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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第14章 塔で妖精を呼び出そう

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閑話 農業生産者たちの話し合い3

「馬鹿な・・・!! どういうことだ!?」
 ケネルセンの高級住宅街にある屋敷の一室で、その声が響き渡った。
 声の主は、神威召喚の際に暗殺者をけしかけたフェルキアだった。
 そのフェルキアは、現在予想外の報告を聞いて、顔色を赤くしていた。
 ケネルセンを事実上支配している六侯達が、揃ってクラウンへの傘下入りすることを希望したという報告を聞いたのだ。
 それはフェルキアにとっては寝耳に水であり、またそんなことは全く予想だにしていなかった。
 フェルキアは、以前考助に対して行ったことは、既に事実として有力者たちに広まっている。
 立場的にかなり苦しいことになっているが、それはフェルキアにとっては挽回できると思っていた。
 だが、クラウンへの傘下入りという事になると話が別になる。
 そこまで考えたフェルキアは、ハッとしたように顔色を変えて、傍にいた部下に指示を出し始めた。
「おい! すぐに財産をまとめろ!! このケネルセンにある物はすぐに別の町に移送できるように・・・」
 その指示は、部屋外の廊下から聞こえて来た騒がしい物音と、部屋のドアを開ける音でかき消された。
「・・・失礼します!! 申し訳ありません。刑吏の者達が来ております!!」
 普段であれば、突然入ってきた者に怒鳴り散らしていただろうが、今回フェルキアはそのようなことをしなかった。
 出来なかったというのが、正しいだろう。
 その報告を聞いて、事態を悟ったのだ。
「・・・・・・遅かったか・・・」
 そもそもフェルキアは、ケネルセンでは異質の食糧生産以外の取引で財をなした一族の出であった。
 初期のころに取引していたのは、ナンセンで作られた農具だった。
 その農具の取引から端を発して、職人自体をこの街に定住させた功績を当時の六侯達に認められて貴族に引き立てられたのだ。
 ケネルセンにおいて、農具の関係はほぼ一手にフェルキアの家に任されていた。
 そのため多少の無茶をしても今まで切り捨てられることが無かったのだ。
 だが、今回の件で六侯がアマミヤの塔の傘下入りを発表した。
 アマミヤの塔は、以前にフェルキアが暗殺を仕掛けた考助が支配している。
 六侯がアマミヤの塔に傘下入りするには、どうしても自分が邪魔になることは、本人であるフェルキアがよくわかっている。
 邪魔になるという事は、自らの関与を否定するためにも、正式に決定する前にフェルキアを排除するのが一番早いのだ。
 叩けば埃が出ることは、自分自身でよくわかっている。
 今まで無茶を通して来たことを掘り返して、ケネルセンからフェルキアを排除することは、六侯にとっては簡単なことだ。
 刑吏の者達が来たという事は、そのための準備が既に整ったという事なのだろう。
 今いる場所から必死に逃げるルートを考えるが、残念ながらそんな都合のいいものは用意されていなかった。
 自分の運命を悟ったフェルキアは、ガクリと椅子に座り込むのであった。

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「・・・やれやれ。間に合ったか」
 そう呟いたのは、六侯の一人であるロイスだった。
 ロイスは、現在の六侯の中でも一番若い。
 前任の父が急逝してしまったために、若くして継ぐことになったのだが、そのことに他の六侯は不満を持っていなかった。
 もともとやり手と前評判が高かったのだ。
 今回のフェルキアの捕縛は、自ら立候補して行った。
 そもそもケネルセンにおける六侯とフェルキアの家である五家の関係は、なかなかに複雑なものがある。
 街の代表を務めているのは、五家の代表の中からだが、実際の支配力は六侯が完全に上回っている。
 ケネルセンが農産物で成り立っている街だからこそ、それを完全に支配している六侯を五家は上回ることが出来ないのだ。
 ケネルセンの入植時から関わっている六侯に対して、五家はその後ケネルセンに多大な功績を残した家になる。
 その五家の内の一つであるフェルキアの家を潰すのは、例え六侯であるロイスにとっても簡単ではないはずだったのだが、以前のフェルキアの行いのおかげで他の四家の協力が得られた。
 フェルキアを捕らえることが出来たのは、完全にフェルキアの自業自得と言えるだろう。

