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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

閑章 集められた聖職者たち

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3話 神の言葉

既に150話過ぎていたのに、今更ながらに気付いた作者ですw
これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。
 翌日の会談は、予定より遅れて始まった。
 教会側が、準備に時間がかかるためとシルヴィアとピーチに伝えて来たのだ。
 理由は聞かなくても分かっていたので、二人は了承した。
 特にシルヴィアは、巫女と言うだけでなく教会に属していたこともある。
 昨日の神託がどういう影響を与えるのか、想像するに難くない。
 むしろよくこんな短時間で、開くことを決めたと感心したくらいだった。
 シルヴィアとしては、今回の会談の目的は後二つで終わる。
 それさえ達成できれば、さっさとアマミヤの塔へと戻って管理の続きをしたいと思っていた。
 本当なら、任せられたばかりの塔の管理から離れたくなかったのだが、こればかりはどうしようもない。
 そもそも教会側がまともに話を聞くのが、自分しかいないのだから。
 そんなシルヴィアを教会の聖職者たちが、若干苦虫を噛み潰したような表情で見ていた。
 当然、昨日の神託の内容を聞いたからこその表情である。

「その様子ですと、きちんと曲解せずに神託の内容が伝わったようですわね」
 シルヴィアがそう切り出したことで、ますますその場の雰囲気が固くなった。
 隣に座っているピーチだけが、いつものようにニコニコとしていた。
 教会側の一人が、何かを言おうとしたのを制して、さらにシルヴィアが続けた。
「先に申しておきますが、私はあの方の<巫女>として正式に認められました。今後はそのつもりで対応してください」
「「「「「なっ!?」」」」」
 ほぼ全員が、驚きの声を上げた。
 残りは、声さえあげることが出来なかった。
 その様子を見て、ピーチがわずかに首を傾げた。
「そんなに驚くことかな~? 塔でずっと一緒にいるのに、認められない方がおかしいと思わないの?」
「仕方ありませんわ。他の神々は、あの方のように常に現世にいるわけではありませんから」
「ん~? ひょっとして、<巫女>に認められるって相当なこと?」
「まあ、そうですわ。といっても現人神であるあの方の<巫女>がどういう扱いになるかはわかりませんが」
 そもそも<巫女>と言うのは、神域からめったにこの世界に顕現できない神々の代弁者としての扱いになっている。
 だからこそ特別扱いされているのであり、常に肉体をもってこの世界にいる考助の<巫女>がどういう扱いになるかは、厳密には決まっていない。
 それもこれも現人神という存在が、歴史上初めて現れたためだ。
 人でありながら神という立場の現人神とはいえ、神は神である。
 その<巫女>という立場の価値を下げることは、教会側には出来ないだろう。
「・・・・・・そのようなことを我々が、認めると?」
「おかしなことを言いますわ。そもそも<巫女>であるかどうかは、神自身が決めること。なぜ教会の許可が必要なのですか?」
「昨日の神託には、そのような事柄は無かったはずだ」
「神託には無かったのだから、シルヴィアの言葉は嘘であるということですか~。なんというか、短絡的ですねぇ」
 呆れたように、ピーチがため息を吐いた。
 分かり易いピーチの挑発だったが、さすがにそれに乗せられる者はいなかった。
 ピーチとしても期待していたわけではない。
「私は聖職者ではないですから、さほど神に精通しているわけではありませんが、自身の言葉を無視された神ってどう思うんでしょうね~?」
「いい思いをしないのは確かですわ。だからこそ、神罰という物があるのですし」
「その割には~、神の言葉を無視して言いたい放題やっている気がしますが?」
「仕方ありませんわ。本来であれば、神々は簡単にこの世界に力を発現することなど出来ないのですわ」
「ああ~。親の目を盗んで悪戯をする子供みたいなものですか」
「いい例えですわ」
 目の前にいる聖職者たちの前で、二人は言いたい放題に言っていた。
 さすがに、ここまで言われて黙っていられない者がいた。
「・・・おい。随分と言いたい放題言ってくれるじゃないか?」
 ゼットであった。
「? 何か間違ったこと言ってましたか~?」
「神託を、自分たちの都合のいいように解釈して、権力を増やしている組織にはピッタリな言い回しだと思いますが?」
 アマミヤの塔の神殿への派遣に関しての話し合いが、いつの間にか教会のあり方を追求する場に変わっていた。
「いい加減に・・・!」
「ゼット神官、おやめなさい!」
 ローレルの制止に、激高しかかったゼットが歯ぎしりをして、二人を睨みつけた。
 シルヴィアとピーチが、わざと挑発するような行動に出ていることは、ローレルも察していた。
 だからこそゼットを止めたのだ。
「それから二人も根拠のないことで、教会を貶めるのは止めた方がいいでしょう」
 ローレルの言葉に、シルヴィアとピーチの二人は顔を見合わせて笑い出した。
「な・・・何が可笑しいのですか?」
「いえ、申し訳ありませんでした。ですが、思った通りの返答で、つい笑ってしまいました。お許しください」
 ローレルはシルヴィアのその言葉で、自身の反応も織り込み済みだということに気付いた。
 だが、二人がなぜこんな態度に出ているのかが分からない。
「・・・どういう事?」
「実は、私達がこの場に来るにあたって、一つ依頼されていたことがありまして。後は、実際に本人に話してもらった方がいいですわ」
 シルヴィアがそう言って、懐から小さな箱のような物を取り出した。
 考助作の交神具だ。
 それは、シルヴィアや考助が普段使っているような交神具ではない。
 多数の相手にも神の言葉が伝えられるように改良された物だった。

