挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第14章 塔で妖精を呼び出そう

179/1240

閑話 農業生産者たちの話し合い2

 話し合いは長時間にわたって続けられた。
 無理もないだろう。
 大陸唯一の大生産地帯として発展してきたケネルセンは、基本的に攻められるという事が無かった。
 理由は単純で、大陸の他の場所はケネルセンほどの広い土地を確保できる場所が無かったためだ。
 だが、ここにきてアマミヤの塔という存在が浮上してきたのだ。
 アマミヤの塔の階層について、視察をしたことがある六侯の一人が会議の最中に言った一言がすべてを物語っていた。
「あそこを本格的に開拓されたら、間違いなくここを超えるだろうな」
 勿論町がある第五層の事だけを指して言っているわけではない。
 とにかく自分がまず動くことが大事と公言しているその六侯の一人は、自身の足で第五層を確認して、更に第四層の視察をしていたのだ。
 ある程度の腕がある冒険者にとっては、美味しくない第四層でも、生産者たちにとっては別になる。
 なにしろいろんな意味で天敵であるモンスターが、出現しないという事なのだから。
 そういったことをすべて含めて、先ほどの言葉になるのだ。

 話し合いの方向性は大きく二つに分かれていた。
 一つは、個人生産者や個人商会のケネルセンからの離反を黙って見逃し、ケネルセンはこのまま独自の路線を貫くこと。
 もう一つは、六侯ごとケネルセンがアマミヤの塔の傘下に入ってしまうという事だ。
 離反を強引にでも止めて、完全に敵対するという意見は出なかった。
 ケネルセンにとっての武器は、武力ではなく生産品だ。
 その生産品自体は、広い土地という武器があるからこそ成り立っている。
 だが、その同じ武器をアマミヤの塔も抱えているのだ。
 しかも、ケネルセンと違って、これから広大な土地を開拓できるほどの広さがある。
 ケネルセンも土地を広げればいいという話はあるのだが、そう簡単にはいかない。
 それこそ過去の六侯達が何代にもわたって、新しい土地を開拓しようとしてきたのだが、モンスターによって阻まれてきた。
 実は五十年以上ケネルセンの土地は広がっていない。
 最後に土地を確保できた時も、期待したほどの広さではなかった。
 それでもその時にとっては、貴重な土地になったのだが。
 六侯達がアマミヤの塔へ出向いて、土地を使わせてくれと申し出ても簡単にはいかないだろう。
 というよりも、そもそもそんな申し出を受けてもらえるとは欠片も考えていない。
 それ故に、先の二つ目の意見が出て来たのだ。
 長い間六侯としてケネルセンの生産を支え続けて来たという誇りと自負は、当然六人とも持っている。
 だが、現状としてケネルセンがこれ以上の発展を続けることが難しいという事も、厳しい現実としてある。
 その中で降ってわいたアマミヤの塔の階層。
 六侯に取っては、アマミヤの塔の階層は、喉から手が出るほど欲しい場所なのだ。
 財力だけで手に入れるのなら話は簡単だったのだが、残念ながらそう言うわけにはいかない。
 塔側もそれは分かっているので、当然首を縦に振るわけがなかった。

