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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(3)紆余曲折を経て

 周囲の視線についてピーチに対策を考えてもらうといっても、時間があるわけではない。
 何しろ、入学式を終えた学園は、明日からは授業が始まるのだ。
「――というわけで、どうにかならないかな?」
 一通りの説明を終えた考助に、ピーチは難しい顔を向けた。
「随分と無茶をいいますね~。さすがに時間が無さすぎですよ」
 せめてひと月位は時間が欲しかったとぼやいたピーチに、コレットが申し訳なさそうな顔になった。
「ピーチ、ごめんなさいね。本当だったら、私が先に気付いておくべきだったのよ」
 街で慣らしている間に、学園での生活のことを考えていれば、当然こうなることは予想できたはずだ。

 後悔をするような表情を浮かべるコレットに、ピーチは軽く右手を振った。
「いいのですよ~。時間が無いのは確かですが、方法がまったくないというわけではありませんから」
 あっさりとそう言ってきたピーチに、考助たちは驚いた顔になる。
 ピーチは、家族の中で一番何も考えていないように思えるときがあるが、それはあくまでも表面上のことであって、実際にはいろいろなことを知っているし、答えを持っている。
 今回もその例に外れなかったようだ。

 驚く考助たちの顔を見ながら、ピーチは続けて言った。
「といっても、最初はやっぱり魔法に頼ることになりますよ~。そうでなければ、時間が足りなさすぎますから」
 道具や魔法に頼らない方法であれば、ある程度の訓練を積んでから外に出したほうが良いのだが、今回は時間が足りない。
 いくらピーチでも、そうした方法で頼らずに、たった一晩で慣れさせる方法は知らないのだ。
「でも、それだと、ずっとその魔法から逃れられないのでは?」
「どうでしょうね~? 私たちのような種族特性があるわけではないのですから、慣れてくれば外すこともできると思いますよ?」
 ピーチを筆頭に、サキュバスたちは自然に持っている魅了の力を抑える魔法を使っている。
 ただ、場合によっては、そうした魔法を意識して外すこともできるようになっている。
 セイヤとシアの場合は、あくまでも人の視線に慣れればいいだけなので、その間だけそうした魔法を掛けるというのがピーチの考えだった。

 ピーチの説明に、考助たちは納得したように頷いたが、別の疑問点も浮かんできた。
「そういうことなら魔法を使うのは構わないけれど、そんな便利な魔法なんてあるのかな?」
 ピーチを含めたサキュバスの魔法は、専用の魔法になっているので、同じものはセイヤとシアには使えない。
 勿論、ピーチもそんなものを使おうとは考えていなかった。
「あると思いますよ~。なにせミツキさんは、私のときに新しいものを生み出していましたから」
 ピーチがそう言うと、考助は今更思い出したかのようにミツキの顔を見た。

 忘れていた考助も考助だが、いままで何も言い出さずに黙っていたミツキもミツキだ。
 もっとも、考助に見られても特に変化がなかった顔を見て、コレットやシルヴィアなどは、内心でミツキらしいと苦笑していた。
 コウヒもそうだが、出会ったときからミツキは、考助のこと以外では自らは動こうとはしないのだ。
 考助の子供たちに関しては動くこともあるが、今回はそういった範囲には含まれなかったようだ。
 その辺の基準は、未だに考助にもわかっていない。

 それはともかく、ミツキを動かすためにはどうすればいいのか。
 答えは簡単だ。
「ミツキ、頼める?」
 考助がそう聞くと、ミツキは少し考えるような顔になった。
「できなくはないと思うけれど、私だけでは少し難しわね」
 てっきりすぐにできると返ってくると考えていた考助は、意外な答えに目を瞠った。
「私だけって、ほかに誰か必要なの?」
「ええ。そうね。というよりも、この件に関しては、私よりもその子に聞いた方がいいんじゃない?」
 そんなことを言ってきたミツキに、ピーチを含めた一同は、同時に首を傾げた。
 ミツキが言う「その子」というのが誰であるのか、見当が付かなかったのだ。

