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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第10章 塔に神様を召喚してみよう

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6話 神殿の思惑

 ミクセンのエリサミール神殿にある一室。
 神殿長に許された者だけが入室できるその部屋に、三人の者が集まっていた。
 その三人が囲んでいるテーブルの上には、一枚の手紙が置かれている。
 内容はごく簡単な物である。
 曰く、アマミヤの塔で神殿の落成式を行うので、是非とも神殿関係者もいらしてください、と言った内容である。
 だが、その中身は彼らが待っている内容は一切書かれていなかった。
 すなわち、神殿を建てるので、神官なり巫女なりを送ってほしいという内容である。
 結局のところアレクの予想はある程度当たっていたのだが、ある意味当たり前と言えば当たり前だ。
 以前にシルヴィアの後ろにいるコウヒから塔には手を出すな、と釘を刺されているとはいえ、神官なり巫女なりを派遣して、神殿の勢力を増やすのはごく当たり前のことと考えている。
 そもそも宗教という物はそう言う物なので、特に疑問に思うわけでもなく当然のように行われてきた。
 よほどの小さな村でもない限り、神殿が置かれないということはあり得ないので、必ずと言っていいほど神官か巫女のどちらかはいることになる。
 中には閉鎖的な村などの例外はあるが、そう言ったところでも信仰がない、と言うことはまずあり得ないので、何かしらの物は置かれている。
 そう言うわけで、当然塔にも人が集まっている限り、神殿は作られることになると考えていたのがローレル含む神殿の実力者三人だった。
 だが、ようやく待ち望んだその手紙の中には、神官や巫女を派遣してほしいと言った内容は一切書かれていなかった。
 念の為、ミクセンにある他の二つの神殿にも連絡を取ってみたが、内容は同じもので、神官や巫女の派遣に関しては書かれていなかった。

