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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第15章 塔と女神様

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10話 ハク

 一晩[常春の庭]で過ごした考助は、翌日約束通り女神達と過ごした後で帰還した。
 いつかどこかで[常春の庭]には、肉体を伴った状態で長時間過ごしてはよくない、というようなことを聞いた気がしたので、エリスに聞いてみたが、
「今の貴方でしたら問題ありません」
 と、あっさり答えが返ってきた。
 現人神としての神気と肉体が、良いように馴染んできているようで、神界である[常春の庭]にそれなりに長時間過ごしたとしても問題が無いという事だった。
 まあ、例え問題があるとしても、その辺はアスラがどうにかするだろうからあまり心配もしていなかった。
 無理だったら最初から止めているだろう。
 そう言ったこともなかったので、予定通り女神達との触れ合いが終えて、そのまま塔へと帰還することになった。
 今回は、女神達の見送り付きになる。
 思ってた以上の女神達に見送られることになった考助は、それでも失敗することなく無事塔への送還陣を起動することが出来た。
 送還陣からあっさりと姿を消した考助を見て、見送りの女神の一人が呟く。
「・・・・・・今度来るのはいつかねえ」
「あまり無茶なことをいわないで。そもそもあの方があちらにいるからこそ、私達もこうして恩恵を受けられるのだから」
「そうなんだよねえ」
 同じような会話は、そこかしこで交わされていた。
 そんな雰囲気を吹き飛ばすように、エリスの声が響いた。
「ハイハイ。これでお開きです。寂しいのは分かりますが、いつもの仕事に戻るように」
 その言葉を皮切りに、女神たちはその場を去って行った。
 後には、三大神姉妹とアスラが残っていた。
「寂しいのは分かりますが、ね」
 何やらニヤニヤしながらアスラが、エリスの方を見ていた。
「な、何ですか?」
「いーえー。べーつにー」
 アスラの態度に思わず突っ込みを入れようとしたエリスだったが、グッと堪えた。
 下手につつくと藪蛇になりそうな気がしたのだ。
「そうですか。さて、私達も戻りましょう」
 二人の様子を見ていたスピカとジャルに、エリスが促した。
「はい」
「はーい」
 スピカとジャルは自分達が、話をそらすために使われたことは分かっていたが、素直に応じた。
 こういう時のエリスをからかうと、後で碌な目に遭わないと分かっているのだ。
 こうして三姉妹も去っていき後にはアスラが残された。