「・・・・・・そろそろ意見は出尽くしましたかな?」
 フーリクがその場の話し合いを締めるようにそう言った。
 全員が顔を見合わせて頷いた。
 確かに十分すぎるほど意見は出されていた。
 後は、結論を出すだけだった。
 だが、その前にフーリクが目を閉じて言葉を発した。
「・・・一つだけ最後に言わせてもらっていいだろうか?」
 目を開けたフーリクが、残りの全員が自分を見てくるのを確認してから続ける。
「そもそも我々六侯が集まった元の理念を、今思い出すべきなのかもしれないと思ったんだがね」
 自分でも正しいのかは分からん、とフーリクは自嘲気味に苦笑した。
 その言葉に、全員が一瞬虚を突かれたような顔をして、同じように苦笑した。
 その後は、全員が決意に満ちた顔になっていた。
「・・・ふむ。まあ意見を聞かなくても皆が分かっているような気もするが・・・一応規則だから決を採らせてもらう」
 議長であるフーリクが、採決を取り始めたが、結局決は一回とるだけで決まってしまった。
 六侯ごとクラウンの傘下に入ることが、全員一致で決まったのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 クラウン商業部門長のシュミットは、代官のアレクから書類を渡されてしばらくの間呆然としてしまった。
 その様子を見て、アレクも苦笑している。
 無理もないだろう。先ほどまでアレクも同じような状態だったのだ。
 その書類は、ケネルセンからで六侯のすべての署名が入っている。
 内容は単純で、六侯全員がクラウンの傘下に入りたいという要望書だった。
 しばらくして、シュミットが復活してきた。
「・・・・・・罠の可能性はいかかでしょうか?」
 シュミットの発言は、神威召喚をした際に考助にちょっかいを掛けて来たフェルキア卿の事が念頭にある。
 元々フェルキアはこのケネルセンの所属なのだ。
 とは言え、アレクにしてみれば、そのことはさほど心配していなかった。
 何故なら明らかにフェルキア卿よりも六侯達の方が立場が上だからだ。
 いざとなれば六侯の立場を利用して、追放も可能だろうという打算もある。
「無い・・・とは言えないが、低いだろうな。あるとすれば、我々が隙を見せれば食われてしまうというくらいだろうか」
 その程度は、組織を運営していく以上、いつでも起こり得る事態だ。
 シュミットは、考助に気に入られているという自覚は勿論あるが、それのおかげで今の地位が盤石だという勘違いはしていない。
「・・・理由を聞いても?」
「それこそ、その書類に書いてある。余所者である私よりも、そなたの方が納得できるのでは?」
 そう言われたシュミットは、もう一度書類に目を通した。
 余りにも自然に、というよりも定型文のように六侯すべての書面に書かれていたためスルーしていたのだ。
 書面には、傘下に入る事になった理由がそれぞれ書かれているのだが、全員に「我々の理念に基づいて」という文が入っていた。
 普通であれば、単なる飾りとなるのだが、ケネルセンの六侯となれば話が別だった。
 セントラル大陸の商人であれば、一度でもあれば聞いたことがあるケネルセンの六侯の理念。
 ある意味では、セントラル大陸のすべての商人の理念ともなりうるそれは、六侯達全員が傘下入りを希望した理由を後押ししていた。
 その理念とは「大陸全ての食料を大陸内だけで賄う」この一つだけだった。
 残念ながらその理念は、現在果たされていなかったが、長い歴史をもつ六侯はいまだにその理念を捨てていなかったのだ。
 むしろそのために、この決断をしたのだとシュミットは身震いをした。
「・・・・・・とんでもないですね」
「ああ。多少の仕掛けはしたが、まさかこうも上手くいくとは思わなかった。というより、上手く行き過ぎたな。奴らの理念を甘く見過ぎてた」
「私も同感ですよ。単なる理念、目標と考えていました。・・・長年の執念といったところでしょうか?」
「確かにこの塔の階層を上手く使えば、現実味を帯びるからな」
「・・・ええ」
「しかし・・・四大陸の奴らもこれで安穏とはしていられなくなるかな?」
 セントラル大陸の周辺の四大陸は、食料という命に関わる物を握っていただけに、ある強い影響力をいまだに持っていた。
 だが、それが改善されるとなると、黙ってみているとは限らないのだ。
「それこそ六侯達の開発力次第ではないでしょうか?」
 流石に現状の輸入バランスをすぐに崩すほど生産量を増やすことが出来るとは思えない。
 だが、将来的にはあり得ることとなるかも知れないのだ。
「・・・・・・いかんな。あまり先走り過ぎても駄目だろう」
「そうですね」
 アレクとシュミットは顔を見合わせて苦笑してしまった。
「それよりも、これに関しては私だけでは重すぎます。すぐにワーヒド様に確認を取ったほうがいいでしょう。場合によっては、コウスケ様の採決も必要になるかと・・・」
「ああ、そうだろうな」
 それだけ六侯のクラウン傘下入りは、大事になりえるのだ。
 どう考えても、シュミットだけの権限で通していい案件ではない。
 ついでに土地も絡むことになるので、アレクの行政の分野も関わってくる。
 事が事だけに、上の決断が必要になるのは明らかだった。

 結局、この話はワーヒドだけではとどまらず、考助まで行くことになる。
 考助は全員の意見を聞いた結果、許可を出すことになり数日のうちに塔への六侯の傘下入りが公式に発表されることになった。
 六侯の傘下入りという事は、即ちケネルセンの事実上の塔への傘下入りという事になり、そのインパクトは大陸中に広がることになるのだった。
この話を書いて思ったんですが・・・本編入りしたほうがよかったでしょうか?w

アレクのもとに六候たちの書類が届いたのは、クラウンが東西南北へ支部を作ると発表する前です。
タイミング的には絶妙だったのかもしれません。どちらにとっても。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