「・・・・・・どういう事でしょうね?」
 神殿長であるローレルの言葉に、今まで黙っていた残りの二人がピクリと反応した。
「まさか奴ら、外側だけ造った張りぼてを置くつもりなのでは?」
 これは、祭祀長であるゼルの言葉である。
「それこそ、まさかでしょう。彼らには彼の方がいらっしゃるのですよね?」
 最後の三人目が、最近神官長へと昇進してきたゴゼンだ。
 以前いた神官長は、位が上がって他大陸へ派遣されたため、ゴゼンが繰り上がってきた。
 彼らの常識に照らし合わせれば、神の使徒と呼ばれるコウヒが張りぼての建物で満足できるとは考えていない。
 ましてや、神殿でもない管理層なんて言う究極の平屋的な場所で、生活をしているとは欠片も考えていないのである。まあ平屋と言っても広さ自体は、部屋の数も含めてそれなりに広いのだが。
「だが、普段彼の方をあの塔の村で見かけたという話は、ほとんど聞いたことがない。ならば、普段は別の階層とやらにいてもおかしくないのだろう?」
「それこそまさかです。別の場所に住んでいるとして、その場所の管理は誰が行っているのですか?」
 まさかコウヒ自身が、管理層の維持管理を行っているなんて全く考えていない。
 ましてや、嬉々として掃除をしたりしているなんてことは、想像の埒外である。
「その話は、以前も話して結論が出なかった事です。今話すことではありません」
 そのまま脱線してきそうな二人に、ローレルが待ったをかけた。
「それよりも、今はこの手紙の件です。中身を見る限りで、塔の中で作られている町の中に、神殿が作られることは間違いがないようですね」
「しかし今のところ、神殿の建設が始まったという話は聞いていませんが?」
 聖職者と言えども、情報を集めるための人員くらいは送り込んでいる。
 と言うよりむしろ、いつ何時怪我をしてもおかしくない冒険者たちが、回復魔法を使える神官や巫女を神殿から臨時で雇用することは珍しい話ではない。
 そう言った神官や巫女たちから、塔の様子は随時情報が入ってきている。
 その情報の中には、町が作られている区画では、神殿の建設が始まったという話は、一切入ってきていなかった。
「一体どういう事なんでしょうね」
 全く考えが読めない相手に、流石のローレルもため息を吐いた。
「それこそ考えても仕方ないでしょうな。それよりも、この招待には応じるので?」
「行かないという選択肢はないでしょうね。ついでに言えば、行くべきだと勘が告げています」
 ローレルの言葉に、残りの二人は沈黙した。
 ローレルとて、この大神殿を治める神殿長にまで上り詰めた人物である。
 しかも金で地位を買ったような人物ではなく、あくまで実力本位で選ばれた。
 このモンスターが跋扈するセントラル大陸で、神殿のトップに立つのには、どうしても実力が必要になるのだ。
 その実力の持ち主であるローレルが告げた「勘」は、彼らにしてみれば、神託にも等しいものがある。
「・・・そうですか。月と星はどうするか聞いていますか?」
 月と星と言うのは、ジャミール神殿とスピカ神殿の事だ。
「まだ聞いていませんが・・・恐らく一緒に行くことになるでしょうね。彼らとて、彼の方に繋がる組織の動きには注目しているはずです」
 以前にエリサミール神殿で起こったことは、情報が共有されている。
 情報を隠して個別に対処するよりも、共闘したほうがいいと判断したのだ。
 ミクセンの三神殿は、転移門のことを考えれば、まさしく彼の方がいる塔のおひざ元にある。
 ちなみに、あくまでも彼らが警戒しているのは、以前に姿を晒したコウヒだ。
 目の前で神具を創った考助に関しては、勿論重要人物扱いではあるが、コウヒほどではない。
 そのため考助の情報に関しては、塔の管理責任者以外の情報は伝わっていなかったりする。
 彼らにとって、考助の存在は、例え塔の攻略者だとしてもその程度である。
 もちろん、そんなコウヒが主様として仕えているということは、以前の対面でわかっているため、おざなりにするということはない。
 それほどまでに、神の御使いとしてのコウヒの存在が、彼らにとって考助以上に強烈過ぎるのだ。
「やはり、そうですか。と言うことは、我々も行った方がいいということですか」
「・・・三神殿のトップ三人が、短い間とはいえ、全ていなくなるのは、そうそうないことではありますね」
「仕方ありません。他の者達に対応を任せていい事ではありませんから」
 二人の言葉に、ローレルがため息を吐きつつそう答えた。
「月と星の者達とのすり合わせも必要でしょうね」
「塔への訪問前に、一度でも話し合いは必要でしょう。祭祀長つなぎを取ってください」
 神官長が中の神官や巫女、神殿の管理に関する全般を扱う役職であるならば、祭祀長は外に対する顔役だ。
 当然、他の神殿への対応も、祭祀長が行う職務の一つに含まれている。
「はい。わかっております」
「それぞれの神殿の神殿長へは、私も一筆書きます」
「宜しくお願いします」
 祭祀長であるゼルを邪険にする神殿関係者はいないだろうが、神殿長の親書的な物があれば、なお話が進めやすいのだ。
 三神殿の仲が悪い、と言うわけではない。
 こと彼ら曰く、彼の方(コウヒ)に関係することなので、より慎重になっているのである。
「それにしても・・・・・・」
 神官長がぽつり呟いた。
「一体、彼らは我々の力も借りずに、何を為そうとしているのでしょうね?」
 神殿あるいは信仰に関しては、自分たち神殿に属する神官や巫女がよくわかってるという自負がある。
 その彼らをして、リラアマミヤが何を為そうとしているのかが分からないのである。
「それは今考えてもしょうがないでしょう。期日が近づくにつれて情報も出てくるのではありませんか?」
「そうなんでしょうね」
 結局彼らはそう結論づけて、この日の話し合いを終えた。
 だが、残念ながら彼らの予想は外れて、招待日まで情報らしい情報を得ることが出来なかったのであった。
思ったよりも長くなってしまいました。
その他の招待客に関しては、次話で書きます。
何をしようとしているかに関しては、その次辺りから書ければなぁ、と思っています

2014/6/2 誤字修正
2014/6/3 誤字修正
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