挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

閑章 集められた聖職者たち

155/1174

4話 一方的な要求

「おい。その神具は、どうするつもりだ?」
 ゼットの言葉に、シルヴィアは首を傾げた。
「どう、とは?」
「神託を得られる神具を一個人が持っていていいはずがないだろう? だからどうするのかと聞いたのだが?」
 そんなことも分からないのかと言わんばかりに、ゼットが言い放った。
「何故個人で持っていては、いけないのですか?」
「神との直接対話が出来る神具だぞ!? 神殿で管理するのが当然だろう?」
 この場で発言しているのは、ゼットだけだったが、他のメンバーも同じようなことを考えていることは明らかだった。
 もちろんピーチは除いて、だが。
「なぜ、当然なのかも聞きたいところですが・・・使えない物を後生大事に飾っておくのですか?」
「・・・・・・何?」
「この神具は、わたし専用に作ってくださったものですわ。他の者が使おうとしても使えませんわよ?」
 シルヴィアは、あえて誰が創ったのかは言わなかったのだが、それが誰であるのかは、すぐに伝わったようだった。
「・・・あの方が?」
 そう言ったのは、直接考助が神具を作るところを見たことがあるローレルだった。
「他にこんなものを作れる方がいれば、既に教会が把握しているのではありませんか?」
「・・・・・・」
 シルヴィアの言う通りだ。
 そもそも考助が最初にこの神殿で作った神具をどうにかしようとして、コウヒの正体が知られたのだった。
 少なくともローレルは、その考助以外にそう言った神具を作れる者がいるとは、聞いたことが無かった。
「そもそもあの方は、交神具に関しては、公開する予定などないと仰っていましたわ。その意を私が違えるはずがありませんわ」
「変な輩に渡して、悪用されたらたまったもんじゃないからね~」
 ピーチも絶妙なタイミングで、相槌を入れて来た。
 神と交信できる神具などは、持っているだけでもいかようにも使えるのだ。
 例えば、実際には交神などしていないのに、持っている交神具を使って交神してこんなことを言っていた、などと喧伝するなどだ。
 ましてや、それを神殿の威光を借りて行えば、どういう結果をもたらすのか、火を見るよりも明らかだ。

 神具による神の<神託>を直接得るという事態になったのだが、大陸組に関しては、本来の目的を達してはいなかった。
 昨日に一度拒絶されているのだが、一度の拒絶で諦めたら交渉など成り立たない。
 今日こそは多少の譲歩を引き出そうと、口を開こうとした矢先のこと。
 ピーチが珍しく口火を切った。
「では~。私達の用事は全て終わりましたので、あなた方が仰るように、塔に引きこもることにしますね」
 そういって、すぐにも席を立ちそうな構えになる。
「ま、待ちなさい」
「まだ何か~?」
 ピーチがめんどくさげに、引き留めたカリンの方を見た。
 勿論この態度はわざとなのだが、ピーチを知らない者達は、それに気づくことは無かった。
「まだも何も、塔の神殿について話し合っていません!」
「それは昨日もお話しした通りです~。こちらとしては、貴方達を受け入れる意味がありません」
 きっぱりと断る姿勢を見せるピーチだった。
「で、ですが、それでは住人達に、面目が立たないはずです」
「そうですか~? 主神本人がそれを望んでると言えば、納得すると思いますが?」
「勿論巡礼者として受け入れるつもりはありますが、定住者として神職にある者を受け入れるつもりは、今のところありませんわ」
 巡礼者と言うのは、神職にある者が各地の街にある神殿をめぐる修行の旅に出ることを言う。
 街道での魔物の襲撃が多いセントラル大陸では、さほど行われていないが、他の比較的モンスターの出現が低い街道を使って行われている。
 一つの街の神殿に滞在するのは、長くても一か月程度。町の者達には、巡礼者は巡礼者として扱われる。
 町の神殿にいる聖職者とは、また違った扱いになる。
 あくまでも町の人間にとっては、巡礼者は「お客さん」なのである。
 神殿で祀るべき本人(神?)が、定住する聖職者はいらないと言っている以上、無理に受け入れを要請するわけにはいかない。
 無理やりこの交渉で入れたところで、祀るべき神そのものの不興を買ってしまっては、本末転倒なのだ。
「・・・どうあっても受け入れるつもりはない、と?」
「少なくとも今のところは、そう聞いていますね~。昨日も言いましたが、今後は分かりませんが」
「まあ今は、あの方も色々忙しくて、神殿に関しては当分先になりそうですわ」
 シルヴィアは、苦笑しつつそう言った。
 今現在の考助は、どう考えても他の塔攻略に意識が傾いている。
 第五層の神殿のことなど、二の次になっていたりするのだ。
 別にそれは、考助に限ったことではなく、この場にいるシルヴィアやピーチも同様だった。
 二人にしてみれば、用事は済ませたので、さっさと塔に戻りたいと思っている。

