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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(9)時間の使い方

 考助がくつろぎスペースに顔を出すと、そこでミクがストリープを弾いていた。
 心なしかミクの表情が固くなっている気がして、考助は内心で首を傾げながらたまたま傍にいたセシルを見た。
 その視線を感じたのか、セシルがミクに気付かれないように苦笑しながら首を左右に振った。
 それを見た考助は、何かあったのかと察して、ミクの隣に座った。
「あっ!? お父様?」
 どうやら考助が椅子に座るまで、近付いてきていることに気付いていなかったらしい。
 ピーチの薫陶を受けて訓練を行っているミクにしては、珍しい失態(?)だ。
 そのことだけをとっても、ミクに何かがあったということが分かる。

 驚いているミクに視線を向けて、考助が言った。
「あれ? せっかく聞いていたのに、続きは弾いてくれないの?」
「う、ううん。弾くよ」
 考助の言葉に首を左右に振ったミクは、その言葉通りに再びストリープを弾き始めた。

 ミクがストリープを弾き始めたのを見て、やはり考助は内心で首を傾げる。
 外見上は集中して弾いているように見えるが、いつもと違って上の空のように見える。
 何があったのかと考えていた考助だったが、ここでピーチがいないことに気付いた。
 ミクがひとりで管理層に来ることは、非常に珍しい。
 加えてこの場にピーチがいないとなれば、何があったのかは大体察することができる。

 さてどうするべきかと悩んだ考助は、とりあえずミクが一曲弾き終えるまで待つことにした。
 そして、ミクが手を止めた瞬間を狙って、視線を合わせないようにしながら話しかけた。
「お母さんと、喧嘩した?」
 考助がズバリそう言うと、ミクはピクリと肩を揺らした。
 それを見て考助がやっぱりと思うのと同時に、ミクはプクリと頬を膨らませる。
「だって、弾く時間が全然ないんだもん!」
 大事そうにストリープを抱えているミクを見れば、何をかは聞かなくてもわかった。
 考助は、それだけで何となく喧嘩をした事情もわかったが、まずはミクの話をきちんと聞くことにした。

 ストリープを脇に置いたミクは、ピーチと喧嘩をした理由を話し始めた。
 要するに、サキュバスとしての訓練時間が増えてきて、ストリープを弾く時間が無くなって来たからミクが怒ったという予想通りの理由だった。
 そして、ミクから話を聞いた考助は、どうやってミクを落ち着かせるかと悩んだ。
 今回のような場合は、どちらも間違っていないだけに厄介なのだ。
 ピーチとしてはサキュバスとしての訓練をきっちりしたうえで、ストリープの練習をしてもらいたい。
 ミクはミクで、訓練よりもストリープの練習をもっとしたい。
 時間は有限だけに、両方の主張を取るわけにはいかないのだ。
 まさしく、あちらを立たねばこちらが立たずである。

 とはいえ、今回に限っていえば、考助はあまり迷わずにピーチの側に立つことに決めた。
 なぜなら、最近ピーチの訓練が増えたのは、ミクが次の年から学園に通い始めるからだ。
「ねえ、ミク。セイヤやシアもきちんと学園に行くために、いろいろとやりたいことを我慢しながら訓練していたよ?」
「っ!? で、でも・・・・・・」
 考助が味方をしてくれないと考えていなかったのか、ミクは少しだけ狼狽えたように視線を揺らした。

 それを見た考助は、ミクが我が儘を言っていることに気付いているのを理解した。
 その上で、どうやって説得をするのかを考えて話を続けた。
「もしミクが、思いっきりストリープを弾く時間がほしいのであれば、ピーチが言ってくる課題をきちんとクリアしないと。少なくともセイヤとシアはそうしていたよ?」
「・・・・・・」
 考助がゆっくりと話をしているのを、ミクは黙って聞いている。
 その顔を見れば、自分も言いたいことは色々とあるが、考助が言っている意味も分かるという顔になっている。

