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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(2)対策方法

 シルヴィア、コレットと一緒に屋敷に戻ったセイヤとシアは、そこに考助がいるのを見つけて、嬉しそうな表情を浮かべてた。
「父さま、来ていたの?」
「てっきり戻ったのだとばかり思ってた!」
 考助が第五層にある新しい屋敷に来ることはほとんどないので、セイヤもシアもてっきり管理層に戻っていると考えていたのだ。
「いや、それはふたりが来るまで待っているよ」
 セイヤとシアの言葉に少しだけ苦笑を浮かべながら考助はそう答えた。
 ふたりとも考助が迂闊に外を歩けないことをよくわかっているので、屋敷に来れないことを良くわかっている。
 それでも、子供らしい文句を言ってこないセイヤとシアに、考助は何となく寂しさを覚えたのだ。

 モンスターが出るという環境のせいなのか、それとももともとのこの世界での普通なのかはわからないが、考助からすれば、子供たちの精神的な成長は非常に早いと感じる。
 だからこそ考助は寂しく思ったのだが、それは表に出さないようにして、顔を合わせたときから気になっていたことを聞くことにした。
「それよりも、ふたりとも疲れているようだけれど、なにかあった?」
 考助からそう問われたセイヤとシアは、同時に顔を見合わせた。
 ずっと誤魔化せるとは思っていなかったが、こんなに早く見抜かれるとは思っていなかったのだ。

 さらに、それを見た考助は、苦笑を返した。
「いや、そんな顔をしていれば、すぐに分かるから」
 あっさりとそう答えた考助だが、別に特殊能力を発揮したわけではない。
 考助の感覚では普通の親のようにずっと一緒にいるわけではないが、それでも生まれたばかりのときからずっと見ているのだ。
 子供が隠しているつもりでも、大体のことは分かるものだ。
 もっとも、これは親になったからこそわかる感覚で、それ以前は子供の表情を見てもわからなかった。
 あるいは、多くの実子を見てきた考助だからこその感覚なのかもしれない。

 
 考助の顔にばつの悪そうな表情を浮かべたセイヤとシアは、隠すことが出来ないと考えて、学園であったことを話し始めた。
 そして、ふたりから話を聞き終えた考助は、納得の表情になって頷いた。
「ああ、なるほどね。やっぱりそういうところも母子ということなのかな?」
「「えっ!?」」
 考助の台詞に、セイヤとシアが驚いた表情を浮かべてコレットを見た。
 その当人は、少し慌てたような顔になっていた。
「ちょっと! いま、それを言うの?」
 コレットとしては大人の余裕を見せていたかったのだが、あっさりと考助にばらされた。
 学園での会話でも徐々に慣れるしかないとは言ったが、子供たちと同じような態度だったとまでは言っていなかった。
 お陰で、先ほどまでの態度が台無しになってしまった。

 コレットの様子に、セイヤとシアがそれぞれニヤニヤとした表情を浮かべたが、考助はふたりの頭にコツンと拳骨を置いた。
「コラ。お母さんをそんな目で見たら駄目。せめて、そういうことは、自分たちがきちんと乗り越えてからやりなさい」
 その頃には、こんな態度を取ることもなくなっているという予想が立っているからこそ、考助はそう注意をした。
 結局のところ、経験を積んでしまえば、程度の差はあるにせよ誰もが通る道だということなのだ。

 そんなことよりも、考助には別に気にすべきことがある。
「そうか。それにしても、ふたりともそこまで辛かったか。これは、少しきちんと考えた方が良いかな?」
「そうですね。私やコレットはまだ今日だけで済むのでいいですが、さすがにこれから毎日は辛いと思います」
 考助の言葉に追随するように、シルヴィアが頷く。
 先ほどの視線には余裕をもって耐えていたシルヴィアだったが、さすがに毎日は勘弁してほしいというのが本音なのだ。

 シルヴィアがそこまでの発言をしたことで、考助も悩むように腕を組んだ。
「うーん。そうはいってもなあ。あまり道具に頼るようなことはさせたくないなあ・・・・・・」
 そんなことを言い出した考助に、セイヤとシアは目を見開いた。
「えっ!? 道具でどうにかできるの?」
「そんな便利なものが?」
 驚くふたりに、考助は当然という顔で頷いた。
「それはあるよ。だって、偵察とかそっち方面では、必須の能力だからね」
 気配を隠す物、姿を見えなくする物などなど、周囲からの注目を避けるための魔道具は、作ろうと思えばいくらでも作れる。
 だが、そういう系の道具に頼っていると、いつまで経っても人の視線に慣れることができないので、渡すのを控えていたのだ。
 これは、単に感覚でそう考えているわけではなく、出会ったばかりのコレットやシルヴィアを相手に経験したことだった。

 実際にそれらの道具を使ったことのあるシルヴィアとコレットは、考助の言葉を聞いてほぼ同時に頷いていた。
「そうね。やっぱりあれは止めた方がいいわよね」
「そうですね。本当の意味での最終手段ですが、成長期のいまは止めたほうが良いです」
 シルヴィアとコレットからもそう断言をされて、セイヤとシアは黙り込んだ。
 その顔が、本当の意味でまずいのだということが理解できたのだ。

 それもそのはずで、隠蔽系の道具を使うと、周囲の視線を本当の意味で感じなくなってしまう。
 そのため、特殊な訓練を受けている者以外が、そういった道具を使うと、どこか感覚がずれてしまいそうになるのだ。
 実際にそういった道具を使い続けたことがある二人だからこそ、実感を伴っていた。
 シルヴィアとコレットに請われてそれらの道具を作った考助も、結果を受けてそれらの道具を封印したほどだ。
 これから成長期を迎えるような子供たちには、出したいと思うはずがない。

 だからといって、少し大げさに言えば、絶望的な表情を浮かべているセイヤとシアのためには、考助はなにかをしてあげたいと思っている。
「うーん。道具に頼るのには、特殊な訓練が・・・・・・うん? 訓練?」
 自分の言葉に引っ掛かりを感じた考助だったが、その隣で言葉を聞いていたコレットがすぐに反応した。
「なにを言いたいのかはわかるけれど、あの訓練は特殊すぎて、今から習得するのは無理だと思うわよ?」
「いやいや。そっちじゃないよ。誰からも見られないことに慣れるのじゃなくて、見られることに慣れる方法も知っているんじゃない?」
 誰が、というのは言っていなかった考助だったが、シルヴィアとコレットにはしっかりと通じたらしく、同時に顔を見合わせて頷いた。

「それは、あるわね」
「そうですね。私たちも大分助言を受けましたから」
 そもそもサキュバスは、裏の仕事を請け負うために、注目を集める方法やその逆の方法をいろいろと訓練している。
 当然、それらの訓練を受けていたピーチは、コレットやシルヴィアのために、様々な助言をしていたのだ。
 そのことを今まですっかり忘れていたのは、セイヤとシアが今まであまり人の視線に困っていなかったからである。
 この家に移ってきたときも、自然と慣れてしまっていたので、あまり必要ではなかった。

 ところが、さすがに学園ほどの人が集まる場所では、そんな悠長なことを言っていられない。
 早急に対策をする必要があるということで、考助たちは早速ピーチに相談をすることになるのであった。
セイヤとシアが抱いていたわずかな恐怖感に気付いた考助でした。

次回は専門家(?)を招いてのちょっとした訓練(?)です。
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