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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12章 塔を増やそう

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3話 カミングアウト(今更)

 アマミヤの塔と北東の塔での行き来が自由にできるようになったので、北東の塔に残っていたコウヒとフローリアを呼び戻した。
 北東の塔も攻略できたので、しばらくの間は<支配権解放>で何が出来るかを調べるつもりだったのだ。
 ところが、考助が考えていた肝心の作業が出来なかった。
 魔力・聖力・神力のやり取りは普通に出来た。
 一日ごとに発生している力を、設定した値分だけ徴取あるいは譲渡することが出来ることも分かった。ちなみに設定できる値は任意だ。
 流石に設置物や管理層の変更は、それぞれの塔の管理層で行わなければならないが、これは予想の範囲内だ。
 では何が出来なかったかと言うと、階層の交換である。
 アマミヤの塔の適当な階層と北東の塔の階層を、入れ替えようとしたところできなかったのだ。
 メニュー自体はあるので、普通に出来ると思っていたのだが、目論見が外れたことになる。
 その理由はすぐ判明した。
 と言うより、入れ替えを実施しようとしたときに、北東の塔を選択しようとする場所でメッセージが出ていたのだ。

<選択先としてこの塔は選択できません>

 これを見た考助は、思わずがっくりとしてしまった。
 折角塔を攻略したのに、目的の半分以上が意味のない物になってしまった。
「・・・・・・ううむ」
 思わず考助がそう呟いたのを、何か用があったのか管理部屋へと来たフローリアが聞きとがめた。
「どうかしたのか?」
「あ、フローリア。いや、折角攻略したのに、肝心のことが出来なくてね。それより、どうかした?」
 実はフローリアが、この管理部屋に来ることは珍しい。
 自分は居候で、管理メンバーではないと思っているためだ。
 事実、考助もフローリアをメンバー登録していない。
「ああ・・・うむ。・・・少し聞きたいことがあってな」
「聞きたい事?」
「ああ。そうだ。・・・いや、少し聞きづらいというか・・・聞いていいのかどうかためらうというか・・・」
 はっきりとした性格の彼女にしては、珍しいことに少し言いよどんでから、思い切るような表情になる。
「コウスケは、何者なんだ?」
「・・・・・・・・・・・・ハイ?」
 唐突なフローリアの言葉に、思わず考助はキョトンとなってしまった。
「ああ、いや。北東の塔を攻略したときに違和感を感じたのだが・・・。現人神とかは別にしても、そもそもの考え方の根底が違っているというか・・・」
「・・・・・・?」
「シルヴィア達にも聞いてみたが、そなたの過去は誰も知らないと言っていたから、それならいっそのこと直接聞いてみようかと思ってな・・・」
 何となく、この時傍にいたコウヒの視線が厳しくなってきたのを感じたフローリアは、少しずつ声が小さくなってきた。
 だが、考助はそれに気付くことは無く、逆にそれどころではなくなった。
「え・・・? ・・・あれ? ああああ!!!!」
 そう。今更ながらに気付いたのだ。
 考助がこの世界ではない別の世界で育った人格を持っているということを、彼女達に言っていないということに。
 別に隠していたわけではない。
 いやもちろん最初のうちは、何があるかわからないからあえて隠していたのだ。
 だが、別にずっと隠しておくつもりはなかった。
 とは言え、これは考助だけの責任と言えるかは、微妙だ。
 フローリアを除く他のメンバーも最初のうちは、同じように違和感を感じていたのだ。
 だが、長い間一緒に行動するうちに、考助の奇行(?)に慣れてしまい、それが考助の普通と思うようになってしまったのだ。
 対してフローリアは、管理層に来て日が浅い上に、考助と行動を共にすることが少なかった。
 今回の塔の攻略で長い間一緒にいることになり、考助と話をしているうちに違和感を感じたのである。
 それが、先程のフローリアの言葉に繋がる。
 この世界から見れば、アスラが創った体は別にして、考助の根本は異世界人なのだから考え方が違っていて当然だ。
 フローリアは、その違和感を感じて、直接考助に聞くことにしたのだ。
 それに、考助の過去を知りたいという目的だけではなく、別の目的もあった。
「そうか。いや、ごめん。あとで、みんなが揃っているときに話すよ。別に今言ってもいいけど、他の皆も直接聞きたいだろうし」
「わかった。それならそれでいい」
 考助が言った瞬間、コウヒの視線が和らいだのだが、結局考助が気づくことは無かった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「・・・というわけで、ごめん!!」
