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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(4)杞憂

 考助が必要な道具を作るのには、一晩では足りずに二日ほどかかった。
 その間、セイヤとシアはエセナの魔法で他の人の視線をやり過ごしていた。
 エセナが使っていた魔法は、簡単にいえばエルフたちの住んでいた魔の森で使われているような結界を簡単にしたものだ。
 要は、人を近づけさせないような、そちらに視線を向けないようにするような、そんな魔法が使われている。
 ただし、この魔法を極端に強くしすぎると、今度はまったく注目されなくなってしまう。
 人が生活をしていくうえでは、それはそれで不便すぎるので、いつまでもは使えない。
 それは、考助が作った道具も同じことで、あくまでも非常手段として渡すことをセイヤとシアには話してある。
 ついでに、ふたりに渡した道具には、ある仕掛けを施している。
 具体的には、人の視線を意図的に逸らす効果を半年ほどかけて徐々に減らしていくようにしてある。
 その効果については、最初は黙っているつもりだったが、ピーチとの訓練にきちんと身が入るように、結局話すことにした。
 考助から説明されたセイヤとシアは、道具を受け取る際にげんなりとした表情になっていたが、コレットから激を入れられて、最終的には了承していた。

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 セイヤとシアが学園に通い始めてから一カ月が経った。
 その間、ふたりは何事もなく無事に学園生活を楽しんでいるようで、考助は安心してコレットや子供たちからの話を聞いていた。
 ただ、ひとつだけの問題を除いては。

「・・・・・・友達ができない?」
 コレットから話を聞いた考助は、キョトンとした表情になった。
 それを受けて、コレットの表情は渋いものになった。
「ええ。そうみたいなのよ。学園が始まってそろそろ一月でしょう? 子供たちがそれぞれのグループを作り始めて、固まってくるのも今くらいよね?」
 早い場合では半月もすれば決まってしまうこともある。
 これから学園生活をしていくうえでは、最初の頃に作られたグループに入ることが、その後の命運を握るといってもいいほど重要なものだ。

 ところが、セイヤとシアは、どこのグループにも入ることなく過ごしているようなのだ。
「うーん・・・・・・。まあ、ふたりがそれを望んでいるんだったら、別にいいんじゃないかな?」
 考助自身としては、別にグループとして固まって行動する必要はないと考えている。
 それは別にどこかのグループに属さなくても、友人は作れるからだ。
 一番身近なところで言えば、ミアは特定のグループにはおらずに、多くのグループの橋渡し役的な存在だった。
 もっとも、そんなことが出来るのは、ミア自身がそうした能力に長けていたからである。
 そうしたことが出来なければ、ただの孤立した存在でしかない。

 さらにいえば、コレットが心配しているのも、グループに所属しているか否かということではない。
「それはそうなんだけれどね。別に私もグループを作らないならそれでいいのよ。そんなことよりも、さっき言ったように友達ができていないことが問題なのよね」
「つまり、どういうこと?」
 さらにコレットから話を聞いた考助は、なるほどと頷きながら眉をひそめた。

 要するに、セイヤとシアは他から注目もされず、話しかけられることがないことをいいことに、主にふたりだけで学園を過ごしているということなのだ。
 それでは、家で過ごしているのと変わらず、学園に通わせている意味がない。
 勉強をするためだけならば、わざわざ学園に通わなくとも、家庭教師を雇えばいいだけなのだ。
 コレットは、そんなことをさせるために学園に通わせているのではないと言いたいのだ。

 だが、そのコレットの主張に、考助は難しい顔になった。
「うーん。そうか。言いたいことはわかったよ。でも、それって結局親としての押し付けにもなりかねないんだよね」
 考助の言い分に、コレットも微妙な顔になって頷いた。
「そうなのよ。だから、強く言うこともできなくて・・・・・・」
「だよねえ。・・・・・・仕方ない。ここは、専門家に聞くとしよう」
「専門家?」
 考助の言っている人物が誰なのかわからずに、コレットは首を傾げた。
 だが、次に考助が告げた名前を聞いて、コレットは大いに納得したように頷くのであった。

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「それで、私が呼ばれたわけか?」
 考助とコレットから順番に話を聞いたフローリアは、面白そうな顔になってそう聞いて来た。
「そう。どうすればいいと思う?」
「いや、どうすればと言われてもな。私に聞かれてもわからないぞ? そもそも私は、学園などに通ったことはないからな」
「あ、そういえばそうだった」
 フローリアが子供だったときは、そもそも学園などという同年代の子供を集めて学ばせるという大型の施設はなかった。
 学問としては、あくまでも王族として家庭教師をつけれて学んだだけなのだ。

 では、フローリアが人付き合いの方法をどうやって学んだかといえば、それこそ社交界という実践的な場でしかない。
「うーむ。そうか。フローリアは参考にならないか」
 最初から実践の場に放り込まれて、それを自分のものとしていったフローリアの意見は、そもそも人の視線に耐えられないセイヤとシアには参考にならない。
 付け加えると、ピーチの場合は、特殊すぎてセイヤとシアに教えるとどういうことになるのか、多少不安がある。

 となれば他に誰がいるのか・・・・・・と、考え始めた考助に、フローリアは心外だという顔を向けた。
「なんというか、最初から排除されているのが気に食わないのだがな?」
「え? じゃあ、なにか助言できることってあるの?」
 期待するような視線を向けて来た考助に、フローリアはあっさりと頷いた。
「あるぞ」
「えっ!? それってどんなの?」
「このまま放っておけばいい」
 あっさりとそう言ってきたフローリアに、考助とコレットはジト目を向けた。

 そんなふたりを見て、フローリアはケラケラと笑い出した。
「揃ってそんな顔をするとはな。まあ、はっきり言えば、其方たちは考えすぎだ」
「・・・・・・どういうこと?」
「セイヤとシアが着けている道具は、徐々に効力が失われていくのだろう? その間に、いやというほど人付き合いは増えて行くさ。それが友人と呼べる存在になるかどうかはわからないが、それは別に道具をつけていてもいなくても変わらないだろう」
「いや、だから、人付き合いをしようにも、グループに入っていないのが問題で・・・・・・」
 一般的な話をしようとした考助を、フローリアが止めた。
「考助もコレットもすっかり忘れているようだが、現人神の実子という事実は、そんなくだらない枠組みに収まるようなものではないからな?」
 フローリアが苦笑しながらそう言うと、考助とコレットは揃って「あ」という顔になった。

 ふたりを見て頷いたフローリアは、さらに続けた。
「ピーチとの訓練も終わって、普通の付き合い方ができるようになれば、考助やコレットがいま考えている悩みなんて吹き飛ぶだろうな。断言してもいい。まあ、問題があるとすれば、それまで新しい友達は出来ないだろうが、そのあとであれば、いくらでも選ぶことは出来るだろうな」
 フローリアがそう断言すると、考助とコレットは気が抜けたような顔になって、お互いを見た。
 何のことはない。ふたりの心配はただの杞憂だったということだ。
 その結果は半年ほどが経った頃、ピーチの訓練が終わったころにわかるのだが、それはまだ先の話である。
考助とコレットの空回り回でしたw
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