいナナの身体をモフッていた。

 しばらくお互いに堪能した後で、考助がナナに聞いた。
「それで? 今日はどうしたんだ?」
「わふっ」
 ついいつもの調子で聞いたが、残念ながら今は通訳が出来るコレットやシュレインがいないので、話が聞けない。
 困った考助が、どちらかを呼びに行こうかと考えたその時、ナナがひと声遠吠えをした。
「ワオーン」
 その声に反応したのか、ナナが入ってきた方向から二つの影が飛び込んできた。
 一瞬考助は身構えたが、その影が二匹の狼だと分かるとすぐに警戒を解いた。
 そもそも傍にいるミツキが何も反応していなかったので、警戒をする必要はなかったのだが。
 入ってきた二匹の狼を見て、考助はすぐに首元を撫でてあげた。
「こっちに連れてくるなんて、珍しいね。何かあったの?」
「わふっ」
 考助が、ナナに問いかけてナナもそれに答えたのだが、残念ながら先ほどと同じように通訳がいないので、何と言っているのかは分からない。
 考助は精霊を見れるのに、いつまでたっても<精霊言語>を習得できていない。
 これにはコレットも首を傾げていたが、出来ないものはしょうがない。
 コレットでも呼びに行こうかと思った考助だったが、その前にふと思いついてナナが連れて来た狼のステータスを見てみた。

 固有名:エイル
 種族名:白狼王
 固有スキル:遠吠えLV7 体当たりLV8 噛みつきLV8 威嚇LV8 集団行動LV7 妖精言語 言語理解(眷属)LV6 風魔法LV7 土魔法LV3
 天恵スキル:統率LV8 大神の欠片(満月)体長変化 王の証
 称号:考助の眷属 大神の一族 風霊神のお気に入り

 固有名:ミエル
 種族名:白狼妃
 固有スキル:遠吠えLV8 体当たりLV7 噛みつきLV8 威嚇LV8 集団行動LV7 妖精言語 言語理解(眷属)LV7 風魔法LV6 土魔法LV4
 天恵スキル:統率LV8 大神の欠片(満月)体長変化 妃の証
 称号:考助の眷属 大神の一族 地霊神のお気に入り

 二匹とも確認すると種族が変わっていた。
 エイルもミエルも元々は白狼頭だったはずだ。
 流石に全部の眷属たちの種族は覚えていないが、白狼頭は数が少なかったので何となく覚えていた。
 ・・・というわけではなく、きちんとメモに取っていたのだ。
 その二匹が新たに進化したようだった。
 天恵スキルの<王の証>と<妃の証>というのも気になるが、それよりも<風霊神のお気に入り>と<地霊神のお気に入り>が気になる。
 どう考えても女神様達に関わる称号になるのだろう。
 <お気に入り>といった表示が、どういった効果をもたらすのかが全く不明だった。
 すぐにジャル辺りに交神して聞こうかと思ったのだが、思いとどまった。
 何となくこの件で交神すると、碌なことにならないような気がしたのだ。
 自分の勘を信じて、交神に頼るのは止めて<お気に入り>に関しても探るのは止めることにした。
 どうしても伝える必要がある物なら、わざわざこちらからつつかなくても向こうから伝えてくるだろうと考えたのだ。

 そんなことを考えていると、コレットが南の塔の制御室から戻ってきた。
「あら。ナナ、来てたの? ・・・またずいぶんかわいいわね」
 小狼バージョンのナナにすぐに気付いたコレットだったが、その姿にやられたのか速攻で撫で始めた。
 ちなみにコレットは、大神バージョンのナナには、触れようとしない。
 小さいころから御伽として聞いてきた大神には、畏敬の念を持っているのだ。
 撫でられているナナは、言葉が通じるコレットに何かを訴えるような仕草になっていた。
「なんか、この二匹を紹介したくてここまで来たみたいよ?」
「ああ、うん。もう何となくわかったから大丈夫って、伝えておいて」
 考助の言葉は、<言語理解(眷属)>があるナナには通じているのだが、伝わりやすい言葉で伝えた方がいい。
「そうなの?」
「白狼王と白狼妃って種族になったみたい」
「何それ?」
 コレットも初めて聞く名前なのか、首を傾げた。
「よくわからないね。神が関わってそうだけど、下手につつくと他にも何かありそうだから気にしないことにした」
 何とも罰当たりな言い方だが、それに対してコレットは何も言わずに、肩をすくめるだけだった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「あら。残念」
「なかなかどうして。考助も鋭くなってきたわね。わかってて回避したとは思えないけど」
 ジャルが、残念そうにしている二柱の女神を前にそう言った。
「直感」
「そうかな? まあ私達が色々としているから、どんどん鋭くなっても不思議ではないけど」
「成長?」
「さあ、どうかな? そもそも現人神が、この世界でどういう存在になるかなんて分かってないんだしね」
 そう言うジャルに、二柱の女神はじっと見つめている。
「こっちを見ても駄目よ? 約束は約束なんだから。これ以上は手助けは出来ません。そもそもあの二匹だって、条件を満たしていたから出来たんだから」
「がっくり」
「全くだわ」
 そっけなく告げられてジャルの言葉に、二柱の女神は落胆を露わにした。
「貴方たちなら、わざわざ考助を介さなくてもある程度の干渉はできるでしょうに」
 少し呆れたように、ジャルがそう言った。
「無意味」
「そうね。それだと意味ないわね」
「まあ、いいわ。今回に関しては、これで終わり。これ以上は、また次回」
「そんなー。オウボウよー」
「同意」
「駄目なものは駄目。アスラ様に睨まれたくないでしょう?」
 ジャルがそう言うと、二柱の女神はぴたりと口を閉ざした。
「帰宅」
「そ、そうね。それじゃあ私達はもう帰るわ」
「はい。お疲れ様~」
 アスラの名前を出したとたん大人しく帰った二柱の女神に、ジャルも特に何も言うわけでもなく送り出した。
 この神域において、アスラの名前を出されてなお反抗する愚か者はいない。
「やれやれ。今回はこれで済んだからよかったけど・・・今後はどうなるか分からないわよ? 考助」
 ジャルがそう呟いたと同じ時間に、考助が管理層でくしゃみをしたとかしなかったとか。
 残念ながらその因果関係を調べるような暇人(神?)は、どこにもいなかった。
なんとも最後はフラグっぽいですが、名前が出なかった二柱の女神は、今後も名前が出てくるかは微妙な所です。
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