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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第12部 第1章 引っ越し

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(1)久しぶりの入学

前半説明回。
 入学式。
 それは、ラゼクアマミヤ王国にすでに定着したイベントとなっている。
 実際に関係するのは、学園に入学する生徒と親、それに学園の関係者だけだが、すでに以前の卒業生の子供が入学し始めたこともあり、懐かしさも相まって多くの参加者が来ている。
 最初の頃は義務的に参加していた親たちにとっても、いまでは楽しみのひとつとなっているのだ。
 さらに、いまでは学園への入学者の数も増えている。
 それは、貴族の子弟のみならず、ある程度の学力を持った者であれば入学できるように門戸を広げたことによる。
 学園の最高責任者が、出来た当初から変わらずにトワが勤めていることは変わっていない。
 そのことからも、ラゼクアマミヤにとっては、学園を重要な場所であることを内外に示していた。

 貴族以外の子弟を学園に入れることには、当初は反発も起こっていた。
 だがその意見は、ラゼクアマミヤにはトワが正式に任命した貴族がほとんどいないということで、一蹴されている。
 現在、ラゼクアマミヤが国として正式に認めている貴族の数は全部で五家になる。
 その五家ともに、王国の成立に甚大な力を発揮してくれた者が対象となっている。
 その全員が未だに現役であることから、トワ国王が側近中の側近として扱っているのも当然である。

 今のところは、それ以上の貴族が増えるとは、内外で考えられていない。
 というのも、トワは王国としての基盤を固めることに腐心しており、王家としての力を強めるのは次代に任せるつもりだと噂されているのだ。
 本来であれば、王家の力を強めて王国の基盤を固めるのだが、トワの場合は「現人神の実子」という強みがあるので、王家としての力そのものを強くする必要はほとんどない。
 それよりは、国の力を強くして、次代にそっくりそのまま渡した方がいいというのが理由である。
 次代になれば血の力も薄まってしまうので、王家という立場を強くする必要があるのだ。
 そのためにも、貴族としての地位を与える権限を残しておいた方がいいというわけだ。

 勿論、その政策に異を唱える者もいる。
 というよりは、多くの者が早く貴族位を与えた方がいいと言っている。
 だが、トワ国王は、その声を今まで無視し続けており、それはずっと変わらないだろうというのも、多数の意見だった。
 とはいえ、それでも自分の利のために動くのが人としての性質なので、いつまで経ってもなくなることはないのだ。

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 ラゼクアマミヤに学園ができてから十八年目。
 その年の学園は、久しぶりの緊張感に包まれていた。
 それもそのはずで、現人神の実子が再び入学してきたと話題になっているのだ。
 それが誰かといえば、勿論、コレットの子供であるセイヤとシアだ。

 過去には現人神の子であることを騙って入学して来ようとした者もいたが、当然のようにトワが自らチェックを行って弾いてきた。
 今回はそうしたことが行われなかったことから、ふたりの子供が本当に現人神の実子だと認められていた。
 現人神の実子であるルカが卒業してから久しぶりのことに、ほかの入学者が浮足立つのは当然といえるだろう。
 もっとも、入学する子供たちよりも大人たちのほうが、何かを期待して浮ついていたりするのだが。
 とにかく、現人神の実子の入学は、内外にいろいろな影響を与えていた。

 
 辺りを何気なく見回したシアは、不快そうに周囲を見回した。
「・・・・・・いっぱいみられてる」
 それは、シアの気のせいというわけではなく、隣に立っているセイヤも同意するように頷いた。
「ああ、そうだね。これは・・・・・・慣れるまでしばらくかかりそうだなあ」
 セイヤはそう言いながら憂鬱そうにため息をついた。

 エルフの中でも精霊を容易に見ることが出来るセイヤとシアは、感覚に鋭いところがある。
 それは、当然のように他人の視線にも敏感といえるのだ。
 エルフの里では、セイヤとシアが並んで歩いている光景も当然のように受け止められていたが、今歩いている学園ではまったく違っている。
 セントラル大陸では、エルフ自体をまったく見ないというわけではないのだが、珍しい存在であることは間違いない。
 そんな状況でふたりが連れ立って歩いているのは、学園に通う子供たちにとっては、注目して当然なのだ。

