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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第10章 塔に神様を召喚してみよう

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9話 伝説のはじまり

 第五層は定住者も増えてきて、既に町と呼んでいい規模になってきている。
 その町の規模もまだ広がっている最中であり、今後も大きくなっていく予定だ。
 第五層の土地自体はまだまだ余っているので、町が広がっていく分には何の問題もない。
 勿論、モンスターの発生を考慮しなければ、という注釈はつくのだが。
 今も建築中の建物が並んでいる街の一角に、人の集団が集まっていた。
 何の集まりかと言うと、神殿の落成式のイベントして、塔の代表として考助の名前で正式に集められた者達である。
 その数は、約百人ほど。
 半分が塔外の有力者の者達で、残り半分がクラウン関係者だった。
 有力者たちの中には、当然神殿関係者も含まれている。
 また、クラウン関係者には、冒険者たちが招待されていた。
 名目上は参加者なのだが、当然裏では、イベントの警備としての役目も依頼している。
 とは言え、有力者たちの中で、冒険者に交じって座るのを嫌がった者がいたので、備え付けられた椅子は半分ずつで分けられている。
 どういう配置で座っているかは、推して知るべし、と言う所だろう。
 その状態で警備として役に立つかは微妙だが、人間や亜人たちはともかくとして、モンスターに襲撃された場合は役に立つ。
 本当の意味での護衛は、当然別で配置している。
 この辺の手配は、ドルとガゼランで話し合って行われている。
 行政府が立ち上がったとはいっても、いまだ正式な警備組織など動き始めていないので、冒険者が主体になるのはしょうがない。
 この辺は今後の課題である・・・とは、アレクの弁だ。
 入れ替わりが激しい冒険者たちだけに町の防衛を任せていては、町として成り立たない。
 そういった組織は、非常に金食い虫なのだが、それでも必ず必要な存在なのだ。
 特に今回のようなイベントを行うときには。
 そうはいっても、きちんとした組織を作るのには、時間も金も掛かる。
 間に合わない以上、今回のイベントは冒険者たちに頑張ってもらうことになった。

