挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第14章 塔で妖精を呼び出そう

177/1254

10話 遠慮するワンリ

 ワンリと一緒に第四十八層へと向かったが、ここでは熱烈歓迎を受けなかった。
 理由は単純でワンリが傍にいたからだった。
 ワンリが一言「いいわよ」と言うと、召喚獣たちが群がってきた。
 人型であっても、妖狐達には彼女が九尾狐であると分かっているらしい。
 ワンリに遠慮していたために、考助に群がるのを止めていたのだが、彼女が許可したために一斉に群がってきたのだ。
 そのくせに、考助が「止めて」と言っても群がってくるのを止めないのは、どういう事なんだろうと思う考助であった。

 適当に妖狐達と戯れた後、設置した<水の妖精石>の所へと向かった。
「わあ。精霊の力がすごい」
 初めて妖精石を見たワンリが、考助の横でそう言ってきた。
 他の妖精石と同じように、<水の妖精石>も精霊の力があふれていた。
 ちなみに<水の妖精石>なので、わざと神水の泉の傍に置いてある。
 神水の傍に置く必要があるかどうかは分からないが、場所を指定するときに指定できたので置くことにしたのだ。
「そうか。ワンリも精霊の力が分かるのか」
「うん。神様の加護があるせいだと思う」
 ワンリには<精霊神の加護>が付いていたことを言われて思い出した。
「・・・ん? いや加護がないコレットだって力の事は分かっているから、加護は関係ないと思うよ?」
「あれ? そうなのかな?」
「そう思うけど? 加護は別の効果があると思うな。今度交神して聞いてみたら?」
 ワンリには、以前に考助が創った交神具を渡してある。
 流石に狩りをしているようなときは、持ち歩かずにユリに渡してあるようだが。
「うん。そうしてみる」
 交神具が無かったときは、普通に神託という形でスピカとやり取りをしていた。
 だが、考助の交神具を渡してからはきちんと言葉でやり取りをするようになって、分かり易くなったと喜んでいた。
 このことで考助が、スピカから感謝の言葉を贈られたのはまた別の話である。
 それはともかく、今は<水の妖精石>のことだ。
 一応神力を送るように触れてみたが、特に変化は起きなかった。
 あわよくば、と思ったのだが、流石にそんな簡単にはいかないという事だろう。
「ま、流石にそうそう上手くいくわけないか」
 とりあえず、初っ端に神力を送ろうとしてもうまくいかないという事が分かっただけでも十分だろう。
 あとは<地の妖精石>と同じように、様子を見ていくしかない。
 これ以上はここにいてもしょうがないので、管理層へと戻ることにした。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ワンリと共に管理層へと戻ったのだが、ちょうど南東の塔から戻ってきていたシルヴィアがいた。
「あ、ワンリ。珍しいですわね」
「・・・っぷ」
 シルヴィアがそう言って、ワンリを抱きしめた。
 ワンリが管理層に中々顔を出さないのは、これがあるからかもしれないなあ、と漠然と考えた考助だった。
 とにかく女性陣は、ワンリをかわいがっているのだ。
 考助にしてみれば、いろんな意味で眼福なので止めたりはしないのだが。
 本気でワンリが嫌がる様子を見せれば、勿論すぐに止めるのだが。
「もっとこっちに顔を出してもいいのに・・・どうして来ませんの?」
 シルヴィアの言葉に、ワンリは困ったような表情になった。
「ええと・・・何となく、来づらくて・・・」
「そうですの? 皆歓迎すると思うんですが・・・?」
 歓迎どころかそれ以上だったりするのだが、逆にそれが二の足を踏む結果になっている。
 ワンリの表情からそれを察した考助が、何となく助け舟を出した。
「歓迎しすぎの気もするけどね」
「実際に可愛いのですから仕方ありませんよ~」
 ピーチが話に加わってきた。
 ちなみに、いつの間にかワンリの頭を撫でていた。
「ワンリにしてみれば、一応狐達の頭をやっているのに、ここに来たらマスコット扱いで戸惑っているんじゃないかな?」
 考助とてワンリからそう言う話を聞いたわけではない。
 あくまで推測でそう話しているだけだ。
 ただ、傍で話を聞いているワンリは、考助の言葉を否定はしていないので、ある程度は当たっているのだろう。
「・・・そうなんですか~?」
 ピーチがワンリに向かって首を傾げた。
 ワンリもワンリで、しばらくの間首を傾げていたが、やがてコクンと頷いた。
「たぶん、そうなのかもしれません」
「あ、ほら。その言葉遣いもそうだ。僕と話す時は、結構砕けているのに、ここに来ると距離を作るだろ?」
「え~。そうなの?」
「知りませんでしたわ」
 ピーチとシルヴィアが若干ショックを受けたような表情になっていた。
「ご、ごめんなさい・・・?」
「ああ、待って待って。別にワンリを責めているわけではないのよ」
 いきなりコレットが話に加わってきた。
 どこから話を聞いていたのか分からないが、ある程度のところからは聞いていたらしい。
「・・・そうなんですか?」
「そうよ。私達としては、もっとワンリと仲良くなりたいんだけどね」
「無理やり神社のところに押し掛けても、逆に迷惑でしょう?」
「私達としては、ワンリがここに来るのを待つしかないんですよね~」
 三人が口々に言うのを、ワンリはじっと聞いていた。
 そのワンリの頭に、考助がポンと手を乗せた。
「まあ、別に無理に来る必要はないけどね。できれば顔を見せてくれた方が嬉しいかな」
「・・・・・・はい」
 実は、ワンリよりナナの方がこの管理層に来ている回数が多かったりする。
 ワンリは、独自に狩りをしてたりするのだが、ナナは仲間を増やしたりするために、わざわざ自分から管理層へ来たりしている。
 完全に自分のすべきことを分かっているのだ。
 もっともワンリも塔の管理については分かっているが、そもそも狐は狼ほど群れて狩りをしないので、なかなか仲間を増やすという発想にならないのだ。