「ジャミール神、お待たせしました。もうお話になってもいいですわ」
『ありがとうね、シルヴィア』
 その神具から発せられた言葉に、その場にいた聖職者の全員が鳥肌を立てた。
 聞こえて来た言葉が、まさしくジャミール神のものであると理解させられたのだ。
『さて。本来であれば、こんなことしなくても自分たちで気づいてほしかったんだけどね。流石にそろそろ限界に近かったから口を出させてもらうことにしたわ』
 ジャミール神の言葉に、全員が身じろぎもせずに聞いていた。
『さっき、シルヴィアとピーチの二人が言っていたけど、いい加減神託を都合のいいように解釈するのは止めることね』
 神からの直接の言葉に、さすがに口を挟む者はいなかった。
 神相手に駆け引きなどしても意味がないと、全員が分かっているからだ。
 むしろそのようなことをすれば、どんなことになるか、教会で修行を行う者は徹底的に叩き込まれる。
『私達が守護している神殿を管理しているから大丈夫なんて思わないことね。私達にしてみれば、いつでも見捨てることは出来るのよ? 貴方たちもテロレマ神殿の悲劇を知らないわけではないでしょう?』
 テロレマ神殿の悲劇と言うのは、教会の聖職者にとってはおとぎ話のように伝えられている逸話である。
 その昔、神々の加護を得ていた神殿が、その神々の威をかさに着て強大な権勢を誇っていたのだが、やがて神々の怒りを買うことになり一瞬にしてその権力の象徴である神殿を失うことになる話だ。
『一度加護を与えられたからと言って、その力を好き勝手に利用できると思わないことね。くだらない言い訳など意味がないということもね。・・・それじゃあ、時間切れのようだから、もう行くわ』
 その言葉を最後に、ジャミール神の気配が神具から消え去った。
 一方的にジャミール神が言いたいことを言って去ったのだが、神職にある者にとって、今のは神託そのものだった。
 ここまで直接的に神託を授けられるなど、実際に神がこの世に顕現しない限り得られないはずだった。
 それを目の前の神具が、あっさりと可能にしてしまったのだ。
 全員の目線が、シルヴィアの前におかれた神具に集まっていた。
 シルヴィアもそれが分かっていて、その神具を回収したのであった。
「集められた聖職者たち」ですが、思った以上に長くなってしまっています。
もう少し続きます。
・・・・・・寄り道すると全然塔の話が進みませんね・・・orz
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