 流石にその雰囲気を感じ取ったのだろう。
 シュリは、これ以上の交渉は無意味、あるいは悪化させると判断した。
 別に交渉しているのは、シルヴィアやピーチだけではない。後ろには、つい昨日認められた現人神が控えているのだ。
「では、私としては残念ですが、これ以上の進展はないということでしょうか?」
「そうですね~。こちらの要件は済みましたので、あとは立ち去るだけでしょうか」
 ピーチがそう言い、さっさと立ち上がった。
 それを見たシルヴィアも同じように立ち上がった。
 ピーチがもういいと判断したのなら、本当にもういいのだろうと思ったのだ。
 そのまま二人は、部屋の出口に向かったのだが、不思議なことに引き留める者はいなかった。
 背を向けていた二人は、睨みつけるような視線を向けられている事には、最後まで気づかなかった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「まあ、ものの見事に目論見が外されたわね」
 二人を見送ったシュリが、楽しそうにそう言った。
 他の大陸組の三人のうち二人は、暗い表情をして、残り一人は睨みつけるようにシュリを見た。
「あら。随分と楽しそうですね」
 そう言ったのはローレルだった。
「勿論です。まあ、負け惜しみも入っています。でもここまで見事だと楽しくなりませんか?」
「・・・諦めるのか?」
 そう言ったのは、睨みつけていたゼットだった。
「それこそまさかよ。少なくとも巡礼者としては訪れてもいいと許可はもらったのだから、ゆっくり見学させてもらうわ」
 シュリの言葉に、なるほどと言った感じで、カリンとタマルも頷いていた。
 折角の機会をもらえたのだから、三大神の加護を与えられて、現人神が主神となっている神殿をじっくりと見させてもらおうという魂胆だ。
 そもそもそんな貴重な神殿を見る機会は、そうそう訪れないだろう。
「それで? ミクセンの神殿としては、どうされるのですか?」
「そうねえ・・・。・・・いっそのこと彼の神を信仰の対象として祀りましょうか」
 半分冗談で、半分本気のローレルだった。
 そもそもステータス付のクラウンカードを開発したリラアマミヤは、既にセントラル大陸の冒険者たちの間では知らない者がいない程の勢力を誇っていた。
 その勢いは、他大陸にさえ行きそうだった。
 現状クラウンカードが塔の本部でしか作れないために、爆発的に伸びるということは無いようだが、衰えは知らずにメンバー数は増え続けている。
 ローレルは、クラウンカードの基礎を作ったのがコウスケだとは知らないが、冒険者達の間で現人神が信仰されることになってもおかしくはないと思っていた。
 何せアマミヤの塔という塔で実績を積み上げている上に、既に他の二つの塔も攻略したという情報が入ってきている。
 既に、他の四つの塔も時間の問題だと噂されてた。
 それを考えれば、そもそも冒険者の比率が多いセントラル大陸では、現人神が多数の信者を抱えることになることもあり得ると思っていた。
 当然その信仰の中心となるのは、アマミヤの塔のあの神殿になるのだろう。
 そこまで考えたローレルは、少し先読みしすぎかと苦笑したのであった。
なんか中途半端な気もしますが、これで「閑話 集められた聖職者たち」のメインの話は終わりです。あとは、ちょっとした話を付け足してもう少し続きます。
・・・2話ぐらいで終わるつもりがここまで伸びました。
なんでだろう?w

※7/2 22:30頃まで、「閑話 集められた聖職者たち」は終わりと書いていましたが、作者のミスです。もう少し続きます。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