挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第10章 塔に神様を召喚してみよう

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

126/1269

8話 思わぬ落とし穴

 神殿の落成式に向けて、周囲の準備は着々と進んでいたが、肝心の考助は最後の準備が進んでいなかった。
 一応、ジャルに話を通すことは出来たが、目的を達成するには、考助自身の力でなさなければいけない。
 無理を言えば、彼女たちの力で達成できてしまうだろうが、考助は自身の力で達成することに意味があると思っている。
 考助が神殿の落成式で何をしようとしているかと言うと、召喚である。
 もちろんただの召喚ではなく、神威召喚というものだ。
 アースガルドの世界において、未だ一度も成功例がない神の召喚。
 それを行おうとしているのだ。
 なぜ一度も成功例がないと分かっているかと言うと、以前雑談で交神時にジャルから聞いたことがあったためだ。
 神からの情報なので、間違いはないだろう。
 神がこの世界に現れるときは、あくまでも神の方から出現するのであって、人の都合で呼び出せるものではない。
 だが、神威召喚はそれを可能にする技術なのだ。
 神威召喚の存在自体は、ある神からもたらされた情報なので、それを疑う者はいない。
 とは言え、今まで一度も成功した例が無いため、人あるいは亜人が神威召喚を行うのは不可能だと考えられている。
 その神威召喚を成功させることが出来れば、神殿にも箔がつくだろうと考えて、あの時考助はアレクに提案した。
 ある程度成功するという目論見はあった。
 というのも、ジャルから神威召喚について教えてもらってから、いくつかの実験を繰り返して、以前から使えるかどうかを試していた。
 召喚陣自体は、神威召喚を教えた神から伝わったもので、変質なども起こってないらしい。これもジャル情報だった。
 あとはその召喚陣を発動しさえすればいいと思っていたのだが、これが簡単にいかなかった。
 いくら魔力や聖力を込めても召喚陣が発動しない。
 神力を使って召喚陣を作成しても上手くいかない。
 ただ力を込めるだけでは上手くいかないということは分かったので、それ以外の方法も試してみた。
 ただ召喚陣を書くのだけではなく、タイミングや速度など様々な条件を変えて実験を繰り返した。
 そのおかげで、何とか召喚陣が発動するところまでは上手くいったが、それ以上が上手くいかない。
 思わず、交神と言う最終手段に頼ろうかと思ったが、流石にそれは止めておいた。
 行き詰ってしまったところで、改めてその召喚陣を見直してみた。
 召喚陣自体には、問題があるようには見えない。
 問題は何を召喚するかという事なのだが・・・、とそこまで考えて、ふと考助は気づいた。