 不思議そうな顔をして自分を見てくる考助に、ミツキは若干微笑んでから言った。
「セイヤとシアはエルフの系譜なのよ? だったら、誰に聞けばいいのか、考助の傍で一番エルフに詳しいのは誰?」
 そんなことを言い出したミツキを見ながら、考助は最初にコレットを見て、すぐに否定した。
 今回はコレットも困っているので、コレットであるはずがない。
 そして、すぐに思い出した存在がいた。
「あ、そうか」
 考助がそう言うとほぼ同時に、他の者たちもなにかを思い出したような顔になった。
 エルフではないのにエルフに詳しい存在。
 考助の周囲でそんな存在は、ひとりしかいないのだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 早速エセナを呼び出した考助は、先ほどピーチにした話をもう一度行った。
 そして、その話を聞いたエセナは、すぐに答えを返してきた。
「私でもできなくはないですが・・・・・・、何故兄さまが道具を作られないのです?」
「え? いや、だって、道具に頼ったら、ずっと使い続けなくちゃならなくなるから・・・・・・」
 肌身離さず道具をつけっぱなしというのは、考助にとってはいいこととは言えない。

 だからこそ、別の方法を探っているのだが、考助の答えに、エセナは首を左右に振った。
「いえ。そうではなく。ピーチさんの訓練が終わるまでつけるようにすればいいのでは?」
「・・・・・・あっ?」
 エセナの言葉に、考助だけではなく、他の面々も意表を突かれたような顔になった。
 その中にミツキも混じっていたことから、道具を使っては駄目だとどれだけ思い込んでいたかがわかる。
 エセナの言う通り、期限付きでつけるのであれば、大した問題ではないのだ。

 何となく気まずそうな顔になって、考助は右の頬を掻きながらピーチを見た。
「えーと、ピーチ? どれくらいで道具は外せそうになるのかな?」
「え、えーと、そうですね~。・・・・・・最低でも二、三カ月は欲しいでしょうか?」
 その答えに、考助はカクリと肩を落とした。
 今まで難しい顔で悩んでいたのが馬鹿みたいだと思ったのだ。
 その程度の期間であれば、道具をつけて歩いていても大した問題にはならない。

 気の抜けたような顔になった考助は、エセナを見ながら言った。
「さすがに今日の今日で道具を作るのは難しいから、明日の夜くらいまでは魔法でどうにかできるかな?」
「勿論、問題ありません」
 そう即答してきたエセナに、考助は安心したような顔になった。
「そう。それじゃあ、お願い」
「わかりました」
 エセナはそう言うと、セイヤとシアに向かってブツブツと唱え始めた。

 エセナの魔法は大した時間はかからなかった。
 しかも、呪文を唱え終えたときには、きちんと魔法が発動しているはずだが、考助たちにはまったく変化があったようには見えなかった。
「これで大丈夫です。しばらくは知らない人から視線を向けられることはないでしょう」
 それでもエセナがそう言うと、他の面々は安心したような表情になった。
 魔法を使ったのがエセナである上に、表面上はなんの変化も起きないという魔法はいくらでもあるのだ。
「エセナ、ありがとう」
「いいえ、とんでもありません。この程度のことでしたら、いつでも呼んでください」
 考助が礼を言うと、エセナは笑みを浮かべながらそう答えた。
 そしてエセナは、次の瞬間にはその場から消えていた。

 こうしてセイヤとシアは、(考助たちにとっては)紆余曲折を経たあとに、周囲からの視線の対策をとることが出来るようになった。
 実際にはピーチの訓練を終えてからが本番ということになるのだが、それはまた別の話である。
エセナGJ! (←これをタイトルにしようかと一瞬思いましたw)
久しぶりのしかも短い登場なのに、しっかりと存在感を示してくれたのではないでしょうか?w
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