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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(2)どうやって会うか

 アレクが病床にあると嘘をついてフローリアを動かしたトワだったが、騙された当人にはちょっとした疑問があった。
「しかし、そうしてトワはすぐばれるような嘘をついたのだろうな? 別に普通にこさせればよかったと思うのだが?」
 考助やフローリアであれば、トワからアレクが寂しがっているといえば、すぐにでもフロレス王国へ来ただろう。
 わざわざ嘘をついてまで来させた理由がわからなかったのだ。
 そんなフローリアに、アレクが難しい顔になって言った。
「いや。全部が全部嘘というわけではないのだよ」
「・・・・・・何? ということは、父上はやはりどこか悪いのか?」
 眉をひそめてそう聞いて来たフローリアに、アレクは手を左右に振った。
「いやいや、勘違いするな。私は本当に何でもないさ。・・・・・・要するに、悪いのは私ではないということだ」
 後半を小声で言ってきたアレクに、フローリアはグッと押し黙った。
 アレクが小声にならざるを得ない事情があるとわかったのだ。

 そのことがすぐに分かった考助は、一緒に着いて来ていたコウヒを見て言った。
「コウヒ、お願い」
「はい」
 考助が何を望んでいるのか理解したコウヒは、頷きつつその場に結界を張った。
 あっさり張ったように見える結界だが、そこはコウヒが張った物。
 よほどの実力者でもない限り破ることは不可能なものだ。

 考助とコウヒのやり取りを見て軽く頭を下げたアレクは、再びフローリアを見ながら、少し間をおいて言った。
「・・・・・・どうやら、兄上があまり芳しくないようなのだ」
「っ!? そ、それはっ・・・・・・!?」
 アレクの言葉に驚きの表情を浮かべようとしたフローリアは、それを何とか抑えた。
 だが、驚愕の声を漏らすのは避けられなかった。

 フローリアは幼少からの訓練で、それだけの反応で済んでいたが、考助やシルヴィアははっきりと驚きの顔になっている。
 それもそのはずで、この場面でわざわざ出てくるアレクの兄上といえば、ひとりしか思い浮かばない。
 フロレス王国マクシム国王だ。
 マクシム国王は、前フィリップ国王が引退を宣言して以降、フロレス王国を牽引していたが、少なくとも国内では大きな混乱もなく国を治めていた。
 その王が倒れたとなれば、フロレス王国が揺れることになると考えるのは、少しも的外れな意見ではない。
 例え王太子がレオナルドと決定していて、次代の王も内定しているとはいえ、少しでも多くの権益を得ようと多くの貴族たちがうごめくのだ。
 それはもはや、貴族たちの習性といっていいだろう。

 故国の現在の状況とトワの思惑を理解したフローリアは、大きくため息をついた。
「なんというか・・・・・・実の母親も利用するか、あいつは」
「うむ。よく似た母子だな」
 呆れていうフローリアに対して、アレクがそう即答して来た。
 そして、そのやり取りを聞いていた考助は、忍び笑いをするように口元に手を当てた。
 見れば、他の者たちも同じような顔になっていた。

 それらの反応を見たフローリアは、憮然とした表情になった。
 いくら年を重ねていたとしても、親を前にすれば、子供はあくまでも子供でしかないのだ。
「むぅ・・・・・・まあ、それはそれとして、いくらなんでもそこまで細かい状況は分からないのだろう?」
 周囲の様子に強引に話題を変えたフローリアは、当然のようにそう聞いた。
 いくら近しい兄弟だからといって、アレクは身分上は国を離れていることになっている。

