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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(8)低い確率

 考助たちの話を聞いていたシルヴィアが、ふと思いついたことを聞いた。
「マクシム国王が若い時分に、旅などをされたことはないのでしょうか?」
「旅? それは勿論、公務から私的なものまで、国内に限ればたくさんしていると思うが?」
 不思議そうな顔で答えてきたアレクを、シルヴィアがジッと見た。
「では、その際に、魔物と契約を結んだなどは・・・・・・?」
 そのシルヴィアの問いに、アレクは難しい顔になって腕を組んだ。
「いや、流石にそれは・・・・・・いくら私的な旅といっても王太子だからな。護衛はついていたはずだ。そんな中で契約などすれば、必ず噂になるだろう」
 たとえ護衛たちに箝口令を敷いたとしても、マクシムが魔物を連れている時点で、必ず噂には上る。
 そんな状態で、他の王族に隠し通すことなど不可能と言っていい。
 長い間国を離れていたアレクはともかく、他の王族からもそうした話を聞いたことが無いというのは、意図的に隠していない限りは不自然なのだ。

 意味ありげな視線を向けてきた考助に、フローリアは首を左右に振った。
「いや、言いたいことは分かるが、この場合は父上に隠しておく意味がないから、まずないと思うぞ?」
 考助が言いたかったのは、他国の宰相までしていたアレクに、他の王族たちが隠していたのではないか、ということだ。
 だが、他人をいやすことのできるモンスターと契約ができたということは、国にとってはプラスになることはあっても、マイナスになることはほとんどないのだ。
 たとえそのモンスターを狙って攻めたとしても、その国のためにそのモンスターが働いてくれるとは限らず、むしろ勝手にいなくなってしまう可能性が高い。
 無理に囲ったとしても、目的のスキルを使ってくれる可能性も低いとなれば、そもそも攻め込む意味がないのだ。

 今のは極端な例だとして、テイマーやサモナーなどが使っている従魔は、他者が奪ったとしても使うことが出来ないというのが定説だ。
 もし、奪ったモンスターを使おうとするなら、その人物がそうした技術スキルを持っている必要がある。
 国であればそうしたスキルを持つ人物を用意することもできるかもしれないが、たった一体の魔物の為に、そんな手間を掛ける国はまずないと言っていいだろう。
 勿論、そのモンスターが伝説級のものとなれば話は別だが、そもそもそんなモンスターは、簡単に他者の言いなりになるはずがない。
 結局、結論としては、王太子がモンスターと契約できたとしても、ほかに隠しておく必要はないということになるのだ。

 フローリアの言葉に納得しつつ頷いていた考助は、ふとなにかを思いついたような顔になった。
「・・・・・・ということは、もしかしなくても――」
「何を考えているのか分かるが、やめておいた方が良いぞ」
 フローリアは、食い気味に言葉を重ねて、考助を止めた。
「い、いや。まだ何も言っていないよね!?」
「言わなくてもその顔見れば分かる。どうせ考助の眷属を王族に渡したらどうなるかといいたいのだろう?」
 呆れたような顔で言ってきたフローリアを見て、考助は「なぜ分かる」という表情になった。

 その考助の顔を見て、フローリアはため息をついてから続けた。
「そんな顔をすれば、誰にだって分かる。コウヒは勿論、シルヴィアだって気付いているはずだぞ?」
 フローリアに同調するように頷くコウヒとシルヴィアを見て、考助はばつが悪そうな顔になった。
「・・・・・・いい考えだと思ったんだけれどね」
「考助の眷属については、別の価値が付くからな。やめておいた方がいい。・・・・・・現在存在しているすべての王家に送るというなら話は別だが」
「それは面倒だねえ」
 やりたくもないことをフローリアに言われた考助は、諦めたような顔になった。

 フローリアが先ほど考助にした話は、あくまでも自然にいる魔物の話だ。
 それが、現人神から貰った眷属となれば、フローリアが言ったように、その価値はまったく変わってくる。
 神与物かそれ以上の価値を持つ可能性があるだけに、余計なことはしない方が無難なのだ。
 もっとも、その眷属モンスターが、考助から貰った物だということを言わなければ、誰にも分からないのだが、そこはフローリアも敢えて黙っている。
 余計なことを言って、考助が本気にしたら面倒なことになるのがわかっているためだ。
 ついでに、レンカに狼を与えたのも同じようなものなのだが、それを引き合いに出すとさらに面倒になりそうなので、これも黙っておく。

 幸いにして、考助はそのことに気付かずに続けた。
「まあ、それは置いておくとして、マクシム国王が旅とかでモンスターと契約した可能性は、ないということでいいんだよね?」
「そうだな。可能性はゼロとは言えないが、まずありえないだろうな」
 アレクがそう断言すると、考助は腕を組みながら考え込んだ。
「それって、マクシム国王が城にいながら誰にも気づかれない間に魔物と契約するのと、どっちが確率が高いんだろうねえ」
 と、考助がどうでもいいことを呟くと、その場にいる全員が黙り込んだ。
 もし、考助の予想している「魔物説」が正しいとなると、何かの形でマクシム国王が契約をしているはずだ。
 となれば、どういう方法を取ってもかなりの低い確率の中で、マクシム国王は周囲に気付かれないまま契約を果たしたことになる。

 考助の言葉に、最初に反応したのは、フロレス王国と縁が薄いシルヴィアだった。
「それはいま考えても仕方ないでしょう。それに、そもそもあの場にある力が、従魔によるものであると決まったわけではないですし」
「まあ、そういうことだね」
 シルヴィアの言葉に考助は頷いたが、フローリアが疑いの目で考助を見た。
「だが、考助は従魔だと疑っているのだろう?」
「そうだけれど、可能性のひとつとしてだよ? それに、魔道具や魔法陣の可能性だってまだ消えたわけじゃないし」
 いくら考助でも、この世にあるすべての魔道具や魔法陣に明るいというわけではない。
 むしろ、知らない技術も未だに見つけているのだ。
 そういう意味では、まだマクシム国王に従魔が存在していると決まったわけでもないのだ。

 考助の言葉に、フローリアは大きくため息をついた。
「結局、一度はきちんと調べないと分からないということだな」
「そういうことだね。ああ、それで思い出したんだけれど・・・・・・」
「なんだ?」
 小さく首を傾げながら自分を見てくるフローリアに、考助はいま思いついたことを聞いた。
「もし、調査の許可が出たとして、ナナとかスーラ辺りを連れて行くのはありかな?」
「むっ? そ、それはどうかな・・・・・・」
 考助の問いに、フローリアは短く唸りながら首をひねった。

 フローリアは勿論、アレクのような考助に近い者たちであれば、考助がナナを連れて行く目的はわかる。
 だが、そこまで強い繋がりのない、しかも一国の王の私室に従魔を連れて行くのは不可能だ。
 たとえ、それが考助の神獣だとしても、許可が出るかは微妙なところだろう。
 もしこれが神殿とかであれば、すぐにでも許可が下りるだろうが。

 それでも、考助が言いたいことは分かっているフローリアは、少しだけ考えてから言った。
「まあ、ダメもとで打診はしてみるが、期待はするなよ? それから、頼むから気付かれないようにスーラを懐に入れていくとかも駄目だからな」
 フローリアがそう念を押すと、考助はついと視線をずらした。
 その考助の顔を見れば、多少はそんなことを考えていたということが分かってしまったフローリアである。
果たして結果はどっちだ!
というわけで、次回はきちんと許可を取って、もう一度マクシム国王の部屋を訪ねます。
ナナかスーラを連れて行くかどうかは、その時までお楽しみに!w
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