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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第11章 塔から神域へ行こう

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閑話 フロレス王国での出来事

 広く作られた会議室に、重鎮たちが集まっていた。
 その会議室に今集まっている者達は、それぞれがこの国を支える立場にある者達だ。
 これだけのメンバーが揃うことなど、ほとんどない。
 テーブルを囲むように、重鎮たちが座っているのだが、その中央の席は空いたままだった。
 ここに揃っているメンバーは、その椅子の主が来るのを待っているのだ。
 これだけのメンバーがここに集められている趣旨も理解しているので、盛んに情報交換が行われている。
 少なくともトップ同士が、無駄に縦割りの争いをしていないのが、この国のいいところなのだろう。
 勿論、時には権益をめぐって争うこともあるのだが。
 ほどなくして、中心に据えられた椅子の主が、部屋に入ってきた。
 フロレス王国国王、フィリップ・ドリア・フロレスその人であった。

「待たせたな」
 席に着いた国王がそう言うと、会議が始まった。
 これだけのメンバーが集まって話す議題とは、アマミヤの塔についてだった。
 正確には、塔に作られているクラウンと言う組織と、塔の中に作られている町についての話合いである。
 塔の中の町については、以前の報告とさほど違いが無かった。
 いや、急速に発展しているという報告なので、中身はかなり変わっているのだが、その勢いは衰えることを知らないという内容だった。
 町については、今更の話だ。
 そもそもセントラル大陸以外の大陸については、新しく町が出来て急速に発展していくという事は、他に例がないわけではない。
 塔の中に町を作るということ自体は、歴史上初の試みだろうが、国家という立場で見た場合は、所詮他大陸に出来た一都市という見方になる。
 所詮は他大陸の出来事なので、今のところさほど目くじらを立てるほどの事でもない。
 勿論、大陸を統一して、他の大陸に攻めてくるとなると話は別なのだが、今のところそんな兆候はない。
 というより、セントラル大陸からわざわざ他大陸に攻めるメリットがほとんどない。
 そんなことをする戦力があるのなら、大陸内部への開発を進めた方がいいだろう。
 そもそも、大陸間の戦争をするくらいなら、同大陸で統一国家を目指した方が遥かにメリットがあるのだ。
 セントラル大陸への侵攻を除けば、他大陸への戦争など過去ほとんど起きていない。
 と言うわけで、塔の中の町に関しては、ここにいるメンバーのほとんどは、お手並み拝見、と言ったところだ。
 フィリップ国王自身は、町の発展の推移を注意深く見守っている数少ない一人である。
 何しろその町の代官をやっているのが、実の息子なのだからある意味当然だ。
 塔の町の代官を、元第三王子だったアレクが担っていることは、ごく限られた者しか知らない。
 それほどまでに、アレクの亡命は徹底して情報を隠されていた。
 そもそも亡命と言う形にしたのも、アレク本人の希望だった。
 フィリップとしては、そこまでする必要はないと思っていたのだが、多少でも繋がりを残すとこの国の弱みになると強引に周囲を説得して、さっさと出て行ってしまったのだ。

 そんなことを考えていた国王は、ふと思考が本来の目的からそれていることに気付いた。
 未だ目の前では、重鎮たちは町についての議論を行っている。
 ただ、どちらかと言うと行政機関についてよりもクラウンについての話の方が多い。
 それも当然だ。
 そもそも冒険者部門、商人部門、工芸部門が集まった組織など聞いたことがない。
 更にクラウンカードと言う存在がある。
 流石に世界全体で見れば、まだ数が多いというわけではない。
 ただ、クラウンおひざ元のセントラル大陸では、その数を急速に増やしていた。
 特に冒険者の所有率は、驚くべき数になっていた。
 それほどまでに、クラウンカードに記されているスキルとそのレベルが、冒険者たちにとっては非常に有用だということを示してた。
 はっきり言えば、フロレス王国としても、いや、どの王国でもこのクラウンカードを作る技術は、喉から手が出るほど欲しいだろう。
 別にスキル表示が有用になる職業は、冒険者達だけではない。
 残念ながらクラウンカード自体、塔の中でしか作られていないので、他の大陸どころか、同じ大陸の他の都市でも作られていないのは確認されている。
 クラウンで独占しているのかと探りを入れたのだが、どうもそう言うわけではなく、かなり特殊な技術が使われているので、そもそも複製自体が出来ないらしい、という話になっていた。
 この程度の話は、どの国でも掴んでいる情報だろう。
 この情報は、以前から流されていた情報なので、クラウン側があえて流しているのだろう。
 実際にその通りで、クラウンがその情報を流している。
 というより、もっとカード作成のペースを上げてほしいという要求の回答に、その理由が使われていたりする。
 考助が頑張れば、二台目の神能刻印機も作れるのだが、そもそも作ったとしてもそれを管理できる者がいないのだ。
 神力を扱える者がいないのでどうしようもない。
 いずれは、神力ではなく、魔力や聖力で動かせるようにするつもりでいるのだが、その辺の開発は今のところ上手くいっていないのだ。

