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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(5)貴重な友人

 セイヤとシアの様子を見るために、管理層から第五層の屋敷へと移動した考助は、そこで珍しい光景に出会った。
「おや? お客様?」
 考助がリビングに移動すると、そこに今まで見たことが無い男の子がいたのだ。
 年齢的には十五才前後に見えるので、男性と呼んでいいかどうか微妙な年ごろの子だ。
「そうよ。セイヤとシアの友達ね」
 驚く考助に、コレットが何気ない感じを装って、さらりと告げた。

 逆に、コレットの言葉を聞いた考助は、驚きで目を見開いた。
「友達? セイヤとシアの? ついに出来たの!?」
 その考助の反応を見ていたセイヤが、げんなりとした表情で言ってきた。
「父さま。それはどういう意味?」
「かなり失礼だと思うんだけど?」
 セイヤに続いてシアが、プクリと頬を膨らませながら考助を見る。

 そのシアに向かって、考助が真顔で頷いた。
「いや、実際にそうなんだったら謝るけれど・・・・・・どうなの?」
 友達が出来たのかと聞いて来た考助に、セイヤとシアは顔を横に背けることで答えた。
 どうやら、残念ながら未だに友達は出来ていないようだった。
 代わりにコレットが笑いながら考助に言った。
「この子は、この家のご近所さんで、カインというの。以前から仲良くさせてもらっているのよ」
「ああ、そうなんだ。初めましてだね、カイン」
「は、はい! 初めまして!」
 コレットからカインと紹介された男の子は、考助を見ながらピシッと立ち上がった。
 その様子を見る限りでは、考助のことはしっかりと知っているらしい。

 考助が意味ありげな視線を向けると、コレットは頷いてから答えた。
「うん。カインは知っているわよ。なにしろ、お父様が宰相をやっているから」
「ああ! なるほど。ということは、侯爵家の子息か」
 さすがに考助もラゼクアマミヤの宰相のことは知っている。
 それどころか、何度か直接顔を会わせたこともあった。
 トワが信頼している人間のひとりで、ラゼクアマミヤが国として認めた貴族の五家のうちの一家に当たる。

 カインは、その宰相の長男で、跡取り息子になるのだ。
 この家に友達として来ている以上、考助のことを知っているのは、当然といえた。
「そうよ。お父様期待の息子だからね」
「うん? そうなの?」
 考助は、楽しそうな顔になって言ったコレットを見てから、視線をカインにずらした。
「い、いいえ! そんなことはありません!」
 考助に視線を向けられてそんなことを聞かれたカインは、慌てた様子で首を左右に振った。

 コレットの言っていることが本当だとわかっている考助は、逆にしっかりと謙遜できるカインに内心で感心していた。
「そう。まあ、それはともかく、セイヤとシアとこれからも仲良くしてくれると嬉しいかな?」
「は、はい!」
 いささか緊張しすぎている気もしなくはないが、それでも元気に返してきた返答に、考助は満足げに頷いた。
 そして、少しばかりいたずらっぽい表情になって続けた。
「できることなら、ほかにも友人が出来る手助けをしてもらえると助かるけれどね」
「そ、それは・・・・・・」
 考助の言葉に、カインは困ったような顔になった。
 ということは、優秀だと言われるカインを困らせるような状態だということなのだろう。

 そう考えた考助は、笑顔になったままセイヤとシアに視線を向けた。
「おやおや。セイヤにシア。これは、どういうことなのかな?」
「うひゃ!」
「こっちに飛び火した!」
 いままでニヤニヤとした顔で、考助とカインのやり取りを見ていたセイヤとシアは、ひょいと肩をすくめた。

 ふたりのその様子を見た考助は、やっぱり進展していないのかとため息をついた。
「ふたりとも。魔道具の効力は少しずつ薄まって行くんだから、いまのうちに知り合いを増やしておかないと、前と同じ繰り返しになるよ?」
「「はーい・・・・・・」」
 考助の言葉に、セイヤとシアは渋々といった顔で頷いた。
 折角ピーチから人との距離感の置き方を習っているのに、それが実際に生かせなければなんの意味もない。
 入学式のときに苦手意識を持ってしまったようだが、それを克服しなければ、いつまで経っても引きこもりエルフのままになってしまうのだ。