「・・・あれ? 神を召喚するって・・・何の神を召喚するんだ?」
 通常召喚陣は、その召喚対象を表わすものを陣の中に組み込んで、対象をはっきりさせたうえで召喚するようになっている。
 これは、塔で使われている眷属たちの召喚陣や、以前考助が鸞和達を召喚した召喚陣でも同じだ。
 考助は、改めて神威召喚陣を見直した。
「・・・・・・うわ。そういう事か」
 気付いてしまえば、簡単なことだった。
 神威召喚陣は、『神を召喚する』ということは記されているが、何の神を召喚するかは表わされていなかった。
 通常の召喚陣であれば、例えば『犬を召喚する』としていれば、適当な種類の犬を召喚するだろう。
 だが、この適当な種類の、と言うのが曲者なのだ。
 言い換えれば、ペットとして飼われて名前が付いている犬は召喚されることがない。
 個体を特定する名前を持っている存在は、召喚陣で召喚する場合は名前をきちんと指定しないといけない。
 ここで再び塔で使っている召喚陣を例にとれば、全て『~を召喚する』となっているので、名前付きの個体は召喚されることがない。
 それ故に考助が一体一体に、名前を付けて眷属化しているわけなのだ。
 この条件を神威召喚陣に当てはめてみる。
 『神を召喚する』という条件は書かれているが、名前などは表わされていない。
 この世界に名前がない神がいれば、この条件でも召喚されて来る可能性があるのだろうが、そんな神は聞いたことが無かった。
 一応シルヴィアに確認してみたが、そんな神はいないという事だった。
「そもそも名前があるからこそ、神と呼ばれる存在になるのですわ。名前がない神など考えられません」
 そう断言された。
 とすれば、神威召喚陣が上手く発動しなかった答えは簡単だ。
 名前の指定がないために、どの神を召喚するのかが分からないので、発動していないのだ。
 だとすれば、名前を指定すればいいと思ったのだが、そう簡単にはいかなかった。
 流石に神が伝えた召喚陣だけあって、神威召喚陣は個体名を割り込ませる隙間が無かったのである。
 この時点で、考助は神威召喚陣を改良することはあきらめていた。
 少しでも変えようとすると、とたんに陣が崩れて召喚陣として成り立たなくなることが分かったのだ。
 と言うことは、別の手段で個体名を割り込ませる手段が必要になる。
 そこで考助が考えたのは、呪文詠唱だった。
 召喚陣と詠唱を組み合わせることは珍しいことではない。
 というより考助やコウヒ&ミツキの様に、詠唱なしで召喚陣を発動させる方が異常なのだ。
 詠唱を行うと言っても召喚陣との組み合わせ方は、様々な物がある。
 神威召喚陣に関しては、少なくとも召喚する対象をキチンと絞らないといけない。
 あとはどうやって、神威召喚陣と詠唱を組み合わせていくのか、ということを考えればいい。
 ・・・のだが、神威召喚陣を伝えた神は、詠唱に関してなぜ伝えていなかったのかは、謎のままだ。
 わざと伝えなかったのかもしれないし、単純に忘れていたのかもしれない。
 もし神威召喚陣が上手く発動できれば、エリスあたりに確認してみようと思う考助であった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 といったわけで以前からの研究で、何とか詠唱との組み合わせも上手くいきそうなところまで行ったので、アレクに落成式で召喚を行うことを提案したわけだ。
 最後の準備が進んでいないというのは、落成式の前に実験のための召喚が行えないということにあった。
 神威召喚陣と詠唱の組み合わせが正しいのかどうかを試そうにも、そう簡単にはいかなかった。
 そもそもいくら召喚陣を使っているからと言って、そう簡単にポンポンと神を召喚できるようになるはずがない。
 考助としては、この神威召喚陣は使い捨てではないかと疑っているのだ。
 実験として神の召喚を上手くできても、本番で上手くいかなければ意味がないのである。
「・・・・・・うーん、どうするか・・・」
 悩む考助である。
 基本的にぶっつけ本番ということはしたくはないのだが、事情が事情だけにそうも言っていられない。
 そもそも前にジャルに話をした時には、召喚をする日時を伝えてしまったので、その前に実験をして上手くいくかも分からない。
 そこまで考えた考助は、すっぱりと事前実験を行うことは諦めた。
 そもそもアレクやワーヒドからは、召喚自体は上手くいかなくてもいいと言われていた。
 何故かと言うと、神威召喚陣自体を発動できること自体が、既に召喚士として最高レベルにあることを示せるそうである。
 加えて、コウヒやミツキというチート二人がいるのだから、いざとなれば二人同時に正体を晒そうかなんてことを考えている。
 神自体の召喚は出来なくても、それだけで十分インパクトがあるだろう。
 その場合、考助がおまけ扱いになってしまいそうだが、それ自体は特に気にしていない。
 要は塔の管理者が一筋縄ではいかないことを示せればいいのだから。
 結局のところ、考助としては中途半端な状態であるが、事前実験を行うことなく、本番の召喚に臨むことになるのであった。
召喚陣について再び、です。
神威召喚に関しては、いきなりイベント時に紹介しようかと思いましたが、
一応こういう苦労もしているということを紹介したかったので文章にしました。
・・・・・・1話分かかるとは思いませんでしたが。

2014/6/27 誤字脱字訂正
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