 クラウンと言う組織についての話し合いが続いていたが、今日の本題はそれではない。
 そもそもクラウンについて、何かをしようというつもりもなかった。
「クラウンについては、もうよかろう。今後どうなっていくかは未知数だが、この大陸に影響を与えるのはまだ先だろう」
 フィリップがそう切り出すと、それまで議論していた重鎮たちがピタリと話を止めた。
 国王であるフィリップへと視線が集まっている。
「無論、今後も動向を見守る必要があるだろうがな。それよりも重要な話が入ってきた」
 フィリップは、一拍おいてその話を切り出した。
「アマミヤの塔の支配者が、賓客たちの前で神威召喚を成功させたようだ」
 国王の言葉に、一瞬その場がざわめいた。
 反応は大きく二つだった。
 一つは、まさか、と言う物であり、もう一つは、やはり噂は本当だったのか、という物だ。
 情報をつかんでいた者は、噂として入ってきたその話が本当なのかつかみ切れていなかった。
 だが、この場で国王が断言したということは、その噂が本当だということになる。
 ちなみに、フィリップの情報源はアレクである。
 勿論、対外的には亡命と言う形を取っている以上、直接やり取りをしているわけではない。
 いわば裏のルートを使っているわけだが、そのことはここにいる重鎮たちの間でも知られているのはごく数人だ。
 アレクが神威召喚の話をフィリップに伝えたのは、当然意図があっての事だ。
 それは、すぐにこの場でも現れて来た。
 二つの反応を示していた場が、三つの反応に変わったのだ。
 一つ目は、単純に驚きを示している者達。この反応を示している者達が一番多い。
 二つ目は、畏敬の念を持った者達。普段から信心深い者だ。
 三つめが、厄介なことになったと思っている者達だった。
 厄介なことになったと思っているのは、この話が一般の住人達に広まった場合の影響力を考えての事だ。
 神の加護を持った者の言葉でさえ、かなりの影響力を与えることが出来る。
 それが直接神を召喚できるとなると、過去に例がないためどういう事になるのか未知数なのだ。
 懸念を示しているうちの一人が、フィリップに対して発言した。
「・・・教会はどう動いているのでしょう?」
「神威召喚を行った結果、塔の中の神殿が神与物になったので、その人員の派遣で揉めていると言った感じだな」
「民に対する対処は?」
「何もしていないな」
 その言葉に数か所からため息が聞こえて来た。
「・・・教会に期待するのは無謀ですか」
「では聞くが、我々に何が出来る? 情報統制でもするか?」
 フィリップの言葉に、全員が押し黙った。
 結局のところ、対処しようにも何も出来ることがないのだ。
 やれることと言えば、情報を遮断することくらいだが、完全に遮断することなど不可能なのだ。
「今日のこの会は、皆に共通の認識を持ってもらうことで開いただけだ。これで我が国が何かをしようと言う気はない。下手をすれば余計厄介なことになるからな」
「では?」
「とりあえず、今のところはなにも手出しはしない。暴動など起きれば別だがな」
 国王のその一声で、今後の方針が決められた。
 今日のこの決定は、フロレス王国だけではなく、他の国でも同じような内容で決められることになるのであった。
こんな感じにしましたが、実際何か対処できることってあるんでしょうか?w

2014/6/29 誤字訂正
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