 ミクもピーチの訓練を止めたいと考えているわけではないことは、その顔を見ればわかる。
 ただ、訓練が思った通りに行かないときに、ちょっとした逃げ道がほしいだけなのだ。
「だからね。とりあえず、明日は思いっきりストリープを弾いて、明後日からまた訓練も頑張ろう?」
「えっ!?」
 考助の言葉に、ミクは驚いたような顔を向けて来た。
「お母さんには、きちんと伝えておくから。・・・・・・ねっ?」
 考助が最後にそう言うと、ミクは少し考えてからコクリと頷いた。
 そして、先ほどまでとは違った表情で、ストリープを構えて弾き始めた。
 その顔と音を聞けば、すっかり悩みが無くなったことがわかった。
 そして、それを確認した考助は、そっとその場を離れるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 くつろぎスペースを離れた考助は、その足で食堂へと向かった。
 別に小腹が空いて、何かがほしかったわけではない。
「こんなもんでどうかな?」
 考助が誰もいないはずの空間に向かって話しかけると、いきなりそこにピーチが現れた。
「ありがとうございます~。助かりました」

 実はピーチは、しっかりとミクの様子を窺っていたのだ。
 同じような訓練を受けているはずのミクにまったく気付かせないところはさすがと言うべきだろう。
 とはいえ、さすがのピーチもくつろぎスペースにいたわけではない。
 別の場所からこっそりと様子を窺っていたのだ。
 考助がなぜそれに気付いたかといえば、当然のように一緒にいたミツキから教えられていたからである。

 自分に向かって頭を下げて来たピーチに、考助は気にするなとばかりに手を振った。
「いやいや。こういう時こそ、きちんと役に立たないとね。役立たずにはなりたくないし」
「コウスケさんのことを役立たずなんて思ったことは、ありませんよ~」
「ハハ。いや、それはわかっているけれどね」
 少しばかり怒ったような顔になって言ってきたピーチに、考助は笑いながら応えた。
 とはいえ、甘えてばかりいては、それこそいつ見限られるか分からないので、考助としてもできることはやって行くつもりなのだ。

 食堂の椅子に座って落ち着いたピーチに、考助はごそごそととっておきのお酒を探し出して差し出した。
「たまにはいいよね?」
 ミクを育て始めてからピーチと飲む機会もめっきり減っている。
 たまにはいいだろうと言ってきた考助に、ピーチは少しだけ驚いた顔を向けたあとで、笑顔になった。
「そうですね~。せっかくですから、いただきます」
 そう言いながら考助からコップを受け取ったピーチは、コクリと一口だけお酒を飲み始めた。

 
 そして、ある程度お酒が進んでから、ピーチがぽつりとある言葉を口にした。
「それにしても、普通はああいうことを考えるのですかね~?」
「うん?」
「いえ。私のときは、あんなことを考える余裕もなかったですから」
「ああ」
 ピーチの言っている意味が分かって、考助は少しばかり寂しそうな顔になった。

 ミツキと出会うまでのピーチは、自分が垂れ流している魅了の力のせいで、周囲の人と触れ合う機会さえほとんどなかった。
 その代わりに行っていたのは、苛烈といえるほどの訓練だった。
 そのおかげで今のピーチがあるといっても良いのだが、それが良かったことなのかどうなのかは、考助にもわからない。
 ・・・・・・と、そんなことを考えていた考助に、ピーチはクスリと笑った。
「そんな顔をしないでください。今の私はちゃんと幸せなのですから」
 そう言ったピーチの顔は、嘘偽りなく幸せそうな笑顔だったので、考助も笑いながら頷くのであった。
久しぶりにピーチとのイチャイチャ回。
ミクはダシに使われましたw

そして、ミクにもきちんと反抗期が来ました。
本編では書かれていませんが、セイヤとシアにもしっかりと来ています。
もう通り過ぎましたがw

♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

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「異世界で魔法を覚えて広めよう」連載中!
本日から新章開始です。
ご興味のある方はどうぞよろしくお願いいたします。


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活動報告でちょっとしたお遊び企画を行っています。
是非ご参加くださいw
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