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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(6)王家の秘密?

 フローリアの反応を見て満足したのか、ミリアムは、今度は考助を見て言った。
「こうしてお時間を作っていらっしゃったということは、王に関することだとは思いますが、何かございましたでしょうか?」
 いきなりそう聞いて来たミリアムに、考助はかなり驚いた。
 何しろ、今この場は結界など一切張っていない。
 にもかかわらず、あっさりとマクシム国王のことを口にした。
 国にとっては王の体調というのは大事に関わることだと思うのだが、大丈夫なのかと心配になる。

 そのため、考助は念のためレオナルドを見た。
 先ほどと同じく、結界を張ったほうが良いのかという確認だ。
 するとレオナルドは、無言のまま一度だけ頷いた。勿論、結界を張ってほしいという意思表示だ。
 そのレオナルドの指示を受けてから、考助はすぐ後ろに立っていたコウヒを見た。
 そして、コウヒはすぐに無言のまま結界を張った。

 それらの一連のやり取りを見て、なぜかミリアムが目を丸くしている。
 結界が張り終わったと見るや、レオナルドを見て言った。
「あらまあ。随分と厳重なことね」
 そのミリアムに、レオナルドが肩をすくめて答えた。
「こればかりは仕方ありません。父上に関することではあるのですが、王家そのものにも関わりそうな話ですから」
「そう」
 レオナルドの言葉に事の重大性が分かったのか、ミリアムがそれまでの笑顔をひそめて、真剣な表情になった。
 考助の前にしているということで、今までも失礼のないように、それでも王族の一員としての振る舞いを心がけていたのはわかるだが、それが一気に国の上に立つ者としての雰囲気になった。
 この辺りは、長年王の横に立ち続けて来た者としての貫禄だと考助は思った。

 ただ、考助はどこまでを話していいのかわからない。
 初めに話をするのはレオナルドに任せるつもりで、視線だけを向けた。
 その意味がすぐに分かったのか、レオナルドが先ほど考助とシルヴィアから聞いた話を繰り返した。
「――――――まあ」
 レオナルドから一通り話を聞き終えたミリアムは、そう言って驚いたように目を見開いた。
 それでも口元をきちんと手で覆い隠しているのは流石といえるだろう。

 驚いているミリアムに向かって、レオナルドが先ほど考助たちから聞かれた同じ質問を繰り返した。
「母上は、あの部屋にそうした仕掛けがあるという話は聞いたことがありますか?」
 そのレオナルドの問いに、ミリアムは少しの間考えるような顔になった。
 そして、一分ほど悩んでいたミリアムは、やがて首を左右に振った。
「……残念ですが、私は、そのような仕掛けがあの部屋にあるとは存じておりません」
 まっすぐに自分を見ながら言ってきたその言葉に嘘はないと、このときの考助は思った。

 それと同時に、考助は先ほどまでとは違ったことを話すことにした。
「そうですか。ここに来るまでに少し考えていたのですが――」
 そこでいったん言葉を区切った考助は、レオナルドとミリアムの両方を見ながらさらに続けた。
「もしかしたら、あの部屋に魔道具や魔法陣などの仕掛けがあるわけではないように思えてきました」
 考助がそう言うと、他の者たちはやはり驚きの顔になった。

 彼らを代表して、フローリアが考助に問う。
「では、一体何があそこにあるのだ? 別に医師や神官が来て、魔法を使ったというわけではないのだろう?」
 フローリアの確認に、レオナルドが深く頷いた。
 考助としても誰かが使った魔法や聖法の残滓が残っているとは考えていなかったので、首を左右に振る。
「いや、あれが魔法の残滓とかであれば、効果が強すぎるよ。それに、そんなものだったら、僕やシルヴィアだってすぐに気付くから」
 魔法の残滓というのは、魔法を使ったあとの残りかすのようなものなので、ごくごく弱い力しか残らない。
 少なくとも、考助があの部屋で感じたほどの力は残らないはずなのだ。