 外部からの参加者たちは、今回限りの通行証を持って塔の中に入ってきている。
 当然、その通行証は塔に入ってくるときに通った転移門にしか使えない。
 しかも一回限りになっている。
 一度その通行証を持って塔外に出てしまえば、戻ってくることはできない。
 その辺の説明は、塔内に来るときに十分に説明されている。
 それを分かっているのか、塔外に出ようとするものはいなかった。
 やがて用意された椅子が、ほぼすべて埋まった頃に、いよいよイベントが始まった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 まず初めに、一時的に設置されたステージ、と言う名の木造の舞台の上にサラーサが上がった。
 サラーサはクラウンの商人部門の統括なので、塔外部の者に対して顔が利く。
 そのため今日の役割は、イベントの司会となっている。
 魔道具の拡声器もどきを使って、イベントの司会を開始した。
「え~。皆さん、今日は突然の招待にもかかわらず、お集まりいただきまして誠にありがとうございます」
 そんな挨拶から始まり、改めてクラウンと行政府の重役たちの紹介が行われた。
 当然ながら、参加者たちの半分は、つまらなそうに見ている。
 今日の目的は、主役の顔を見ることなのだから、当然と言えば当然である。
 そしていよいよ、主役である考助が紹介された。
 その瞬間、参加者たちの視線が舞台に集まった。
 その視線を一身に浴びている考助は、引き攣りそうな表情を隠すのに精いっぱいだった。
 その考助の傍には、コウヒとミツキの二人が控えている。
 当然、不測の事態に備えているのだ。
 ここに呼ばれた参加者たちは、内心ではどう思っていても、口や表情に出さない者達が集まっている。
 ただし、半分の有力者たちは、という注釈がつくが。
 残り半分のクラウン関係者たちの一部、特に冒険者達は、遠慮なく「あれが塔の攻略したって!?」「嘘だろ・・・!?」などと遠慮がない意見が飛び交っていた。
 いくら無作法者達とはいえ、声のトーンは流石に抑えられていたが。
 そうした声や視線を綺麗にスルーした考助は、サラーサの紹介後、一度お辞儀をした後舞台上に用意された椅子に座った。
 その両脇を固めるのは、当然ながらコウヒとミツキだ。
 ちなみに、他のメンバーたちは管理層で待機中である。
 わざわざ全員の顔を見せる必要が無いためだ。
 考助が椅子に着席すると、サラーサがイベントを進め始める。
「さて、お集まりの皆様。ここへ来た時に不思議に思いませんでしたでしょうか? そう。神殿の落成式にもかかわらず、お集まりいただいた場所には、神殿の建物がありません」
 サラーサは一旦話を区切って、参加者たちを見まわした。
 参加者たちは、その言葉を聞いて、頷いていたり表情を変えなかったり様々な反応を見せていた。
「今回は、塔の力の一端をご覧いただくために、このような趣向を用意いたしました。・・・それでは、お願いいたします」
 最後の言葉は、考助に向けたものだ。
 この流れは、元々決められた流れだった。
 サラーサから言葉と視線を向けられた考助は、すぐに神力念話を使って、管理層にいるシュレインと繋がった。
『シュレインお願い』
『わかった』
 短いやり取りの後、考助達のいるステージを挟んで参加者たちとは反対側に、少し小さめの神殿が一瞬で出現した。
 前もってシュレインと打ち合わせをして、連絡があれば管理メニューから設置することにしてあったのだ。
 これには流石に有力者たちの中からもざわめきが聞こえて来た。
 これまで第五層では、塔の機能を使った建築は、転移門をつなげる前の最初の建築だけだったので、今までこの機能を見たことが無いのだ。
 小さい規模の神殿とはいえ、それが一瞬で建てられることが出来るというのは、驚き以外の何物でもない。
 余談だが、事故が起こらないように、神殿建築予定地に立ち入る者が出ないように、警備されていたりする。
 何事もなく無事に神殿が建ったので、今頃は任務から解放されているだろう。
 神殿の一瞬の建築は、参加者たちにそれなりのインパクトを与えることが出来た。
 立ち上がりとしては上々だった。
「これが塔の力の一端です。残念ながら、色々と条件があるので、そうそう簡単に使える力ではありませんので、期待するのはおやめください、と言うのが代表からの言葉です」
 代表と言うのは考助であるが、直接考助が言うと角が立ちそうなので、わざわざサラーサに代弁してもらうことにした。
 ちなみに、サラーサの言葉を意訳すると「神力を使わないといけないという条件があるので、貴方のためだけに神力は使えないので、余計なことは言ってこないでね」となる。
 早い話が露払いであるのだが、当然その辺は察しがいい者達が集まっているので、言葉の裏の意味はきちんと気づいているだろう。
 それに対して、どういう対応を取るかは、それぞれで違ってくるのだが。
 塔側としては、今の神殿の設置だけでも十分に参加者たちに、インパクトを与えることが出来たのだが、イベントとしてはこれからが本番である。
「神殿の建設としてはこれで終わりですが、更にこの神殿に塔の代表が祝福を施します。・・・それでは、お願いします」
 二度目のサラーサからのお願いだった。
 これからが、考助にとっての本番になる。
 椅子から立ち上がり、参加者たちに背中を見せて神殿の方を見た考助に、全員の視線が集まる。
 今までの人生でこれほどの注目を集めることなど無かった考助は、背中越しとは言えプレッシャーのような物を感じた。
 それを振り払うように、大きくため息を吐いて、召喚に集中することにした。
 数十秒程の時間を置いて、ようやく集中できた事を感じた考助は、神威召喚の為の詠唱を始めたのである。

≪考助の名において召喚願う≫
召喚どころか、詠唱すらはじめられませんでした><
召喚は次話で行います。

2014/6/27 誤字訂正
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