「・・・・・・次に来るのはいつかしらね」

 そう呟いたアスラの言葉は、誰の耳にも止まらず風の中に消えていった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 アマミヤの塔の管理層へと戻った考助だが、コウヒとミツキを連れてすぐに塔の外へと向かった。
 場所は、考助がコウヒとミツキに出会った所だ。
 考助は詳細な場所は覚えていなかったが、コウヒがしっかりと覚えていた。
「主様と出会った場所です。忘れるわけがありません」
 よく覚えているな、と考助が聞くと、そういう答えが返ってきた。
 ともかくその場所まで転移をした。
 目的は勿論、新しいメンバーを回収するためだ。
 そのメンバーはすぐに見つかった。
 そこにいるはずのない物が鎮座していたのだ。
 考助にとっての苦い経験でもあるブラックベアーも、その姿を見て近寄ろうとさえしていなかった。
「・・・・・・予想外と言うか・・・いや、予想通りというべきか・・・」
 思わずそう呟いた考助に、ミツキが笑って言った。
「まあ私達を創った方々だからね。予想してしかるべきよね」
 既に二人には、何の目的でここにきているのか話してある。
「私達と同種でなかったことは意味があるのでしょうか?」
 そう言ったのはコウヒだった。
 そう。考助たちの目の前にいる仲間は、コウヒやミツキのような翼を持った存在ではなかった。
 いや翼というか爬虫類のような羽は持っているのだが。
 三人の目の前にいるのは、一体のドラゴンだった。
 その姿形は、いわゆる東洋の蛇に手足が生えているようなタイプではなく、まさしく西洋のドラゴンだった。
 アマミヤの塔の上位層にはドラゴンが普通に存在しているので、驚くことは無いのだが、どう見てもそれらのドラゴンよりは格上に見える。
 そんなドラゴンが、じっと考助の方を見ているのだ。
 普通であれば、縮み上がりそうな場面なのだが、不思議とそう言う感情は浮かび上がってこなかった。
 実際の時間にしてみれば、大した時間は経っていなかったのだが、考助にとっては長い時間が過ぎた頃。
 不意にドラゴンが動いた。
 一瞬にしてその巨体が輝いたかと思うと、その後には一人の女性が考助に向かって飛び込んできた。
「お父様・・・・・・!!」
 こんな大きな娘を持った覚えはないんだけどなぁ・・・と、思いつつ考助はされるがままになっていた。
 コウヒとミツキも正体が分かっているだけに、何もしなかった。
「あー・・・えっと、君が新しい仲間ってことでいいのかな?」
「はい! ・・・あっ! 是非名前を付けてください!」
 考助が聞くより先に言われてしまった。
 抱き付かれたまま考助は、しばらくの間うーんと考えた。
 結局良い物が思い浮かばずに、目の前に会った白い髪を見てそのままの名前を付けた。
「じゃあ名前は、ハクで」
 ちなみにドラゴン形態の時の鱗の色も白である。
「ハク・・・ハク・・・ハク・・・」
 何度か口の中で繰り返すが、やがて気に入ったのか、更に首をしめる力が増した。
「お父様、有難う!」
「ハク、そこまでです。そのままでは落ちてしまいます」
 珍しいことにコウヒからの突込みが入った。
 ちなみにミツキは、笑いを堪えるようにお腹を抱えていた。
「きゃあー。ごめんなさい、お父様!」
 管理層に戻る前までには、お父様呼ばわりを直さないとなぁと、薄れそうになる意識の中で考える考助であった。

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 結局管理層に戻るまでに、ハクがお父様と呼ぶのを変えることはできなかった。
 何とか変えようと試みたのだが、「お父様はお父様です!」と言い張って、考助の方が折れたのだ。
 百合之神社を経由して、そこから転移門を使って管理層へと戻った。
 最初は物珍しげに管理層を見ていたハクだったが、たまたま南東の塔の管理区域から出てきたシルヴィアに向かって思いっきり挨拶をかました。
「初めまして! 考助お父様の娘のハクです!」
 それを聞いたシルヴィアは、最初は笑顔で挨拶を返そうとしていたが、その笑顔が一瞬で凍り付いた。
「こここ、コウスケさん、コウスケ様! むむむ、娘って、お父様ってどういう事ですか!!」
 シルヴィアの悲鳴のような声に、それぞれの管理区域にいた者達が集まってきた。
「なんだと!? どういう事だ?」
「だれ? 誰の子供?」
「私じゃないです~」
「わ、私でもないぞ?」
 一気にカオスになった管理層に、考助は内心で頭を抱えた。
「みんな、少し落ち着いて。そもそもこんな大きな娘が本当にいたら、気づかないはずがないよね?」
 考助のそんなフォローもほとんど無意味だった。
「「「「「いや、コウスケ(さん)ならありえる!」」」」」
 全員そろっての答えに、ついにミツキが堪え切れずに爆笑し始めた。
 コウヒでさえ、笑いを堪えるような表情になっていた。
「いや、ないから! それはないから!」

 結局時間をかけて一から説明する羽目になった。
 その間のハクは、自分が巻き起こした騒動などどこ吹く風とばかりに管理層のあちこちを見回っていた。
 一通りの説明を終えて、ようやく全員が納得したようだった。
「しかし、娘というのも間違いではないのではないか?」
 というフローリアの答えに、考助は反論する答えを持てなかった。
 ハクの態度と経緯から、血筋的(肉体的)なつながりは無い、という答えが無意味だと気づかされたのであった。
ハク登場!
・・・本来であれば、登場するはずのなかったメンバーです。
これ以上、塔管理のメンバーは増えません。
・・・はずです。
本来なら立ち消えていたハクですが、諸事情により登場してもらいました。
え? 以前、フローリアで最後だって言っていた? キ、キノセイデスヨ
+注意+
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