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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(10)スライムの歴史?

 まさかスライムがいるとは考えてもいなかった王家の者たちは、唖然とした顔で考助とスライムを見比べていた。
 その視線に気付いていながらも、考助はスーラを手招きして呼びながら話しかけた。
「別に討伐するつもりはないからって、伝えてね」
 考助の言葉がしっかりと通じているスーラは、フニフニとそのスライムに近寄りながら、なにやら接触を試みている。
 考助には詳しくは意味が分からないのだが、新拠点の畑でもよく見る光景に、何となく話をしているのだと理解している。
 勿論、実際に確認できているわけではないので、あくまでも想像でしかないのだが。

 スーラがそんなことをしている間に、考助は折角なのでスライムのステータスを確認してみることにした。
 そして、その内容を見て一言。
「・・・・・・いや、これは凄いな」
 心底から驚いて声を出した考助に、フローリアとシルヴィアが興味深そうな視線を向けて来た。
「なにかわかったのか?」
「分かったというかなんというか・・・・・・」
 フローリアの問いに一度言葉を区切った考助は、改めてスライムのステータスを見直した。

 そこに出ている目の前のスライムが持っているスキルは、野生のスライムが持っているのにはあり得ないようなもののオンパレードだったのだ。
 何しろ、攻撃系のスキルはほとんどなく、あるのは身を守るためのものがいくつかと、あとは所謂回復系のスキルがずらずらと並んでいる。
 進化しているスライムを見慣れている考助でも、ほとんど見たことが無いような構成だった。
 そこから推測することが出来ることがあるとすれば、今目の前にいるスライムは、どう考えても野生で生き残ったわけではないということだ。

 スキル構成を見て、このスライムの成り立ちがある程度の予想ができた考助は、感嘆のため息をついた。
 それを見たフローリアが改めて問いかけて来た。
「もう、いい加減話してもらってもいいか?」
「あ、うん。だけれど、あくまでも推測になるよ?」
 考助はフローリアに向かってそう言ったあとに、視線だけをマクシム国王へと向けた。
 一応この場は、王への説明も兼ねていることを、今更ながらに思い出したのだ。

 その考助からの視線を受けて、驚いたままだったマクシム国王がなにも言葉を出さずに頷きだけを返してきた。
 それを、それでも構わないという意思表示だと受け取った考助は、一度だけスライムを見て、マクシム国王へ視線を向けながら続けた。
「このスライム、恐らくですが、この部屋を含めた周辺だけで代を重ねて来た生き残りなのでしょうね」
「えっ!?」
 考助の言葉に、王家の面々は声を上げて驚き、フローリアとシルヴィアは何となく予想していたような顔になった。

 そのときのフローリアの顔を見たレオナルドが、驚いた顔のまま突っ込みを入れて来た。
「いや、フローリア。何を当然という顔をしているんだい!?」
「あまり騒ぐなレオナルド。ここは病人がいるんだぞ?」
 そう冷静な返答をしてきたフローリアに、レオナルドはさらに何かを言おうとした。
 だが、状況を思い出したのか、グッと言葉に詰まったような顔になる。

 その代わりに当事者であるマクシム国王が、フローリアに向かって言った。
「いや、私も驚いているのだが・・・・・・?」
 そのマクシム国王に向かって、フローリアはため息をつきながら答えた。
「王。お言葉を返すようで申し訳ないですが、この程度のことで驚いていては、現人神の傍にはいられません」
 それを聞いた考助は、内心で「それは違うのでは!?」と考えたが、賢明にもそれは言葉にしなかった。
 何故なら、フローリアの隣に立っていたシルヴィアが、小さく頷いていたのが見えたからである。

 何やら王族たちから微妙な視線を向けられている気がした考助は、気が付かなかったふりをして、わざとらしく咳ばらいをした。
「コホン。とにかく、このスライムが持っているスキルは、普通に生きて来た者としてはあり得ないです。・・・・・・なにか、他の生物に寄生していたとかならともかく」
 例えばナナのような強大な強さを持つモンスターにくっついていたならば、攻撃スキルを持たないスライムでも生き延びることは出来るだろう。
 だが、それだとこの場にスライムだけが存在している説明が出来ない。
 それならば、最初からこの部屋に住み着いて代を重ねて来たと考えた方が、少なくとも考助にとってはすんなりと理解できる。

 今、考助が考えているのは、こんなストーリーだった。
 まずは、なにかの拍子にごく普通のスライムがこの部屋に住み着いた。
 スライム自体は、水と少しの栄養さえあれば生き延びることが出来る。
 極端な話、この部屋に代々住んできた王やその王のために出す飲み物を侍女がこぼした分だけでも大丈夫なのだ。
 付け加えれば、考助たちがいる部屋の隣には、侍女たちが王のために飲み物を用意する部屋がある。
 人間に気付かれないように、スライムがその部屋に移動して水分を補給することは、十分に可能だろう。

 安定した生活(?)を手に入れることが出来たスライムが次にすることは、子孫(?)を残すこと、すなわち分裂である。
 ただし、ここで問題になるのが、分裂を繰り返していくと、どうしても部屋を出入りする人に見つかってしまう。
 そのため、部屋に残るのは一体だけがいいと自然に理解していったのだ。
 そうして分裂を繰り返している間に、回復系のスキルを覚えて行った。
 これに関しては、この部屋に代々の王が寝起きをしていたということが重要になってくる。
 王が寝起きをするということは、当然怪我や病気をしたときには、この部屋で回復を図ることになる。
 となれば、医者や魔法使いが回復魔法を使ったり、薬を出したりとすることになる。
 そうしたことを、繰り返し代々のスライムが見てきて、自然とスキルも増えて行った、というのが今のところの考助の考えだった。

 一気にそこまで説明した考助は、少しだけ言葉を区切ってから周囲を見回した。
「まあ、今話したことは、あくまでも想像と推測の域を出ませんが・・・・・・それは大したことではないのではありませんか?」
 そう問いかけてきた考助に、マクシム国王は大きく感嘆のため息をついてから頷いた。
「そうだな。その通りだ」
 過去にどんな流れでこの場所に住み着いたのかは分からないが、少なくとも今目の前に特殊なスキルを持ったスライムがいることだけは確かなのだ。
 このスライムを今後どうするのかは、考助が決めることではなく、これから先のフロレス王国国王が決めて行くことだ。

 一体どれほどの年月を過ごして、このスライムが誕生したのかは分からないが、自然の中で生まれたスライムとしては稀有な存在と言っていいだろう。
 塔のスライム島のように恣意的に環境を用意して、スライムの進化の為の条件を整えたわけではないのだ。
 考助は勿論、誰にとっても非常に珍しい存在といえる。
 ただし、あくまでもスライムはスライム。
 例えどんなに珍しい存在であっても、それにどう価値を付けるのかは、見つけた人の特権であり、義務でもある。

 この部屋にいたスライムは、見た感じでは人というよりも部屋についているようなので、考助は見つけた者としての権利を主張するつもりはない。
 考助にとっては、確かに珍しいスライムではあるが、構成が違っているだけで、似たようなスキルを持っているスライムは、それこそスライム島に多くいる。
 もし、マクシム国王がこのスライムの排除を考えるのであれば、それこそ現人神の強権を発動してでも確保しようとするだろうが、考助にもそんなことはしないだろうという確信があるのであった。
ちょ、ちょっと強引だったでしょうか?w
まあ、奇跡の果てに誕生したスライムだと考えてください。

ちなみにこのスライム、某ゲームの某スライム並みに逃げ足が速いという設定ですw
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