 勿論、考助だってそのことは分かっている。
 けれども、その上で先ほどのようなことを言ったのにはきちんと理由がある。
「あれだけの効果の力を維持するとなったら、それだけでかなりの魔力を使うからね。王太子殿下や妃殿下に気付かれずに維持するなんて不可能だと思えてきたんだよ。それに、部屋の主に何かが起こったときにだけ発動するようにするにしても、かなりの魔力を使うからね」
 簡単にいえば、魔法陣なり魔道具なりを使って、病を治したり軽減したりするような仕掛けがあの部屋にあるとすれば、かなりの魔力や聖力が必要になる。
 そのための仕掛けもかなりの大きさのものが必要になるはずで、それをふたりがまったく気付いていないというのはおかしいというのが、考助の考えだった。
 ただ、この考えにも穴はある。
 それが何かといえば、
「例えば、昔の王族が女神からそうした神具を受け取ったとかがあれば、自分自身の魔力を溜めておくだけで済む可能性もあるけれどね」
 あくまでも可能性のひとつだよと続けた考助は、少し笑いながらフローリアを見た。
 過去、フロレス王国で、そんなことがあったのかと聞いているのだ。

 その考助の言葉に、フローリアが苦笑しながら首を左右に振った。
「流石にそんな話は聞いたことが無いな。物が物だけに秘匿することも考えられなくはないが、そうした場合は公表されているはずだろう」
 神から神具を賜ったとなれば、それはその王家にとっては誉であって、隠すようなことではない。
 それがもし神与物でなければ、戦争などで奪われたりもするだろうが、この世界でそのような暴挙に出ればまず間違いなく神話なり伝説として残っているはずだ。
 少なくともフロレス王国にはそうした過去があったとは伝わっていない。

 考助もそれは予想していたのか、フローリアの言葉に頷いて続けた。
「まあ、あくまでも予想でしかないからね。この城自体が大きな仕掛けがあって、自然に魔力を集められるとかであれば、そんな仕掛けがあってもおかしくはないし」
 ヴァミリニア城や百合之神社のことを考えれば、世の中にそうした城があっても何ら不思議ではない。
 むしろ、考助が考えているほどの力を集めるとなれば、城くらい大きな建物に仕掛けを施していると考えた方が自然である。
 もっとも、そんな大層な仕掛けがあることを、王族の誰も知らないというのはあり得るのかどうか、微妙なところだ。
 それは、代々の王だけに伝えられても不思議ではないほどの大事だからだ。

 ここまで話した考助は、レオナルドとミリアムを見ながら言った。
「それで、どうされますか? あの力について調べて欲しいというのであれば調べますし、もし今のままでいいというのであれば、私たちは見なかったことにして、このまま帰ります」
 どこへ帰るのかは言うまでもないだろう。
 逆に考助がこんな提案をしたことに、フローリアは驚いていた。
 体調不良で苦しんでいるのが、フローリアにとっての伯父ということもあるのだろうが、ここまで深く国に関わるということは、本当に珍しいためだ。
 それが、マクシム国王のいる部屋にある力に興味を引かれたからなのかどうかまでは、今の考助からはフローリアには分からない。
 それでも、考助自身が動こうと言ったことは、フローリアにとっては嬉しかった。

 とはいえ、今後をどうするかを決めるのは、あくまでもフロレス王国の王家であってフローリアではない。
 結局このときは、答えは保留にしてほしいというレオナルドの言葉を受け入れて、考助たちは一旦アレクの屋敷へと引き上げるのであった。
十話で終わらせる予定でしたが、どうやら一話か二話分伸びそうな気配が漂ってきました。
ま、まあ、まだ作者は諦めていませんが。

とりあえずアレクの屋敷に戻った考助たちですが、返答が来るまではそこで待つつもりです。
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