 他の六侯達が今回の役を譲ったのには勿論訳がある。
 六侯の中で一番若いロイスが、今後クラウンとの付き合いが一番長くなる。
 今のうちから功績を上げておいた方が、今後のケネルセンにとってもいいことだと考えたのだ。
 他の六侯達も同じ意見だったようで、反対されることもなくロイスが捕縛を行うことで決まった。
 これを手土産にして、お詫びも込めてクラウンに入れてもらうつもりでいたのだが、必要だったのかどうかは微妙な所だった。
 六侯達合同でクラウンの傘下に入ることを、塔に知らせた後、すぐにフェルキアの捕縛の準備をしはじめたのだが、その前に傘下入りが認められたのだ。
 予想以上の決定の速さに、流石の六侯達も驚いていた。
 勿論ロイスも驚いたのだが。
 その決断の速さが、クラウンを今なお急速に発展させているというのが、よくわかった。
 傘下入りが認められたので、既にフェルキアを手土産にすることは出来なくなったが、放置をしていていいというわけではない。
 むしろ放置をすれば、クラウンの中でのケネルセンの立場は悪くなるだろう。
 六侯のクラウンへの傘下入りは、重要人物へだけに伝えらえて、公式発表はまだされていないのでそれまでには、どうにかしたいと思っていた。
 相手はあのフェルキアなので、捕縛の為の証拠類をそろえるのには、さほど手間はかからなかった。
 刑吏を使って踏み込んだ時には、フェルキアが逃げる算段をしていたのだから、まさしくギリギリだったと言える。
 六侯が傘下入りすることは、あえてフェルキアにも伝えるようにしていた。
 いつもと違う動きをすれば、そこから察知される恐れがあったためだが、それが裏目に出る所だった。
 最終的には捕まえることが出来たので、結果良しという事で結論付けるのであった。

 六侯のクラウン傘下入りは、ケネルセンでは大々的に発表された。
 その話はあっという間に、町中に伝わり受け入れられた。
 六侯の過去からの信頼と言うのももちろんあるのだが、それ以上にケネルセンに置いて六侯に逆らえる者などいないのだ。
 フェルキアの捕縛もこれに拍車をかけている。
 クラウン傘下入りの邪魔になる物は、徹底的に排除されるという事が、そのことで知れ渡ったのだ。
 ケネルセンの雰囲気は、クラウンの傘下に入ることよりも、塔の階層で新しい生産地が増えることに対しての期待の方が大きかった。
 勿論、六侯達が噂を誘導してるのもあるが、元々そう言う機運が高まったというのもあった。
 それだけ最近のケネルセンは、閉塞感まではいかないにしても、これ以上の発展が望めないという雰囲気になっていたのだ。
 六侯の決断は、こうして大多数の住人に受け入れられることになった。

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 ケネルセンの六侯のクラウン傘下入りは、セントラル大陸の住人に衝撃を与えることになった。
 それも当然と言える。
 いわば大陸の食料がクラウンに握られたのも同然という状態になったのだから。
 といっても大多数の人間にとっては、今までと何も変わらないという事に気付いた。
 クラウンの傘下入りしたからと言って、食料の値段が上がるわけでもなく、むしろ輸送コストが転移門を使用する分下がったのだ。
 当然そのあおりは、他の食料生産に影響を与えるのだが、そもそもケネルセンの食料は現地生産より輸送コスト分が高くなっていたためさほど問題は起きなかった。
 強いて言えば、同価格帯で勝負していた現地生産者があおりをくらったのだが、それに関しては今まで消費者の足元を見ていたともいえるので、同情されることは無かった。
 とまあ一般人にとっては、むしろ歓迎された六侯の傘下入りだったが、こと有力者たちになると事情が変わってくる。
 大陸の食糧事情をクラウンに握られたとも言える状態になったのだ。
 輸送の関係上、簡単に他の大陸からの輸入に頼るわけにもいかない。
 結局、今まで以上にクラウンの影響が、セントラル大陸の中で強くなるのを黙って見ていることしかできなかったのである。
フェルキア卿の末路話でした。
最終的には、財産没収、御家とりつぶしという結果になっています。
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