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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(1)悩む考助

 遅ればせながら、考助は新拠点に名前を付けた。
 新拠点は新拠点で間違ってはいないのだが、いつ気紛れて新しい拠点を作るかわからないのだからさっさと名前をつけろと各所から言われたのだ。
 ついでに、現在学園に通っているセイヤとシアのために用意した家も新拠点といっても間違いではない。
 いずれはそうした場所が点在することになるだろうと言われれば、考助も反論することは出来なかった。
 そうして考助が考えた案の中で選ばれたのは、「始まりの家」という名前だった。
 考助が降り立った場所に建っているから付けた名前だったのだが、意外に他の者たちの受けが良かったのだ。
 もっとも、ほかに出した候補がそれよりも下だったからという理由もありそうだったが、考助はそれには気付かなかったふりをした。
 その結果、アスラたちが用意した新拠点は、今では「始まりの家」という名前が定着しつつあった。

 その始まりの家で、メイドゴーレムが動くのを見ていた考助は、ぽつりと呟いた。
「うーん。やっぱりきちんと管理する人を置くべきかな」
 その考助の呟きに、同じようにソファに座って寛いでいたシルヴィアが首を傾げながら言った。
「今のままでも特に不足はないように感じますが・・・・・・なにか理由でもあるのですか?」
「いや、別になにかがあるというわけじゃないんだけれどね。やっぱりとっさの判断ができる存在はいた方が良いかなと」
 現状、メイドゴーレムは与えられた命令を着実にこなすようにしかできていない。
 要するに、緊急事態が起こったときの対処が弱いのだ。

 考助の言いたいことが分かったシルヴィアも、納得顔になって頷いた。
「今更といえば今更のような気もしますが、いた方がいいのは確かですね」
 始まりの家ができてから既にかなりの月日が経っている。
 その間、モンスターでさえろくに襲撃してこなかったのだから、これから先も何かがあるとは思えない。
 とはいえ、考助たちはあっちへフラフラこっちへフラフラすることがあるので、常駐している者がいれば安心できる。
「だよね? でも、誰を置くかといえば、中々思いつかないんだよね」
 そう言った考助に、シルヴィアも同意するように頷いた。

 そもそも始まりの家は、考助とその嫁たちだけが使うためと決めた場所だ。
 変な――というと語弊があるが、余計な存在は入れるつもりはない。
 そんな特殊な条件を満たせるような存在は、少なくとも考助には思いつかなかった。

 考えるような顔になっている考助に、シルヴィアは特に重要なことでもないという顔になって言った。
「今までも特に大きなことは起こってないのですから、このままでいいのではないでしょうか?」
「まあ、そうなんだけれどね。いずれは必要になるかなって、思っただけなんだよ」
「そういうことでしたか」
 単にいつもの思い付きで話をしたと言う考助に、シルヴィアはそう答えてから頷いた。

 そのシルヴィアの顔は、完全に好きにしてくださいというものになっている。
 考助がただの思い付きで話を始めることはいくらでもあるので、シルヴィアも一々そのすべてに付き合っているわけではないのだ。
 ついでに、何となくだが重要な話をしているときとそうでないときの区別もつくようになってきている。
 今回のシルヴィアは、さほど重要なことではないと判断したのである。
 勿論、その判断が間違っていることも、まだまだあるのだが。

 
 シルヴィアが頷くだけ頷いて気がそれたのが分かったのか、考助もそれ以上はなにも言わなかった。
 その状態に変化が起きたのは、ジッと考助がメイドゴーレムを見ていたときに、管理層に行っていたフローリアが帰って来てからだった。
「うん? なんだ、考助は欲求不満か?」
「「ブッ!!」」
 いきなりとんでもないことを言い出したフローリアに、まったりとした雰囲気になっていた考助とシルヴィアが同時に噴き出した。
「ちょっと待って。なんでいきなりそんなことを言ってくるのかな?」
 問い詰めるような顔になっている考助に、フローリアは至極真面目な顔になった。
「いや、シルヴィアがすぐ傍にいるにも関わらず、何やら熱心にメイド(ゴーレム)を見ているようだったからな」
「・・・・・・フローリア」
 珍しいフローリアの下ネタもどきに、シルヴィアが笑っていいのか呆れていいのか、微妙な顔になっていた。

 シルヴィアとフローリアの顔を見て、一瞬でこのままでは不味いと判断した考助は、さっさと先ほどシルヴィアにした話を繰り返すことにした。
 そして、その話を聞いたフローリアは、ようやく納得顔になって頷いた。
「なるほど、そういうことか。だからあれほど熱心に見ていたのだな」
「うっ、いや、なんか相変わらず誤解されるような言い方の気がするけれど・・・・・・?」
「気のせいだ」
 ジト目を向けてくる考助に、フローリアはすまし顔でそう言ってきた。

 そして、フローリアはすぐに不思議そうな顔になって続けた。
「それにしてもそんなに悩むようなことか? コウスケが必要なのだと思えば置けばいいじゃないか」
「いや、だから誰を置くのかが問題なのであってね」
「うん? ゴブリンの進化種か、天翼族辺りは駄目なのか? 彼らであれば喜んで引き受けてくれると思うが?」
 あっさりとそう言ってきたフローリアに、考助は驚いたような視線を向けた。

 考助は、ゴブリンはともかく、天翼族はまったく考えていなかった。
 一部ではあるが、天翼族は始まりの家がある場所のことは知っているし、何よりも考助を始めとした神に忠実な性格が、元は女神たちが作った屋敷を守るという目的と合っているので適任ともいえる。
 問題は、考助たちだけが使うことになっている場所に、そんな存在を入れていいのかどうかという点だ。
 ちなみに、この時点で考助がゴブリンを選択肢から外しているのは、三種の眷属(しかも神獣)がいる状態で、他の眷属を入れたらどうなるかわからないためだ。
 百合之神宮の守護を張り切っているソルを見ていれば、何も起こらないということは予想出来るが、それは絶対ではない。
 自分たちがいないときのことを考えて置くのだから、そうした不安要素はない方がいいのだ。

 ただ、だからといって、天翼族が完全に信用できるかといえばそうではない。
 そもそも考助の眷属でもなんでもない天翼族は、限りなく低いとはいえ裏切る可能性もないわけではないのだ。
 もっとも、その可能性はかなり低いだろうということは、考助にも分かるのだが。
「うーん。中々難しい問題だね」
「そうか? 私にはコウスケが難しく考えすぎているように思えるが?」
 そもそもフローリアの感覚としては、自分が住む場所を誰かに任せて管理することは当然のことなのだ。
 一々裏切りを気にしていては、広い屋敷になど住むことは出来ない。
 とはいえ、考助が言っていることも理解はできる。
 所謂「異分子」を始まりの家にいれてしまっては、当初の目的から外れてしまうことになりかねない。
 結果として、考助の頭の中では、どうするべきかと繰り返し思考が回っているのである。

 それらのことをきちんと見抜いたうえでのフローリアの言葉に、考助は相変わらず悩ましい顔になって腕を組んだ。
 それを見たフローリアは、一度シルヴィアと顔を見合わせてから、首を左右に振ってゆっくりとソファに腰掛けるのであった。
悩む考助!(優柔不断ともいう?)
本当はきっぱり決めてしまうつもりだったのですが、たまにはこういう展開も良いかと、こっちにしました。
結局どうするかは、しばらく先になります。
(結局忘れたりしてw)

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