 頭を撫でられて若干嬉しそうな表情をしているワンリのところに、ドンと何かがぶつかってきた。
「キャッ・・・!?」
 思わず倒れ込んだが、そのぶつかってきた物は、気にせずワンリにのしかかりペロペロと顔を舐め始めた。
「ちょ・・・ちょっと、ナナ。くすぐったいよー」
 ワンリにぶつかってきたのは、小型化しているナナだった。
「あれ、ナナ。今日は狼を召喚してほしくて来たのか?」
 ワンリと違って結構頻繁に来ているナナだが、第八十一層が安定して狩りを行えるようになってからは、単純に考助に会うためだけに来ていたりする。
 召喚してほしいときは、自分から制御盤のある部屋まで強引に引っ張っていくので、すぐわかる。
 今日は単に遊びに来ただけのようだった。
 一心不乱にワンリをぺろぺろと舐めていた。
「ナナ、ちょっと待って・・・わかったから」
 先程まで何となく沈み込んできたワンリだったが、ナナに懐かれてその気分が上昇してきていたらしい。
 正直微妙な雰囲気になっていたのだが、ナナのおかげで救われた感じになっている。
 ようやくナナが離れてから、ワンリは立ち上がった。
 今度はそのワンリの手をぺろぺろと一心不乱に舐めていた。
「・・・ナナ、有難う」
 ワンリがそう言ってナナを頭を撫でる。
 ナナは不思議そうに首を傾げていたが、やがて嬉しそうに尻尾を振り始めた。
 その様子を見て、考助も内心でホッとしていた。
 周りを見ると皆も同じような心境だったのだろう。一様に笑顔を浮かべていた。

 結局今回の件を皮切りに、ワンリも徐々に管理層へと来るようになった。
 ワンリにしても別に可愛がられるのが、いやというわけではなく、単に戸惑っていただけと分かったのだ。
 さらに、狼のテリトリーには出来るだけ近づかないようにしているので、管理層に来ればナナに会えるというのが分かったのも大きいのだろう。
 それに合わせて、他のメンバーたちとも打ち解けていくのを感じた考助も一安心するのであった。
コミュニケーション能力が高いナナでしたw
今回を機に、ナナもワンリも頻繁に管理層に出てくるように・・・なるといいですねw
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