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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第14章 塔で妖精を呼び出そう

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閑話 農業生産者たちの話し合い

 ケネルセンの街は肥沃な土地に囲まれた農業の町である。
 ここで作られた農産物の多くが輸出されて大陸中に出回っている。
 そもそもセントラル大陸では、モンスターの数が多いため土地を確保するのが非常に難しい。
 そのためほとんどの都市が、穀物などは輸入に頼っている。
 その穀物の生産を一手に引き受けているのが、ケネルセンという事になる。
 そう言う意味では、ケネルセンの農業地帯は、セントラル大陸の食糧事情を一手に引き受けているとも言えた。
 勿論食品には穀物以外もある上に、モンスターから肉類も出来るために、ケネルセンがつぶれたら即セントラル大陸がダメになるという事はないが、それでもかなり重要な存在であることは間違いない。
 セントラル大陸の四大都市の穀物のほとんどが、ケネルセンから海路を使用しての他大陸からの輸入に頼っていることを考えれば、いかに重要かわかるだろう。
 余談であるが、ケネルセンと真反対にあるミクセンが位置的な問題で穀物が高騰しそうでしないのは、寄付と称して現金の代わりに穀物が捧げられているためである。
 その教会に貯まっている穀物を商人たちが買取り、他の都市と同じような値段で捌いている。
 その恩恵を周辺の町も受け取り、穀物がむやみに高くなるといったことが起こっていないのだ。
 セントラル大陸の食糧庫、それがケネルセンの評価だった。
 その評価が、変わりそうなことに気付いたのは、やはりケネルセンの者達であった。

「これは・・・してやられたな」
 手にした書類を見て、フーリクはそう呟いた。
 書類の中には、一番最新の食物の取引情報が記されている。
 ケネルセンにとって穀物の取引情報は、町の命と言っていいので、穀物の取引は厳格に管理されている。
 そのため比較的正確な情報が手に入れることが出来る。
 その書類の情報を見て、部下がいち早く知らせて来たのだ。
 だがそれはもちろんいい意味ではなく悪い意味だった。
「・・・すぐに六侯会議を開きたいと打診してくれ。早ければ早いほどいい」
 書類を持ってきた部下にそう伝えると、フーリクはさらに情報を精査すべく書類に目を落とした。

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 ケネルセンの経済と政治を牛耳っているのが六侯という存在だ。
 元はこのケネルセンを開拓した者達の代表が六人いたために決められている。
 完全に生産物の棲み分けが出来ているために、六侯という存在で争いが起こることはほとんどない。
 というより、過去に生産物を被らせて争いがおこったことがあるのだが、その時に外から介入されそうになったことがあり、それ以来六侯同士で生産物を被らせることは厳禁になっている。
 勿論、長い歴史上新しい作物も出てきているのだが、その辺は話合いという名の調整によってどこで生産するのかが決められているのだ。
 それ故に、六侯会議で決められたことが、ケネルセンの将来を決めていると言っても過言ではない。
 その六候会議が、フーリクの招集によって開かれていた。
「忙しいだろうに集まってもらって、すまないな」
 全くすまなそうな表情になっていないフーリクが、そう言いだした。
 最初から決められて開くのではなく、緊急の場合には六侯会議を招集した者が、会議の議長を務めるというのが、長い歴史の間の取り決めだった。
 ただし緊急の場合は、特に参加しなければいけないという義務はない。
 それぞれの判断で欠席することが可能だった。
 それ故に、欠けた人数で開催されることは珍しくはない。というか、ほとんど全員が揃うことは無い。
 だが、今回は全員が揃っている。
 それだけフーリクが会議を開いた理由が、全員にとっての重大事案という事になる。
「・・・全員がこの場に揃っている。それが答えだろうな」
 六侯の一人がそう言ってきた。
 他の侯達も頷いている。
「そうか。話が早くて助かる」
 六侯は、こと穀物などの生産物に関しては、嗅覚が鋭い者達が揃っている。
 これも長い年月ケネルセンを支配してきた理由の一つなのだろう。
「まあ、こんなものを見せられてはね。・・・それで、皆も情報の整理は終わっているのだろう?」
「当然ね」
 そう言ったのは六侯唯一の女性であった。
 唯一のとはいっても、現在たまたま女性が一人と言うだけであって、過去には六侯全員が女性だったこともある。
 六侯自体は家で選ばれているのだが、長子がなるわけではなく完全に実力主義になっている。
 まあその家に生まれない限りは、六侯にはなれないのだが。