 セイヤと同じようにため息をついたシアは、少しだけ沈黙してからセイヤに聞いた。
「・・・・・・慣れることができると思う?」
「それは・・・・・・街に移ったときみたいに、慣れると思うしかないかな・・・・・・」
 セイヤとシアが学園に通うということで第五層の街に移ってきたあとは、しばらくの間、周辺の住人たちに注目されていた。
 それでも、次第にエルフの兄妹が一緒にいる光景に慣れて来たのか、最近ではほとんど注目されることはなくなっていた。
 おかげで、セイヤもシアも家の近所を気楽に歩けるようにはなっていた。
 学園でもそれと同じようになることを期待するしかない。

 
 慣れない視線に耐えながら歩いていたセイヤとシアだったが、ふとあるところを境にその性質が変わったことに気が付いた。
 ふたりだけを見ているのではなく、誰かと比べるような視線が増えたのだ。
 勿論、そのときには、ふたりともその原因に気が付いていた。
 セイヤとシアは、ゆっくりとその原因の元へと近付いて行き、笑顔になって話しかけた。
「母さま、入学式どうだった?」
「ちゃんと見ていてくれた?」
 遠巻きに人だかりに囲まれるようにして立っていたその女性は、セイヤとシアの実母であるコレットだったのだ。
 ついでに、その隣にはシルヴィアも立っている。

 コレットとシルヴィアがそばにいることで、今まで集まっていた視線が分散されていることにセイヤは気が付いていた。
 エルフとしても美人といわれるコレットがいることは勿論、それにも負けない美貌を持っているシルヴィアがいるので、セイヤが見られる時間が相対的に減ったのだ。
 もっといえば、常にフローリアの傍にいて絶大な信頼を得ていたシルヴィアのことを覚えている者も、親の中にはいたのだ。
 自分たちが感じていた視線とは、まったく違った種類の視線を平然とした様子で受け止めているシルヴィアに、セイヤとシアは尊敬の念を向けた。
「・・・・・・シルヴィア母さまは、よくこの視線に耐えられるね」
「本当・・・・・・。コツのようなものがあるなら、教えてほしいわ」
 そんなことを言ってきたふたりに、シルヴィアは口元を抑えながら小さく笑った。
「残念ながらそんなものは、ないですよ。ひたすら慣れていくしかありません。あとは、今はまだ、相手が何をしてくるか分からないという怖さがあるでしょうから、それに対処できる方法を学ぶべきでしょう」
「そうね。結局、経験を積んでいくしかないわ」
 シルヴィアの言葉に、コレットも頷きながら追随した。

 シルヴィアとコレットの言葉に、やっぱり慣れていくしかないのかと、セイヤとシアは落胆した。
 そんなふたりを見ながら、コレットが何気なく付け足してきた。
「そういえば、ふたりの入学式にあの人も来ていたわよ。あとで、お礼を言いなさいね。ちょっとばかり無茶をしたみたいだから」
 そのコレットの言葉に、セイヤとシアは目を丸くした。
 コレットが言う「あの人」というのが誰であるのかは、すぐにわかった。
 ただ、これだけ人が集まる場所に堂々と来れるはずもなく、魔法を使ってきてもばれる可能性があるので、来れないと聞いていたのだ。
 いまはどこにも見当たらないが、コレットがそんなことで嘘を吐くはずもない。
 そして、入学式に来てくれたという思いで、セイヤとシアの心は浮き立った。

 このときのふたりは気付いていなかった。
 考助が入学式に来ていたことを教えるのは、家に戻ってからでもいいのに、敢えてこの場で言ったことに。
 その話を聞いたふたりが、これまでの様子から一転して、家に戻るまで上機嫌になっていたのは、そのコレットの言葉あったからである。
相変わらずお父さん大好きですw
そして、人の視線にはまだまだ慣れていません。
とくに、これだけ多くの同世代の子供がいるのは初めてなので、その分無遠慮に見られているといった感じでしょうか。

考助はトワに協力してもらって、裏でこっそり見守っていましたw
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