 そうそう簡単に情報は入ってきていないだろうというフローリアの言葉に、アレクは首を左右に振った。
「いや、そんなことはないぞ? 実際私たちは、兄上の私室にも入れたからな」
 当然それ以上は言えないと無言の圧力をかけて来たアレクに、フローリアは別の意味で驚いた。
「本当か!? まさか、堂々と姿をさらすとはな」
 通常は、国王の健康状態は、悪ければ悪いほど国内のことを考えて、隠すものだ。
 それが堂々と他国の人間ともいえるアレクの前に姿を現すとなれば、大したことはないと考える者たちがいてもおかしくはない。
 もっとも、周囲がそう考えることをわかった上で、敢えてアレクとの面会を取り付けたとも考えられるのだが。

 そこまで考えたフローリアは、考え込むように顎に手を当てた。
 それを見たアレクは、仰ぎ見るように視線を上に向けた。
「ああ。我が娘が何を考えているのか、よくわかるよ」
「フフ。でも、貴方は出来るだけそれを叶えるようにするのでしょう?」
 アレクの嘆きに、ソニヤが小さく笑いながらそう言った。
 アレクの顔を見れば、ソニヤのその言葉が間違っていないことは、すぐに分かる。

 フローリアから期待するような視線を向けられたアレクは、苦笑しながら右の手のひらを向けた。
「まあ、待て。一応打診してみるが、あまり期待はするなよ? それに、ある程度時間がかかると思うぞ?」
「ああ、それはわかっているさ。むしろあっさり要求が通る方がおかしい」
 そもそも普通に考えて、面会要求が通る方がおかしいのだ。
 いくらフローリアが国王の姪だからといって、他国の王位に就いていた人物をそうそう簡単に通すはずもない。

 拒否されることを十分に理解したうえで、フローリアはアレクの言葉に頷いていた。
 だが、そこで状況を考えて珍しいことが起きた。
 考助が話に加わってきたのだ。
「それって、僕の名前を出せば、確率は上がるかな?」
 そう言ってきた考助に、アレクは本気で驚いたような顔になった。
「あ、ああ。それは確かにそうなるだろうが・・・・・・本当にいいのか?」
 これまで考助は、直接政治に関わるようなことをしたことはほとんどない。
 それは、ラゼクアマミヤとの関係を考えてのことなのだ。
 だからこそ、こんなことを言い出してきた考助に、アレクは驚いたのだ。

 当然というべきか、驚いているのはフローリアも同じだった。
「いいのか? あまりいいこととは思えないのだが?」
 そう言ってきたフローリアに、考助は肩をすくめた。
「政治どうこうは別にどうでもいいんだよね。それよりも、面識のある知り合いが病床にあるのに、面会を申し込むのってそんなにおかしいこと?」
 考助らしい言い回しの台詞に、フローリアとアレクは納得の表情になった。
 考助が言っていることは、あくまでも現人神としてではなく、ただの知り合いとして面会したいということだ。
 だが、周囲はフローリアと一緒に現れたということで、いろいろな憶測を呼ぶことになるだろう。
 考助は、敢えてそれを狙っているというわけだ。
 勿論、それがフロレス王国の王家の為になると理解したうえで、である。

 考助の言葉に頷いたアレクは、フローリアを見ながら言った。
「どれ。その方向で話を進めてみるか。だが、それでもこの話を受けてくれるかは、微妙なところだぞ?」
 いくら考助の存在があるからといって、表向きはあくまでもフローリアの連れ添いとして行くだけだ。
 それが、どれくらいの影響を与えるかはアレクにも分からない。
 フローリアもそれはよくわかっているので、一度頷くだけにとどめた。
「わかっているさ。これで駄目なら、トワにも言い訳がたつ」
 結局、考助もフローリアも、トワという自分の子供のために動いているのだ。
 特に、考助が動いたことを知れば、トワは別の意味で頭を抱えることになるかもしれない。
 だが、それはそれで構わないとフローリアは考えているのであった。
というわけで、病床にあったのはアレクではなくマクシム(?)という話でしたw
いつもの考助とは違った対応をしていますが、特に大きな理由があったわけではありません。
あくまでも、フローリアとトワを手助けするためです。
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