「私のところに関しては、開催を打診した時に伝えたとおりだ。その後で精査もしたがやはり大きな違いはなかった」
「うちも似たような状況だな」
「私のところもね」
 フーリクの言葉を皮切りに、他の者達が次々に頷いてきた。
「・・・そうか。完全に狙い撃ちされたか。意図してなのか、それとも単に偶然なのかは微妙な所だがな」
「あそこのシュミットは、元は行商人という話だ。もともとそちらの繋がりが強かったと思われる」
 今彼らが問題にしているのは、アマミヤの塔のクラウンの商業部門がケネルセンから購入している穀物の事だった。
 通常であれば、輸出が増えるのだからケネルセンにとっては、喜ばしいことだ。
 だが単純に喜べない事情があった。
 現在の作物の取引量の約一割が、クラウンに買い取られていた。
 それだけなら特に問題はない。いや、それはそれでかなりの量になるのだが、取引自体はケネルセンにも利益になるので問題ではない。
 問題があるのは、その中身だった。
 その一割のほとんどが個人生産者や個人商会を通しての取引だったのだ。
 勿論六侯の支配下にあるところからも買取を行っているが、それは微々たる量だったのだ。
 そもそもシュミットが行商人をしていた頃、このケネルセンから買い付けを行っていたのは、既に調べられていた。
 その相手が先ほどの個人生産者や個人商会を通していたことも分かっている。
 一商人が、大手の商会から仕入れを行うのはほとんどないため、これは当然の事と言えた。
 だが、今回はそれが仇になったといえる。
 今やクラウンは、周りから見れば、ただ一つの商会とするには大きくなりすぎている。
 小さな町一つ分の商業をほぼ一手に引き受けているのだから、ある意味当然だった。
 その町の商業のほぼすべてを握っているクラウンが行う取引も当然莫大な物になる。
 ケネルセンの取引の一割を占めていることからも、それは分かっていることだ。
 問題は、取引を行っているのが個人生産者や個人商会であるということだ。
 それは要するに、いつでも引き抜きを行えるという事を意味していた。
 それこそ、クラウンの冒険者部門が、冒険者たちに行ったようにだ。
「やはり問題か?」
 六侯の一人がそう疑問を口にしたが、確認するためのものであり、そしてそれはこの場にいる全員の共通の認識だとわかった。
「だが、どうやって流出を止める?」
 この場で六侯達が問題にしているのは、クラウンが押さえた個人生産者達だ。
 早い話が生産者たちを塔に招き入れて、塔の中で生産を行われてしまうとケネルセンの優位性がなくなってしまう可能性があるのだ。
 塔の中で生産など行えるわけがないと、妄言をいう者はこの中にはいない。
 少なからず視察をしていて、モンスターのレベルからも生産がしやすい環境であることは分かっているのだ。
 そこへ個人生産者達がその技術を持って生産を行えば、どうなるのかは今までの経験上、六侯達にはよくわかっている。
 そしてそれは、ケネルセンにとっては脅威以外の何物でもなかった。
「流出は・・・止められないでしょう。むしろ止めた時の反動の方が怖い」
 一人の言った結論に、全員がため息を吐いた。
 全員がその言葉に同意するしかなかったからだ。
 偶然か必然か。クラウンが行っている商業活動が、ケネルセンと言う町を揺るがす事態になっていることに、気付いている者達の会議はまだ続くのであった。
い・・・一話で終わらせるはずだったのに・・・。
もう少し続きます。
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