 皆が揃った席で、考助がいきなり頭を下げた。
「いや、ちょっと待て。いきなり謝られても意味が分からんぞ?」
 代表してシュレインがそう言ったのだが、他のメンバーも同様の表情をしていた。
 それを見た考助が、今までのことを話しはじめた。
 前の世界で死んだときに、魂が弾き飛ばされて神域に来てしまったこと。
 その神域を統括している存在に、体を与えられてこの世界に来たこと。
 冒険者登録をして、その後は塔の話を聞いて、拠点とすることに決めたこと。
 今までの話を簡単に説明した。
「・・・そんなわけで、僕は身体はともかくとして、魂というか、考え方はこの世界の物じゃないんだ。今まで黙っていてごめん!」
 そう言ってもう一度頭を下げた後、顔を上げた考助だった。
 しかしその話を聞いたメンバーたちは、特に驚きの表情を浮かべるでもなく、むしろ納得の表情をしていた。
「・・・・・・あれ?」
「いや、あのね、コウスケ。私達にしてみれば、今更と言えば今更の話よ、それ?」
「そうですね~。異世界と言うのは驚きましたが、むしろそっちの方が納得ですね」
 ちなみに、この世界では、異世界と言う考え方は普通に存在している。
 言うまでもなく、神様情報だ。
 ただし、存在していることが分かっているだけで、当然ながら行き来が出来るわけではない。
「・・・え? あれ・・・? そうなの?」
「コウスケさんの神様に対する考え方からして、この世界からは離れた考え方をしていますわ。異世界人と聞いて、むしろ納得できましたわ」
 そもそもの考え方が違っているのだから、神に対するあり方が違っても当然なのだ。
 神に対する考え方の違いは、シルヴィアが一番感じていたのだった。
「そういうことだの。・・・それよりも、なぜ今更そのようなことを言いだしたのだ?」
「それは、先ほど私がコウスケに聞いたからだ」
「うん。それで、みんなに言ってなかったことに気付いて、こうして話したんだけど・・・」
 それを聞いた考助とフローリアを除くメンバーの視線が、彼女へと集まった。
「・・・・・・どういうつもり?」
 多少厳しい顔をして、コレットがフローリアに言った。
 勿論、フローリアにしてみれば、こういう対応をされることは織り込み済みだ。
「いや、すまん。勿論、コウスケの過去を知りたかったということもあるのだが、それが聞きたかった理由は、きちんと別にある」
「・・・話してみよ」
「うむ。塔の攻略しているときに、コウスケと話していて気付いたのだが、あまりにも神に対する考え方が違いすぎる。このままだと、余計なトラブルに発展しかねないと思ってな」
 フローリアの言葉に、全員が顔を見合わせた。
 それには、コウヒとミツキも含まれている。
 一番早く反応したのは、シルヴィアだった。
「確かに言われた通りですわ。よく気付いてくれました」
「危なかったですわ~」
 考助を置き去りにして、全員が頷いていた。
 この世界において、神は実在しており、またその恩恵を受けていることを実感して生活が成り立っている。
 一方で考助の神に対する考え方は、全く違ったものだ。
 その違いが、無用なトラブルを招くことになる。
「・・・一度、現人神になったと世間に広めることを、本気で検討したほうがいいかもしれませんわ」
「そうだの」
 思ってもみなかった話に、考助が慌てた。
「いや、待ってそんなことしたら、余計目立ってめんどくさいことになるんじゃ?」
 その言葉に、皆が苦笑した。
 早速先程の懸念が当たったことになる。
「むしろ逆ですわ。コウスケさんが神だと分かった瞬間に、直接手を出してくる者は少なくなりますわ」
 この辺が神が実在している世界としていない世界の差である。
 神が実在している世界において、神に直接手を出せばどうなるか、実際の話としてきちんと伝わっている。
 そのため神の反感を買うようなことは、まず行わないのだ。
 勿論、そうしたことを行う愚か者が、全くいないというわけではないのだが。
「・・・・・・はあ~。なるほどね。うーん・・・でも、とりあえずその話は保留にしておこう。勢いで決めるとよくないから、きちんと話し合った方がいい」
「それは当然だの。クラウンのこと、この塔のこと、色々考えて結論を出さないと駄目だからの」
 全員が頷いた。
 結局、フローリアの感じた違和感は、今後現人神という立場をどういうものにするのかと言う話に発展することになった。
 考助にしてみれば、そのまま放置が理想だったのだが、主に自身のせいで、そうもいかないことになったのだから、まさに自業自得と言えるのであった。
今更ながらのカミングアウトでしたw
現人神であることを黙っていても、考助自身からぼろが出る可能性があるということです。別に直接言わなくても、態度や行動でばれてしまう危険性があるというわけです。

2014/6/22 誤字訂正
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