 そんな考助たちのやり取りを、なぜかカインが目を丸くして見ていた。
「セイヤとシアが素直にいうことを聞くなんて・・・・・・!」
 カインは、そんなことを言いながら拳を作ってプルプルと震えている。
 それを見るだけで、セイヤとシアの普段の態度がどういうものなのか、よくわかるというものだ。
「・・・・・・なるほどね。これは、ここでしっかりと普段のふたりの様子をカインから聞かないと駄目かな?」
「父さま!?」
「え、チョット待って?」
 考助の(セイヤとシアにとっては)不穏な言葉に、ふたりが慌てて止めに入ろうとした。
 だが、ちょうどいいタイミングで、コレットが間に割って入ってきた。
 これぞ考助とコレットが長年培ってきた連係プレーである。(?)

 セイヤとシアがコレットによって遮られたため、カインは心置きなく考助に学園でのふたりの様子を語っていた。
 もっともカインは、セイヤとシアよりもひとつ年上のため、授業中の様子などわかっているわけではない。
 それでも入って来る、わざと人を避けて動いているような態度に、考助の顔がだんだんと無表情になっていく。
 もっとも、普段の考助を知らないカインは、そんなことに気付かずどんどんとふたりの悪事(?)をばらしていった。
 そして、カインが気付いたときには、セイヤとシアが青い顔になりつつ、更には涙目になっているという状況になっていた。
「えっ・・・・・・? あれ?」
 なぜセイヤとシアがそんな状態になっているのか、まったくわからないカインは、首を傾げて考助を見た。
「ああ、いや。気にしなくていいよ。ちょっとばかり、あとでお仕置きすることが増えただけだから」
 そんなことを言って、フフフと笑った考助に、カインが微妙に引きつった表情になるのであった。

 
 涙目になっているセイヤとシアは、あとで叱ることにして、考助は先ほどから気になっていることを聞くことにした。
「そういえば、僕がここに来る前はなにをしていたの?」
 考助が来る直前、三人が揃ってリビングにあるテーブルを囲んでなにやらやっていた。
 少しだけ見た様子では、なにやら勉強をしているように見えたのだが、それで正解かどうか気になっていたのだ。
「あ、はい。セイヤとシアが魔道具の講義がよくわからないということで、教えていました」
 カインは考助に問われるままに、テーブルの上に乗せていた薄い教科書をひょいと差し出した。
「ふーん。どれどれ・・・・・・?」
 カインから渡されたその教科書を手に取った考助は、フムフムと頷きながらぺらぺらとめくって行く。

 だが、そのページが進むにつれて、考助の表情が再び無表情になって行った。
「コウスケ?」
 さすがにそれにはコレットも驚いたのか、様子を窺うように疑問を投げかける。
 そのコレットの問いには答えず、教科書の最後までペラペラとめくっていった考助は、ニコリと笑ってカインに教科書を差し出した。
「どうもありがとう。とても参考になったよ」
 カインに向かってそう言ってから、考助はコレットを見た。
「悪いけど、少し用事ができたから戻るね」
「え、ええ。それはいいけれど・・・・・・」
 本来であれば、今日は夜食を一緒に食べるはずだった。
 それが、突然変更になったことに、コレットは疑問に思いつつそれ以上は聞かなかった。
 子供たちがいる場所ではきかせられない話だと分かったのだ。

 コレットに断った考助は、足早に転移門がある部屋へと向かった。
 それを見ていたセイヤとシアは、どうやら説教は免れたらしいと内心で喜んでいたのだが、残念ながら次の日にはしっかりと考助からのお叱りを受けることになるのであった。
珍しくお怒りモードの考助でした。
ちなみに考助は、友人を作ろうとしないセイヤとシアに怒っているわけではありません。
ピーチが骨をおってくれているにも関わらず、それを実践でまったく生かそうとせず、わずかばかりに見えているエルフとしての高慢な態度(になりかけている)を取っていることに怒っています。
ちなみに、コレットのその話を聞くのは初めてでした。

もうひとつの怒りはまったく別のお話ですが、それは次話で。
・・・・・・が、すみません。
土日、更新をお休みさせてください。m(__)m
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